令和元年度インターハイ|九州学院と中村学園女子、男女の絶対王者が死闘の末連覇を伸ばす

優勝・九州学院|荒木京介、岩間功樹、鈴木龍哉、米田好太郎、相馬武蔵、山平昌太郎、荒木京介。監督=米田敏朗
編集部取材
第66回全国高等学校剣道大会
2019年8月3日(土)〜6日(火)
熊本県立総合体育館

令和最初のインターハイは8月6日、最終日を迎えた。男子団体は九州学院(熊本)が2連覇。一昨年に優勝を逃しているが、その前年まで4連覇を果たしており、7年間で6度優勝という前人未踏の結果を残した。女子団体は中村学園女子が4連覇を達成。過去PL学園、阿蘇が成し遂げた連覇記録に肩を並べた。

結果的には男女とも優勝候補の筆頭が順当に王座に着いたが、そこに至る過程はまれに見る死闘の連続で、会場は熱狂の渦に巻き込まれた。

近年にない僅差の勝負が続くも、最後はやはり九州学院

九州学院は決勝トーナメント1回戦で新潟商業(新潟)に3―1で勝利。この試合も次鋒戦で二本負けを喫し一時は一本のリードを許していた。準々決勝では玉竜旗を制したばかりの福岡第一(福岡)と対戦、5試合とも引き分けで代表戦にもつれるも、相馬が田城にメンを決めて10分あまりの試合を制した。

東洋大姫路(兵庫)との準決勝は先鋒荒木、次鋒岩間がともに二本勝ちですんなり決勝進出を決めるかと思われたが、ここから東洋大姫路が怒涛の反撃を見せる。東洋大姫路の中堅西川、副将山本がともに先行し追いつかれるも、さらに一本を奪い連勝、本数は九州学院リードながら2勝2敗で大将戦となった。大将戦では相馬が6分間、対する三浦に一本を許さず、九州学院が本数差で勝利を収めた。

決勝は水戸葵陵(茨城)との対戦。東西の横綱ががっぷり四つに組み合う対戦となった。先鋒戦は九州学院の荒木がメンで先行するも渡邊(哉)がコテを返し引き分け。次鋒戦は決まり技なく引き分けとなった。中堅戦で新谷がツキを決めた水戸葵陵がリードを奪う。しかし副将戦では、九州学院の米田が、準決勝の代表戦で勝利した木村からメンを二本奪って逆にリードを奪った。大将戦、水戸葵陵の鈴木が必死で一本を狙いにいくが、相馬はまたも6分間を耐え抜き、一本差で九州学院が王座を死守した。10年ぶりの王座を狙った水戸葵陵だったがわずかに及ばなかった。

男子団体決勝副将戦、米田(九州学院)が追ってメンを決めたあと、写真のひきメンの打ち合いで米田(背中)のメンが有効となる。これが決勝の一本となった

優勝・九州学院(熊本)|荒木京介(2年)、岩間功樹(3年)、鈴木龍哉(2年)、米田好太郎(3年)、相馬武蔵(3年)、山平昌太郎(3年)、平尾尚武(2年)。監督=米田敏朗

中村学園女子、奥谷らが優勝を知る者の強さを見せる

春の全国選抜大会は出場を逃し、7月の全九州大会でも敗れるなど、妹尾舞香がいた昨年までに比べると他チームの付け入る隙もあるのではないかと思われた中村学園女子だが、玉竜旗大会を制し、このインターハイでも大会中にますます力をつけてきた印象があった。決勝トーナメント1回戦、市立船橋(千葉)との試合では先鋒松永が一本勝ちしたものの中堅戦を落としていったんは追いつかれたものの、副将笠、大将奥谷が連勝して突き放した。

準々決勝はライバル島原(長崎)との対戦。先鋒松永が二本勝ち、副将笠が一本勝ちを果たし2勝1敗、二本のリードで大将奥谷につないだ。対するは実力者の岩本。奥谷は反則2回で先に一本を失うが、コテを奪った時点でちーむの勝利を決めた。準決勝では健闘した五泉に対し、次鋒大嶋と、この試合から起用された中堅倉田が一本勝ち。副将笠が二本勝ちで決勝進出を決めた。

決勝は春の全国選抜覇者である東奥義塾(青森)との対戦となった。前半試合を支配したのは東奥義塾。先鋒本間が延長でメンを決め勝利をあげると、次鋒戦の引き分けをはさみ中堅杉本が一本勝ちで2―0とする。絶体絶命の中村学園女子だったが、笠がコテを決めて一本勝ちを収めると、奥谷は2年生大将の齋藤に対し渾身のメンを決め、代表戦に持ち込んだ。代表戦は東奥義塾が3年生の杉本を起用する。しかし奥谷は試合時間3分59秒で杉本からコテを奪い取った。中村学園は昨年の優勝を経験している後衛陣、とくに奥谷の勝負強さが光った。東奥義塾も春の日本一を経験しており初のインターハイ王座に手が届きかけていたが、ほんのわずか及ばなかった。

女子団体決勝、大将戦、奥谷(中村学園女子)が齋藤からメンを奪う。これで一本勝ちを収めた奥谷が代表戦も制した

優勝・中村学園女子(福岡)|松永樹音(1年)、大嶋友莉亜(3年)、倉田青空(2年)、笠日向子(2年)、奥谷茉子(3年)、津野愛梨(3年)、寺本すずな(2年)。監督=岩城規彦

個人戦、如水館コンビが団体で敗れたリベンジを果たす

個人戦では池田龍ノ介(福岡・福大大濠)、柿元冴月(茨城・守谷)が王座についた。ともに強豪チームに所属するが、団体戦で池田は福岡県予選で敗れ、柿元は予選リーグで苦杯をなめた。そのリベンジを果たす結果となった。

池田の祖父池田健二氏は福岡商業(現福翔)時代にインターハイ個人戦を制し、玉竜旗3連覇の立役者となっている。その祖父に続く個人戦優勝となった。その健二氏が館長を務めるのが少年剣道の名門如水館。池田も当然如水館で育ったが、女子優勝者の柿元も同じく如水館のOGだった。遠く茨城の守谷に進学した柿元は1年生のときから大将を努めたが、その夏のインターハイから全国選抜、2年生となってからの玉竜旗、インターハイとすべて決勝に進みながら中村学園女子に敗れてきた。1学年上の妹尾舞香先取が壁となって立ちはだかってきたが、妹尾のいない今年の玉竜旗決勝も同じ組み合わせとなって敗退、さらに本大会では予選リーグで三養基に敗れて敗退していた。3年前の全国中学校大会でも柿元は団体戦予選リーグで敗退しながら個人戦で優勝を果たしている。頂点に立つことなく高校3年間を終えるかと思われた中、最後に残ったタイトルで意地を見せ、3年前を再現してみせた。

男子個人準決勝、池田(福大大濠)が、齋藤(島原)にメンを決める

女子個人決勝、柿元(守谷・背中)が、川合(静岡・東海大翔洋)にメンを決める

男子個人優勝・池田龍ノ介(福岡・福大大濠3年)

女子個人優勝・柿元冴月(茨城・守谷3年)