構えを極めるためには
“構え“は剣道における基本姿勢です。構えた状態から打ち込んだり、相手の攻めをかわす動作に移るため、構えをしっかり取ることはとても大切です。
基本的な構えには「中段の構え」「下段の構え」「上段の構え」「八相の構え」「脇構え」の五つがあります。
これらの中で、最も基本中の基本である「中段の構え」を中心に説明します。
■構えの基本となるポイント
その前に、まずは構えをとる際の基本からおさらいしましょう。
剣道の構えは、相手の動きにいつでも反応できるのはもちろん、見た目の美しさの役割も担っています。
基本的な構えには、「足の構え」と「手の構え」があります。
足の構えについて
足の位置は人が自然に歩く際の形が基本になり、右足が前に左足が後の状態になります。
そして右足の踵のラインに、左足のつま先を持っていきます。このときの左右の幅ですが、拳1個程度空けるのが基本です。
実際に構えたときは左足の踵が完全に浮いた状態になっており、そのときはつま先に体重がかかります。
一方で右足の踵は床につけますが、そこでは完全に床につけないで少し浮いた状態で構えると、攻撃しやすくなります。
手の構えについて
まず左手の握りから行います。
左の手は、小指、薬指、中指の3本で握りしめ、人差し指と親指はその上に軽くそえるような感じで握ります。ちなみに小指は竹刀の端の部分を握ります。
そして右手も左手と同じように、小指、薬指、中指の3本の指で握り、その上に人差し指と親指を軽くそえてください。
なお人差し指はツバにつく感じで握り、親指はツバから少し離して握るのが理想です。
このときは右手と左手、それぞれの親指と人差し指がV字形になっており、そのVの部分に竹刀の上がくるようにします。
左手の位置はおへその前に持っていきますが、左手全体ではなく親指の付け根部分の関節を合わせるようにしましょう。
実際の構えは各自の体格などでも変わりますが、慣れてくると自然にできるようになります。
■現代剣道の基本、中段の構え
「中段の構え」は隙が少なく、攻撃にも防御にも対応しやすいため現代では中段の構えが基本とされています。
構え方としては、右足を一歩前へ出し、左足を左の方へ足一つ分開け、右足の踵より前へ出ないように立ちます。
この時の重心はおへその下辺りに保っている感じを心掛けて立ちます。
そして剣(木刀・竹刀)を握る両手は、剣を真上から握ります。この時、左手は剣のつか(端の方)を握り、右手は剣のつば(剣を握れるところ迄の前の位置)を握ります。
また、両手で剣を握る力加減を10割とすると、左手に7割、右手に3割の力加減で握ります。そして、剣を握った左手の位置は、おへそから握りこぶし一つ分下に位置して、身体と左手の間が握りこぶし一つ分空いた状態を保ちます。
剣先は、自分自身の喉もとから延長線上に位置するか、或いは、その3cm下になるように構えます。相手がいる場合は、相対している相手の方に、剣先の延長線上が相手の喉もとに向けられるように構えます。
■構えが上手くいかないときは
構えに慣れないうちによくありがちなのは「肩に力が入る」「猫背になってしまう」「両肘が外に張る」等です。そんな時は下記に気をつけてみてください。
肩の力を落とす
肘の力を落として背筋を伸ばす
顎を引き、頭のてっぺんが上へ吊られた状態をキープする
「三挙動」の素振りや、試合などで、剣さばきをした後で「中段の構え」に戻る時も、上記の点をを意識して行なう事で、構えを極める事が出来るのです。
■他の構え方
現代では中段の構えを用いることがほとんどですが、他にも構え方は存在します。
現代のルール上では効果を発揮しにくい構え方のため、試合で用いられることは少ないですが、剣道に関する知識として知っておいて損はないでしょう。
上段の構え
竹刀を頭上に振り上げた状態のことを上段の構えといいます。
現代では中段の構えを用いることが一般的ですが、選手によっては上段の構えを取る方もいるようです。竹刀を高く上げた状態から振り下ろすため打突に移る動作は速く、攻撃的な構えとされていますが、そのぶん胴が無防備になるため、守りに難があります。
相手に対し高圧的に接することを表す慣用句として「大上段に構える」という言葉がありますが、試合においても目上の相手に対して上段の構えを取ることは失礼とされているようです。
下段の構え
竹刀の切っ先を下に下ろした状態の構えを下段の構えといいます。
下半身への攻撃がルールとして認められていないため下段に構えるメリットは少ないですが、攻撃的な上段の構えに対して守りに強い構えといわれています。
ただし、実際に試合で使われることはあまりないようです。
八相の構え
野球のバッティングフォームのように竹刀を自分の体と平行に構える状態を八相の構えといいます。
時代劇で殺陣のシーンなどによくみられる構え方ですが、これは実際の真剣を長時間持たなくてはならない状況で疲れにくくするための持ち方とされています。
かつて真剣を用いた斬り合いが行われていた時代において効果を発揮する構え方であり、試合においてはほとんど用いられません。
脇構え
切っ先を後ろに下げ、自分の体で刀身を隠す状態の構えです。
こちらも真剣を用いていた時代に使われていた構え方で、自分が持っている武器のリーチを悟られないようにする意味合いがありますが、試合では竹刀の長さが規定されているため竹刀を隠す必要性は薄く、やはり試合で用いられることはあまりありません。
■まとめ
基本となる構えについて、中段の構えを中心に解説してみました。
上段や下段といった、試合であまり使われない構え方にも使われないなりの理由があり、中段の構えがどんな状況にも対応しやすい形であるかがおわかり頂けたと思います。
しっかりとした構えを取ることは基本ですので、先生の指導の下、しっかり身につけるようにしましょう。