剣道において重要な「眼」について考える
剣道の試合において「眼」は二つの意味で重要な役割を果たします。
今回は剣道において「眼」がどうして重要なのか、どうやったら鍛えられるのか解説していきます。
■剣道における「眼」とは何なのか
剣道には格言が幾つもありますが、その内の一つに「一眼二足三胆四力」という言葉があります。
これは剣道の修業において大事な要素を重要度順に並べた言葉なのです。
この格言で使われる「眼」とは即ち、観察力・洞察力の事を意味します。
剣道において相手の考えていることや狙いを見破る事こそが上達の秘訣という教えなのです。
そして、剣道においてもう一つ重要な「眼」があります。それは動体視力です。
動体視力とは、視界の中で動く物体をどれだけ認識できるかの能力を指します。
剣道の試合において、相手の振る竹刀がぼんやりとしか見えないのと、はっきりと見えるのでは結果は違ってきます。
普通、目が良い悪いと聞くと遠くを見る視力の事を思い浮かびますが、動体視力は視力の優劣に関係ありません。
また、現時点で動体視力が悪くても適切なトレーニング方法を学び、実践していけば上達していくこともあります。
このように剣道において相手の行動を先読みする観察力と、相手の取る行動をはっきりと見る動体視力、この二つの「眼」は重要とされております。
そして、この「眼」は鍛える方法があります。
■動体視力を向上させる4つのトレーニング
まず、動体視力を向上させるトレーニング方法を紹介しますが、ここで注意点があります。
今回紹介する方法は動体視力を向上させる効果がありますが、だからといって短時間に繰り返し行うのは逆効果になります。
というのも、眼の周りには繊細な六本の筋肉があり、それらが引っ張り合う事で眼球は動きます。
これから紹介するトレーニングはこの筋肉を疲労させるため、オーバーワークすると筋肉が硬直する恐れがあります。
トレーニングの時間は一日十五分までと決めて、休養日を作り眼を休ませましょう。
親指トレーニング
両手にペンを持って真っ直ぐ伸ばします。そのペン先を一秒ごとに交互に見つめます。これを十秒行います。
次に、両手を動かしていきます。片方は上へ、片方は下へと円を描くように動かしていきます。
この時もペン先を一秒ずつ交互に見つめていきます。
腕が交差したら片方は降ろし、残った方を目と目の間に近づけてより目にしていきます。
一連の動作が終わったら休憩を挟んでもう一度最初から行います。
五本指トレーニング
両手を目の高さまで持ち上げ、肩幅程度に広げます。
顔は正面を向いたまま固定して、親指から順に、指先を左右交互に見ていきます。
右手の親指を見たら、左手の親指、次に右手の人差し指、左手の人差し指という順番です。
上達するコツは眼球だけを動かすように意識することです。
人指し指ピント合わせ
こちらも立ったままでも、座ったままでも構いません。
まず左手の人差し指を立て、顔の前に置きます。次に、右手の人差し指を立てて、顔からできるだけ遠くに伸ばします。
このとき、左右の人差し指が両目の間で一直線になるのが望ましいです。
そして左右の人差し指と直線上にあり、出来るだけ遠くの物を目印と決めます。
遠くの目印、奥の指、手前の指を順番に見つめていき、ピントを合わせていきます。
ピントが合うとその物がはっきりと見え、それ以外の物はぼやけて見える様になります。
初めは一日1分を目安に、慣れてきても5分を目途に止めましょう。
線をなぞるトレーニング
A4サイズの紙を用意し、縦に使います。
紙の上下に数字を振ります。数は幾つでも構いませんが、順番はランダムにします。
次に上下に書いた数字を、それぞれ同じ数字同士を線で結びます。
この時、線は曲がりくねって複雑な物ほど効果が期待できます。線は重なっていても大丈夫です。
用紙が完成したら、それを目で追っていきます。この時気を付けるのは、線をゆっくりと目で追っていくことです。
以上のトレーニングを一日数セットずつ順番に行っていきましょう。
どのトレーニングでも顔を動かさずに眼だけを動かす事を意識すれば、高い効果が期待できます。
どれか一つを集中的に行うのではなく、全てのトレーニングをバランスよく行うのが大事です。
■相手の行動を読み解く3つのポイント
次に観察力を鍛える方法を紹介します。
といっても、観察力は動体視力のように科学的なトレーニング方法がある訳ではありません。
ここで紹介するのは、剣道の試合において日頃から見ておくべきポイントの事です。
これから紹介するポイントを試合だけでなく、練習中にも意識的に観察しておく癖を身に着けておけば、自然と観察力は向上していきます。
相手の得手・不得手
得手・不得手とは得意な事、苦手な事という意味です。
どんなに強い選手でも、面が得意だから面を中心に組み立てたい、あるいは小手が苦手だから小手はあまり使わないという思考があります。
そういった思考は染みついて取れないため、日頃の行動にも表れてきます。
もしも、過去のデータが閲覧できればどこで一本を取っているのか、そういったデータが手に入らなくても試合中に繰り返し打って来る場所から判断する事は出来ます。
相手の得手・不得手が分かれば、逆に相手の苦手な部分を突く事も可能になります。
相手の癖
癖といっても、人の数だけ癖はあります。
癖が分かったからといって、それを試合で有利に使えるかどうか分かりません。
そこでオススメなのが相手の視線です。人の考えていることは目に現れると言います。
剣道でも同様で、これから打ち込むと決めた場所に視線を向けてしまいがちです。
面に隠れて見にくいかもしれませんが、相手の視線を探るのは有効な手段です。
相手の呼吸
人は何か行動をする時に大きく息を吸います。
特に、剣道では掛け声と共に攻撃を繰り出すため、大きな呼吸があったら攻撃をしてくる確率は高いです。
呼吸を読むときのポイントは相手の肩です。
深呼吸をすると分かるかと思いますが、人は大きく息を吸うと肩が上がります。そして息を吐くと下がります。
竹刀から目線を外すというリスクを背負う事になりますが、相手の肩を見るという癖を付けておくと役立ちます。
■まとめ
今回紹介したトレーニングやポイントは剣道における重要な「眼」を鍛える方法です。
「一眼二足三胆四力」という言葉にもあるように、剣道において「眼」を鍛えるのは周りに差を付けるチャンスです。
今回紹介した方法を日々の鍛錬に取り入れて、剣道で強くなりましょう。