同点で迎えた大将戦、全身全霊の技で勝利を掴む・高橋英明(2000年 第11回世界剣道選手権大会)

大将戦で奮闘した高橋英明
同点で迎えた世界一を決める大将戦で、全身全霊の技を見せた高橋英明
名勝負物語

前回の雪辱を晴らし、ピンチを乗り越えた高橋の奮闘

アメリカ・カリフォルニア州サンタクララで開催された第11回世界剣道選手権大会、男子代表戦は予想よりも早い段階で緊迫した場面が訪れた。

準決勝のカナダ戦、先鋒井口清(埼玉県警)、個人戦を制した栄花直輝(北海道警)がともに引き分けに終わると、中堅平尾泰(警視庁)は相手に先制を許す。

何とか一本を返して追いつきながらもさらに一本を失って、カナダにリードを許した。

このピンチは宮崎史裕(神奈川県警)の二本勝ち、高橋英明(京都府警)が二本勝ちを続け、ことなきを得た。

しかし、本当の緊迫した場面は予想通り韓国との決勝で訪れた。先鋒井口が二本勝ちで快勝し幸先のいいスタートを切った日本。
栄花は引き分けてリードを守るが、平尾が不運な判定もあって二本を奪われてしまう。これで勝ち数、取得本数とも同点となった。

副将宮崎は引き分け、前回大会と同じようにまったくの同点で大将戦を迎えた。
大将高橋は前回大会の決勝で中堅をつとめ、二本負けを喫して日本にピンチを招いた悔しい経験をしている。
そして前回は副将の宮崎正裕(今大会の副将宮崎の兄)が追いつき流れを日本に戻して大将につないだ。

今回は中堅で追いつかれるという流れ、どちらに転んでもおかしくない大将戦だった。会場は前回大会以上の緊張に包まれた。

対するは韓国のベテラン剣士キム・ジョンゴクである。そのキムを高橋が溢れ出る気迫で圧倒した。
まだ試合が始まってさほど時間が経たないうちに、全身を躍らせるようにしてコテに跳び込む。これが一本となった。

そして二本目開始後間もなく、今度はひきドウで一本。1分とかからずに勝利を手にしたのである。

「前回の悔しさをバネにやってきた。あきらめずにやってきてよかった」

と高橋は試合後に語っている。

世界大会での悔しさは世界大会でしか返せない。
その想いをこめ、まさに全身全霊で戦った一世一代の大勝負だった。