一本を取るために必要な筋肉トレーニング法

一本を取るために必要な筋肉トレーニング法 上達のコツ

稽古に取り入れたい実践的トレーニング

筋肉トレーニングは剣道ではなかなか定着しません。
なぜなら、あくまで日々の稽古をしっかりすればいいという従来から考え方と、剣道に力任せの打突は必要ないと思われているからです。

しかし、スポーツ科学を取り入れている強豪校では、筋トレを取り入れることで成果を上げています。
体幹を鍛えて瞬発力に必要な筋肉を養うことは、より正しい剣道の形を作り、試合でのパフォーマンスの向上に役立つでしょう。
テクニックの向上だけでは試合で勝つことはできません。テクニックに伴う筋力がなければいけないのです。
一瞬で間合いを詰めて相手に飛び込むためには下半身の強化を、技を素早く打ち込むためには上半身の強化が必要です。

■瞬発力を鍛える筋肉トレーニング

剣道において必要な瞬発力は、足の蹴りの強さです。
隙を感じた瞬時に打ち込むためのふくらはぎの筋力と、どんな間合いでも飛び込めるための大腿部の筋力アップをしましょう。

下腿部(ふくらはぎ)の筋力アップ

下腿部の筋力アップは、誰でもできそうなつま先立ちです。
簡単そうですが、ゆっくりと繰り返す反復運動は結構きついです。足の指でしっかりと床をつかまえるようにします。
足の指のグリップがきいていると、踏み込むときの足の蹴りにも役立ちますので、ぜひ意識しながら筋トレをしてください。

下腿部(ふくらはぎ)の筋力アップ

  • 1. 裸足で床の上に立ちます。足を肩幅に広さに広げます。
  • 2. ゆっくりとつま先立ちをします。頭が上に引っ張られるように意識します。
  • 3. 上まで行ったらゆっくりと下までかかとを下ろします。
  • 4. かかとを床につけません。かかとが床につく手前で、またアップします。
  • 5. 15回から20回が基本ですが、回数を増やしていくか、バーベルなどで負荷をかけるかなどは様子を見ながらしましょう。

■竹刀の振りを鍛える筋肉トレーニング

竹刀を振るのは筋力ではなく、関節を上手に使えるかどうかということをよく言われます。
筋力に頼ると力が入りすぎてしまい、右手で上から打つ竹刀の振りになりやすいので上達しません。
そのため剣道では筋トレがなかなか浸透しないのではないかと思われます。

しかし、やはり筋力がなくては試合では勝てません。筋力が違いすぎると、相手の竹刀の勢いに負けてしまいます。
竹刀を振るのに必要な筋力は、広背筋、上腕三頭筋、握力が主となります。手首のスナップをきかせることも大事です。

それぞれの鍛え方をお伝えしますが、偏った筋力は正しい剣道の形を崩します。
自分が足りていないと思われる筋力アップに役立ててください。やりすぎには注意です。

広背筋の筋力アップ

広背筋を鍛えることは、腕の力だけで竹刀を振ることを防ぎ、構えの姿勢が良くなることで中心のぶれない竹刀の振りにつながります。
上腕を鍛える前に、背中の筋肉をつけましょう。

  • 1. マットを敷いた床にうつぶせに寝ます。両腕は頭の後ろで組みます。
  • 2. ゆっくりと背中を反らします。ポイントは、腹部は床につけ、背中だけを反らすこと。腰を反らすと腰痛の原因になります。足は固定し、立てたつま先は床に接したまま行います。
  • 3. 10回~15回が目安です。回数を増やしたり、休憩を入れたりしながら3セット行うなど体力に合わせて負荷を増やしてください。

■上腕三頭筋の筋トレで素早い振りを目指す

竹刀を素早く振り上げる筋肉は上腕三頭筋を使います。
隙を見せずに面を打つには、振り下ろすときよりも振りかぶるときの速さが重要になります。
振りかぶるときの速さで勝てれば、合い面での一本を取れるようになります。

リバースプッシュアップ方法

  • 1. 腕立て伏せの要領で反対(上)を向いて行う、リバースプッシュアップをします。
  • 2. ベンチ(低めの椅子)の上に座り、横に手をつきます。
  • 3. 足を伸ばして、前にスライドします。
  • 4. 腰がベンチから前に出たところで、ゆっくりと肘を90度に曲げて腰を落とし、また伸ばして腰を持ち上げます。
  • 5. 10回が目安です。できるようになれば3セットまで増やしましょう。
  • 6. ベンチや椅子が固定していないと危険です。壁際で行うか、脚を固定して行ってください。

■手首のスナップの強化と握力アップ

剣道で高度な技を身につけるには、手首のスナップと柔軟性が必要になります。
また、握り手の絞りがきいていないと、せっかく打てていても確実な一本にはなりません。
手首の強化と握力アップのために、ペットボトルでのトレーニングをおすすめします。

ペットボトルトレーニング法

  • 1. 500ml~2Lのペットボトルを2本用意し、水を1/3から半分くらいまで入れます。
  • 2. 両手でそれぞれふたの部分を握り、ペットボトルをまっすぐ構えます。
  • 3. 竹刀でスナップをきかせるように、ペットボトルを上下に振ります。
  • 4. 10回から始めましょう。手首への急激な負荷は関節を痛めます。少しずつ筋肉をつけるつもりで続けるのが、長続きするコツです。

■まとめ

瞬発力と竹刀の振りを強化する筋トレ方法をピックアップしてきました。
剣道に筋トレが必要か?という段階から様々な意見があるのは事実ですが、実際に稽古をしていると筋力の違いで、全く一本とれないことがあるのも事実です。
稽古や素振りの量を増やすのも大事ですが、自宅で簡単に長く続けられる地道な筋トレが必要なときもあります。
稽古をしっかりしている上で、筋トレに励んでください。瞬発力がある、確実にきれいに入る一本を取れるようになるでしょう。

天井の低い自宅では竹刀での素振りができないからこそ、室内でもできる筋肉トレーニングをして、日々の稽古に役立てましょう。