2019年4月21日(日)
愛知県・名古屋市中村スポーツセンター
男子|初出場組の戦いは伏兵が大健闘、実績ある2人を破り3人目に挑む
第17回目を迎えた八段戦、今回は6名が初めてこの舞台を踏んだ。中でも世界選手権で日本代表として戦った髙橋英明(京都・54歳)、宮崎史裕(神奈川・53歳)、栄花直輝(北海道・51歳)の戦いぶりは注目された。
髙橋、宮崎の行く手を阻んだのは伏兵だった。やはり初出場の竹内司(岡山・52歳)である。1回戦で全日本選手権者でもある宮崎を、2回戦で全日本選手権2年連続2位の髙橋を破った竹内は、準々決勝では5回目の出場となった山﨑尚(61歳)を下し準決勝に進む。町の教育委員会に勤務し養徳館道場の指導者として実績のある竹内だが、自身の試合は全日本東西対抗大会出場(4回)のほか、団体戦で国体3位、都道府県対抗大会優勝などを残しているのみ。全日本選手権で日本一を争い世界と戦った強豪を連破した戦いぶりは圧巻で、まさに今大会の台風の目となった。
昨年2位の石田利也氏、優勝経験のある稲富政博氏らが出場していない中で、過去に実績のある選手としては、昨年初出場で初優勝を果たした恩田浩司(東京・58歳)、一昨年まで2連覇している宮崎正裕(神奈川・56歳)、一昨年3位で東京の寛仁親王杯剣道八段選抜大会で実績を残している栗田和一郎(東京・62歳)、7年前に優勝を果たし一昨年も2位となっている谷勝彦(群馬・61歳)らが優勝候補に数えられた。
宮崎は1回戦で上段の山本雅彦(大阪・60歳)を終了間際の一本で下したが、2回戦で谷がメン二本を浴びせ、存在感を見せた。その谷を準々決勝で栗田が下す。栗田は1回戦で昨年3位の宮戸伸之(和歌山・57歳)を下すと、2回戦では5回目の出場で迫力あるメン技が持ち味の大河内鉄彦(愛知・58歳)に延長でドウを決めた。
恩田は1回戦で清田高浩(福岡・59歳)を延長の末下すと、2回戦では2回目の出場となる染谷恒治(千葉・53歳)にコテを決めて一本勝ちを果たす。昨年のような捨て切った技はまだ見られなかったが、順当にベスト8に進んだ。
その恩田の進撃を阻んだのは初出場の栄花だった。1回戦では難敵・坂田秀晴(山梨・57歳)と対戦。相手に技を出させず長い試合になることの多い坂田だが、栄花はその固い守りを打ち破ってメンを二本決め、違いを見せた。2回戦では、世界選手権大会個人3位の実績を持つ平野誠司(徳島・55歳)を、メンの一本勝ちで下した。そして迎えた栄花と恩田の準々決勝、栄花はここでもメンを二本奪って快勝を収め、昨年の覇者を退けた。
ベスト4には初出場の竹内と栄花、5回目の出場の栗田に加え、やはり5回目の出場となる松本政司(香川・56歳)が食い込んだ。宮崎正裕と同学年でその陰に隠れることが多いが世界選手権大会にも2回出場、本大会では3年前に決勝に進み宮崎に敗れて2位となっている。この日は安定した戦いぶりが光っていた。1回戦で佐藤勝信(東京・61歳)を、2回戦で佐賀豊(北海道・55歳)をともに一本勝ちで下すと、3回戦は初出場ながらベスト8入りを果たした林佐登美(千葉・58歳)と対戦、延長でドウを決めた。中央学院高校教諭の林は、この大会10回目の出場となった東良美(愛知・62歳)を1回戦で破るなど、竹内に劣らない健闘を見せた。
準決勝、初出場同士の対戦では、快進撃を見せた竹内が栄花に挑むもここで力尽きた。栄花がメン、さらにコテを決めて二本勝ちを果たす。5回目の出場同士の対戦は、松本が返しドウを決め一本勝ちで栗田を下した。
決勝は約25分を要する長い試合となる。ともに手数が少なく、なかなか相手を脅かすような技が出ずに、長い剣先の攻め合いが続く。とくに松本はほとんど打ち切る機会を見つけられなかった。我慢比べとなった試合は、松本の守りのタイミングを外すように栄花がメンに跳び込んだ。
一昨年の全日本東西対抗大会、昨年の全日本都道府県対抗優勝大会などでも出色の剣道を見せた栄花。この大会初出場で最年少だが、結果もさることながら1回戦から七段以下とは明らかに違う「八段の剣道」を体現し、他の先輩八段が霞んでしまうほどの剣さばきを見せた。心身ともに充実期にあることが見て取れた。