第10回世界選手権大会は日本対韓国の死闘の始まり
6大会、18年ぶりの日本開催となり、京都で行なわれた第10回世界選手権大会は日本対韓国の死闘の始まりとなった。
大会史上唯一1部と2部に分かれて行なわれた団体戦、一部決勝は4回連続で日本と韓国の対戦となった。
この試合で日本は大会史上初めて韓国にリードされる展開となり、世界選手権大会ではかつてなかった緊張感が会場を包んだ。
先鋒・平尾泰(警視庁)、次鋒・岡本和明(警視庁)ともにつばぜり合いの多い展開となり引き分ける。
中堅・高橋英明の相手は、過去に2大会で個人戦3位入賞を果たしている韓国のエース、キム・キョンナム。
その前の試合まで主に副将をつとめていたキムが中堅に入っていた。
キムは高橋からメンを先取、つばぜり合いが続く中でさらにひきメンにも旗が上がる。
0─1、しかも相手は二本取得という状況で副将・宮崎正裕(神奈川県警)にバトンが渡された。
宮崎の相手はパク・サンソブ。
個人戦で宮崎に敗れているが延長に持ち込んだことで、引き分けを狙っての副将起用と思われた。
宮崎はまずひきメンを先取する。
そこからが凄まじかった。
絶対に二本目を取るという思いが全身から溢れ出ていた。
次から次へと攻めを繰り出しパクに襲いかかる。
そして残り時間が刻一刻と少なくなるなかで、ついにひきゴテを奪った。
後年のインタビューで宮崎は
「二本取られなければいけないと思った」
と語っている。
一本勝ちでも大将・石田利也(大阪府警)が勝てば日本の勝利となり、実際に石田は二本勝ちを収めるのだが、試合の流れとして同点にしなければいけない、という稀代の勝負師としての勘が働いたのであろう。
なりふり構わず二本目を取りに行った姿は感動的だった。
全日本選手権を6回制した名剣士がその真骨頂を見せた試合だった。
勝負にたらればはないが、もし宮崎が一本勝ちに終われば別な展開になっていたか。
そして副将・大将が宮崎、石田という剣道史上に残る名選手2人でなければどうなっていたか……。
結局石田が豪快なメンとひきメンを奪い、2(4)─1(2)で二本が勝利を収める。
そして二人の先輩の姿をじっと見ていた高橋は次の世界大会で大将をつとめ、日本に勝利をもたらす。