45年ぶりの頂点に立った伝統校。女子も日本一に輝く・早稲田大学(2010年 全日本学生優勝大会)

2010年全日本学生優勝大会 名勝負物語

久々の優勝の陰に、一刀流の切り落とし一万本の稽古

戦前から剣道が盛んだった早稲田大学は、戦後剣道復活後も強豪校の一つに数えられ昭和56年までの全日本学生優勝大会で9回の入賞(3位以上)を果たしている。
そのうち昭和40年には優勝を果たしていた。

昭和40年代あたりから体育系の大学などが台頭し、伝統校である早大はそれら新興勢力の陰に隠れてしまった印象があった。

昭和60年代頃から平成になってしばらくは上位に進めない時期が続いた。それが平成17年になって久々に2位入賞を果たすと、平成21年にも3位となった。

その翌年、平成22年の全日本学生優勝大会では、早大は1回戦からヤマ場を迎えた。進境著しい環太平洋大との試合はどちらも勝ち星をあげられず代表戦にもつれ込む。4年生の大将渡邉雄太が長い長い代表戦を制して何とか勝ち進んだ。

筑波大との準々決勝は同勝数、一本リードを許して迎えた大将戦で、渡邉が後に全日本選手権覇者となる西村英久を下し勝ち進んだ。すると準決勝は専修大に対し、先鋒、次鋒が引き分けた後、五将から大将まで連勝し5─0と大勝した。

久々の優勝を目指す早大の決勝の相手は、初優勝を目指す日体大だった。

龍谷高校時代にインターハイ団体を制した川﨑輝士(3年)が、3度の代表戦を切り抜けて決勝に駒を進めてきた。

早大の副将には川﨑とともに龍谷高校で日本一を手にした西村龍太郎がいる。先鋒菊地裕志、次鋒山中駿と連勝した日体大が優位に試合を運ぶ。

しかし早大は準決勝と同じように五将戦から勝利を連ねた。川口敬典、甲斐勇太、岩川力がそれぞれ一本勝ちで逆転すると、副将西村は永山敏行の出ばなをとらえてメンを決める。相手の大黒柱である川﨑に試合を回させずに早大が優勝を決めた。

45年ぶりとなった早大の優勝。この大会に向けて一刀流の切り落としを一万本稽古したという、伝統の力も働いていたのだろう。

この優勝に発奮したであろう女子も翌月の全日本女子学生優勝大会で初の優勝を果たし、早大にとって記念すべき年となった。

写真=窪田正仁