竹刀についての基礎知識
竹刀(しない)とは、竹を縦に八分割し、そのうちの4本を合わせて革などで縛った物です。
誕生の経緯は諸説ありますが、おおよそ19世紀ごろには現在使用されている竹刀に近いものが使われていたそうです。
■竹刀の特徴とは
剣道を象徴する道具である竹刀。竹で出来たこの道具は見た目だけだと固く、木刀のような木の塊のイメージがあるかもしれません。
ですが、一度振ってみると分かるのですが、軽く、何よりもしなります。
スローモーションカメラで面を打ち込んだ瞬間を撮影すると、丸みを帯びた面の頭部に沿うようにしなっているのが分かるほどです。
元々、竹刀という呼び名も「撓う(しなう)」という、弾力があって、折れず柔らかに曲がるという言葉から来ているという説もあります。
竹刀の構造
竹刀は縦に八分割された竹の四本を、中結と呼ばれる細い皮や先革で合わせて、柄から先端までを弦で止めます。
そのため中は空洞になり、竹を使っていることもあり熟練者が面を決めた時は小気味よい音が道場に響き渡ります。当然、受けた側は凄まじい衝撃を味わいます。
竹刀にも寿命がある?
そんな竹刀ですが、天然の素材を使っているため、強度・耐久性には個体差があります。この個体差とは国内産か海外産の違いではなくその年の雨量や気温などが関係しています。
そのため、貴重な国産竹の竹刀だからといって長持ちで丈夫とは限りません。では竹刀全般の寿命がどれぐらいかというと、およそ半年から一年と言われています。
ただし、これは扱う人の力量や練習の頻度、時間、湿気や気温などで変わっていきますので一概には言えません。
■竹刀の材質
竹刀に使われる竹の種類って?
竹刀は使われている竹の種類によって値段や特徴が違います。昔は日本のあちらこちらに竹林があり、竹刀も純粋な国産の物でしたが、現在はコストの安い中国や台湾などから輸入されています。
輸入竹は大まかに真竹(まだけ)と桂竹(けいちく)の二種類に分かれています。
真竹は繊維の密度や、柔軟性、色つやなどがすぐれており、割れにくく、ささくれも少ないという性質を持っています。そのため高価になってしまい、お店でも高級品扱いとなっています。
一方で桂竹は、柔軟性で真竹に劣り、固いと言われています。そのためささくれなどが出来やすく、その分安価な商品として世に出回っています。
ですが、桂竹が真竹に劣るという訳ではありません。ある日本一の剣士は、その打ち込みの速さから恐れられていましたが、好んで使っていたのは桂竹の竹刀です。
その理由を尋ねられた時、「真竹は柔らかい」と答えました。これは面を打つ時に彼のスピードに真竹ではしなり過ぎるという事なのです。
つまり、真竹か桂竹を選ぶのは使い手の好みと言う事になります。
中にはこんな竹刀も
最近の流行りでは、燻竹(くんちく)という竹を燻した竹刀があります。見た目は濃い黒色の竹刀です。
燻す事で、竹の強度を上げるのです。その分値段は高くなりますが、強度は増しており耐久性に優れます。
また、竹以外の素材としてはカーボン(炭素繊維)を使用した竹刀もあります。
竹と比べると段違いに折れにくく、手入れも簡単なため長く使用する事が出来ます。ですが、その分固くしなるので、打ちどころによってはかなり痛いです。
また、大会によってはカーボン製竹刀の使用が制限されている場合もあります。
竹刀を選ぶときはメリット、デメリットだけを見るのではなく、実際に手に取ったり、振った時の感触を確かるのがお勧めです。
■竹刀の種類
並型、普及型
標準的な形をしている竹刀です。非常にバランスがいい竹刀のため初心者から上級者まで安心して使えます。
練習用や試合用まで幅広く多岐にわたって幅広く使えます。
状態の良い竹を厳選して組み上げた上製竹刀(特徴は並型、普及型と変わらない)もあります。
小判型
柄の部分が楕円形の形になっている竹刀です。正しい握り方が学ぶことができ、型や素振りの練習に向いているため初心者の方に適しています。
上製小判型もあります。
胴張り型
並型、普及型に比べ柄の部分が太く、重心が手元にある竹刀です。
重心が手元にあり体から近くなっているため、竹刀をもったり振ったりした時、軽く感じられスピードが出ます。
そのため技や返しが速くなり出しやすくなるため、主に試合用として使う人が多いです。
実践型
胴張り型と同様に柄の部分が太く重心が手元にある竹刀です。
胴張り型よりも重心がより手元や体に近くなっており、さらに剣先に向けて細く作られています。
そのため胴張り型よりも軽く感じ、スピードが格段に速くなり、より実践向きの竹刀になっています。
しかし、細くなっているため耐久性が低くなります。
古刀型
太さが全体的に均一で直刀に近い竹刀です。剣先に重心があるため、持ったときや振ったとき重く感じます。
そのため重く伸びのある一打ちができますが、力のある人でないと使用するには難しいため使用する人は少ないです。
柄細型
柄が細いため手が小さい人でも握りやすい竹刀です。握力が弱い人でもしっかりと握れます。そのため女性には最適です。
■自分に合った竹刀選び
初心者の方は竹刀の種類が多く、どれに手を付けたらいいかわからないこともあるかも知れません。
取り立てて何でもいいというわけではなく、試合など公式の場ではルールも規定されています。
規定されているサイズ
幼少期(小学生以下)は特にサイズの規定はされておらず、身長の高さに合わせてサイズを決めます。
先生方の指導方針によって、竹刀についてのサイズの考え方は異なるのでこれが基準とは言えませんが、大体は脇から肩幅の間の長さに合う竹刀を選択すれば問題ないです(3尺6寸以下)。
中学生からは全日本剣道連盟から規定されているサイズに適合していないと試合で使用することができません。
具体的には「竹刀全長」「重量」「先革」についての指定があります。
中学生の剣道用竹刀のサイズは3尺7寸以上(呼び名:さぶなな)
男子の重量は440g以上・先革25mm径、女子の重量は400g以上・先革24mm径
高校生の剣道用竹刀のサイズは3尺8寸以下(呼び名:さぶはち)
男子の重量は480g以上・先革26mm径、女子の重量は420g以上・先革25mm径
大学生の剣道用竹刀のサイズは3尺9寸以下(呼び名:さぶく)
男子の重量は、510g以上・先革26mm径、女子の重量は、440g以上・先革25mm径
という規定になっているので、剣道用竹刀を購入する際にはその点を注意しましょう。重量は鍔を含まない完成品の重さです。
よくわからないという場合は、剣道具店の店員さんに確認してみるのも良いかもしれません。
■竹刀の手入れ法
竹刀の手入れは常に心がけましょう。中結から剣先までの部分は特によく点検する必要があります。その部分を物打ちといいますが、竹がささくれやすい場所です。
初心者や背の小さな剣士は物打ちが面金にあたってすぐにぼろぼろになります。稽古の前には必ず点検しましょう。
特に竹刀がささくれると相手にとって危険です。ささくれた竹刀のかけらは剣道の仲間を失明させかねません。
自分のためだけではなく、稽古や試合を受けてくれる相手への敬意のためにも竹刀の手入れは必要です。
手入れに必要なもの
竹刀の手入れの道具は、武道具専門店にセットで売っていますから、そろえておくと良いでしょう。
今手元にない場合は、やすり、サラダ油で代用できます。やすりは、粗目、細めの2種類あるとよいです。
小さなささくれでしたら、そのまま手入れできますが、大きな深いささくれの場合は、分解した方が良いです。
分解しながら、中結、弦、剣先のしくみを撮影しながら分解することをおすすめします。元に戻す際に大変役に立ちます。
ささくれを取って滑らかに
まずはささくれている部分をやすりで削ります。大きめのささくれは、カッターが良い場合もあります。
厚手で粗目のやすりも代用可能ですが、ささくれが手に刺さらないように気をつけましょう。大きなささくれがとれたら、細目のやすりでなめらかにします。
なめらかになったら、油を塗り込みます。竹刀専用の油があるので、常備しておくとささくれ防止のためにもいつでも使えて便利です。
手元にない場合は、新しいサラダ油で代用可能です。ティッシュにしみ込ませて、竹刀に塗り込みましょう。
残らないように拭き上げることも大切です。
竹刀を長持ちさせるには
竹刀は竹で出来ているため、湿気は天敵です。湿気が少なく通気性の良い場所で保管するようにしましょう。
また、長期間使用しない場合は付属品を外して保存すると効果的です。
■竹刀についての疑問
竹刀を外に持ち歩いてもオッケー?
あまり剣道に詳しくない人の素朴な疑問として、竹刀や木刀のような武器になりそうな物を持ち歩くと、銃刀法違反のような犯罪になるのではというものがあります。
確かに竹刀にしろ木刀にしろ、街中で振り回せば危険ですし、木刀に至っては人に大怪我を負わせることも可能です。間違った使い方をすれば大変危ない道具です。
ですが、銃刀法で規定されている刀剣とは、『物体を切断する事が出来る鋭利な刃』の事で、その中に竹刀や木刀は含まれておりませんし、持ち歩いているだけで銃刀法違反で罰則を受けることはありません。
しかし、それをそのまま持ち歩ていると話は別です。
むき出しのまま竹刀や木刀を持って街中を歩くと、軽犯罪法や迷惑防止条例に抵触する恐れがあります。
電車の中などでむき出しの木刀を持っているだけでも、周りは恐怖を感じてしまいます。そのため、大会や練習に行くなどの理由であっても、袋などに入れて持ち運ぶべきなのです。
剣道は自己鍛錬を目的とした武道であり、人に迷惑を掛けるのはその目的から外れる行為です。竹刀袋は専門店で安価で販売しており、また自分で作る事も可能です。
もしも何かの事情で竹刀袋や木刀袋を無くしてしまい、家に持ち帰らなくてはいけないときは、新聞紙などで包むと問題ありません。
■まとめ
稽古にしろ試合にしろ、何においても欠かせない存在である竹刀。
剣道をやったことがない人でも見たことくらいはあると思いますが、知られていないことも意外と多いのではないでしょうか。
一口に竹刀といっても素材や作り・長さは多種多様ですし、取り扱いのルールや手入れの方法など、知っておきたいことも沢山あります。
竹刀についての知識を深めることで稽古や試合に何らかの役に立つこともあるでしょう。ぜひ色々調べてみてください。