上達するための心構えをしておきたい
剣道を始めたばかりの人の悩みとしてよくあるのが「なかなか上手くなれない」「上手くなった実感がない」ということです。
その原因として「運動神経が悪いから…」と思っていませんか?
実のところ剣道は運動神経がさほど良くなくても上達する競技なのです。
■上達に求められることとは何か?
剣道に特別に必要なセンスはありません。運動神経はあまり関係なく、誰もがコツコツと頑張れば上手になっていくものです。
ただ、そのコツコツ頑張るということが難しいもの。途中で投げ出してしまうとそれまでの努力は水の泡になりますね。
そのため、ある程度の忍耐力や継続力が必要になるかもしれません。
剣道に向いている性格は?
剣道は礼に始まり礼に終わることが基本です。
そのため、人のアドバイスを素直に受け入れられて、挨拶ができる人間は向いていますね。
逆に対戦相手を挑発したり、礼儀のしっかりしていない人間は向いていません。これは基本の基本ですが、実践部分ではどのような性格が向いているのでしょうか。
性格部分を具体的に考えてみる
一瞬の気のゆるみが負けに繋がったり、相手の動きを細かに洞察しながら相対して行う競技であることに着目すると、「集中力」「分析力」「冷静な判断力」が重要となってきます。
もっと具体的に言えば、『落ち着きのある人』『客観的に自分の稽古・試合を見ることができて、かつ分析することができるマメな人』『研究心がある人』『自信が持てる人』が向いています。
逆に、毎日の稽古に対してその場限りの感覚に頼った動きをする大雑把な人や、慎重でない人、落ち着きのない人、自信がなかなか持てなかったりする人は向いていないと言えると思います。
先生や先輩の声を聞く
道場での稽古・試合をしていく中で、先生や先輩から指摘されたことにしっかりと耳を傾けることです。そして、それらを素直に聞き入れて自分の身になるようにする必要があります。
初めは指導や指摘されていることが解からず我流になっているのに気がつかないのはよくあることです。
また「見取り稽古」で、先生や先輩がどのように剣さばきをしているのか、足さばきはどうか、気合の声は大きく多いのか、構えはどうか等々見て自分の出来てないところを見つけて、稽古の中でそれをいかに自分のものにしていくかということです。
武道や芸能の学びに関する言葉で「守破離(しゅはり)」というものがあります。
最初の「守」は師の教えを守り基本を身につけること、その教えに自分なりの工夫を足すことが次の「破」、最後の「離」は師から自立して自分の剣道の形を作ることを意味しています。
すべての責任を自分で負い、独りで戦い抜く力を身につけることが最終的な目標になります。
そこにたどり着くために、まずは「守」という基本の稽古があるのです。
己の心との戦いというのも忘れずに
これらの性格の部分は、技術や体格とは違った「強くなるためのファクター」と言えます。
というのも、剣道は精神面が結果に大きく左右するスポーツであり、日々の稽古が試合の結果に大きく結びついてくる競技だからです。
同じ力を持った人間同士でも集中が少しでもできていないとあっという間に勝敗が決します。
対戦相手の情報が少しでも分かっていて、なおかつ自身のスタイルと合わせて研究していれば勝利の確率はとても大きなものとなります。
とはいえ、性格だけで強さが決まるものでもありません。もし自分の性格が剣道に向いていないと思ったとしても、そこに向き合い、乗り越えていく心の強さも何より大事な要素と言えます。
■体格による有利不利はあるのか?
身長と体重は攻めの部分と守りの部分で戦い方を大きく左右する重要な要素ではあります。
しかし、剣道が他の格闘技と大きく異なることの一つとして体重別の区分がないことが挙げられます。大柄な選手、小柄な選手も一緒に戦わなくてはなりません。
初心者からすると「大きい、重い方が有利だろう」と思いがちですが、実はそうとも限りません。
実際に地方大会や国際大会などを見てみると、優勝選手や注目されている名のある選手はみんな体格が大きいかというとそうでもありません。
身長の高さ・低さ
身長が高いと確かに有利な部分はあります。例えば腕のリーチが長いため、一旦引いた状態からの攻めが可能となります。
一気に相手への間合いを詰めることができるというと分かりやすいかもしれません。
試合中の鍔競り合いでも体重が重い方が剣に大きな力を加えることができますし、多少体勢が悪くても強引に相手を突き放すことが可能です。また相手に対する威圧効果もあり攻めやすくなるという利点もあります。
しかし、小柄な選手に間合いを詰められてしまうと腕が長いぶん瞬時の防御を行うのが難しいという部分もあるのです。
逆に小柄な選手は大柄な選手に比べて細かい動きが出来る点が有利と言えます。剣道は足を使い動くスポーツです。
足を動かさず一か所に留まっているだけでは必ず負けてしまうでしょう。そういった意味でスピードあるフットワークが重要な競技なのです。
しかし小柄な選手は、腕のリーチの短さから間合いがある程度離れている状況が苦手だったり、相手への面など高い位置への攻撃がしにくい点が不利と言えます。
対戦相手からしてみれば、小手や胴、急な間合いの詰めに対して注意を払えば良いので守りやすいでしょう。
つまり、ある程度の技術がある選手レベルになると体格は必ずしも試合の結果に直結しないということになります。
このように剣道においては体格の大小によってそれぞれメリット・デメリットが存在します。
どちらが有利ということではなく、自分にあった試合運びのスタイルを身に付けることが重要と言えます。
高校生以下の学生においては一概そうとも言えませんが、成長期で身体的にも技術的にも発展途上にある学生は、同レベルの相手と試合を行った場合、体格的に勝っているほうが有利となります。差が体格・精神面・コンディションくらいしかない場合、体格が試合結果に大きく影響するのです。
最後に
まず「なぜ始めたか」という理由を大切にして下さい。それが不純な理由でもかまいません。「かっこよさそうだから」とか「強くなりたい」などの理由が丁度良いのだと思います。
稽古は辛いことの方が多いはずです。辞めたいと思う時がくるとはずです。そんな時に始めたきっかけを思い返すと不純な理由でも思いとどまることができます。途中で辞めるということはかっこよくもなく、強くもありません。思いとどまり再チャレンジすることで精神も強くなれるのです。
これも全てのことに言えますが、最初は上手くいかなくて辛い思いをしても、経験を積むことによって楽しくなっていきます。
続けるということが剣道にとってなによりも大切な事です。「相手を想い自分と向かい合う」ことができてくると、稽古も試合も楽しくなっていきます。
楽しめるようになると次の目標がうまれ、それを目指して頑張ることができるのです。