半世紀以上前の最年少記録を更新
2014年の全日本選手権は、誰もが予想しなかった結末が待っていた。
頂点に立ったのは筑波大学3年生の竹ノ内佑也。
学生の優勝者が1971年の川添哲夫(国士舘大)以来、そして最年少記録としては1960年の桑原哲明(旭化成・21歳)の記録を54年ぶりに更新した。
川添は21歳10カ月、桑原は21歳9カ月だったのに対し、竹ノ内は21歳5カ月での優勝だった。
■台風の目となった若手剣士
若手で注目された安藤翔(北海道・北海道警)が初戦で敗れ、前年優勝のベテラン内村良一(東京・警視庁)が3回戦で姿を消すなど、翌年に控えた世界選手権大会の候補選手が何人か姿を消していく中、4人出場した大学生(1名は大学院生)の中で竹ノ内が勝利を重ねていく。
筑波大の大学院生で日頃から剣を交えている川井良介(茨城)との2回戦は、メンを先取したあとドウを返されるが、これがこの日唯一の失点となった。
それ以外はすべて警察官との対戦となったが、ベテランに対してもまったく臆するところなく、よく伸びる力強いメン技を中心に、ドウ技、コテ技も決まり技としていった。
ベスト4に残ったのは竹ノ内のほか、畠中耕輔(27歳・東京・警視庁)、西村英久(25歳・熊本・熊本県警)、國友鍊太朗(24歳・福岡県警)と全員が20代の選手となった。
前年も四強のうち3名が20代だったが、4名が20代となったのはこれも1976年以来という久しぶりの記録だった。
竹ノ内、畠中、西村の3人はすでに世界選手権の日本代表候補に入っていたとはいえ、畠中以外の3人が初出場という顔ぶれになった。
■史上最年少覇者の誕生
4人の中で最も実績のある畠中との準決勝で竹ノ内は開始早々に返しドウを奪い、会場を沸かせる。二本目は判定についての賛否を呼んだ場面だが、コテを放った畠中の竹刀を巻き込むように面を決めた。
翌年のこの大会を制することになる西村を準決勝で國友が下し、決勝は福岡代表同士の対戦となる。
福岡予選では竹ノ内が勝っていた。冷静な戦いぶりが光っていた國友だったが、竹ノ内がコテメンの連続技で先制すると、さらに國友が攻めるところにメンを合わせ、二本勝ちで頂点にたどり着く。
この瞬間史上最年少覇者が誕生した。
「優勝の実感は全然湧きません。テレビでしか観たことのない世界でしたが、各県から選ばれた選手が出ているので、普段とは違った気持ちが出たかな、と思います」と試合直後に竹ノ内は報道陣に語っている。
翌年、同じ日本武道館で行なわれた世界選手権大会で竹ノ内は団体優勝に貢献、個人戦でも2位と八面六臂の活躍を見せる。
この大会には日本武道館がほぼ満席となる観客が詰めかけ、その年の全日本選手権は史上最多となる1万人を超える観客が集った。
若き剣士の優勝は、剣道界に何十年も忘れていたような熱気を吹き込み、一般の人々からの注目度も高まった。