剣道に似た競技
剣道は武器(竹刀)や防具を用いて試合をするという意味では、柔道や空手とは少しニュアンスの異なる競技です。それ故に他の武道とは一線を画す独自の存在感があるのですが、実はよく似た競技が存在します。
ここでは、剣道に似た競技の一例として「なぎなた」と「フェンシング」について紹介してみたいと思います。
よく似た競技『なぎなた』
「なぎなた」という競技をご存知でしょうか?
2017年に原作漫画から映画化され、女子なぎなた部の活躍を描いた『あさひなぐ』という作品で近年注目を集めつつあるこの競技ですが、なぎなたも剣道と同じような武器と防具を身に着けて競い合う種目です。
■なぎなたの特徴
なぎなたは型にこだわりを持ったスポーツです。剣道も立ち振る舞いは昇段審査の時にかなり重要視されていますが、なぎなたの場合はさらに重要になってきます。
競技の内容に関しては全く異なりますが、防具の上から打突するという性質は近いものがあるため、経験者がなぎなたを始める場合、移行は比較的スムーズとなるでしょう。逆もまた同様です。
剣道となぎなたは交流試合が行われることもありますが、見た目はよく似た防具を身に着けているため、一見すると同じ競技と勘違いしてしまってもおかしくないほどです。
競技人口という面では、剣道と比較するとそこまで多くはありません。そのため、競争相手が少ないぶん成績を残しやすいとも言えます。
■なぎなたの共通点と違い
礼節を重んじ、生涯にわたって実践できるなど、剣道となぎなたには色々と共通点があります。しかし、上でも述べたように実際は別の競技です。
ひとつの例として、剣道は激しい体当たりがありますが、なぎなたはそれがありません。剣道の場合、練習するとどうしても男女混合でやった場合体力の差が出ます。
押し合いになったら練習中は女性が不利になりますが、なぎなたは練習中の男女の差はそれほどありません。
かつては男子禁制の武道であったこともあり、女性の競技者が目立つのもなぎなたの特徴です。
また、なぎなたは剣道と違いすねへの打撃が存在するため、すねを守るための防具(すねあて)があります。剣道との異種試合を行う場合、すねへの攻撃が最大のポイントになってきます。剣道側から見ればすねへの攻撃をどう防ぐかがポイントです。ルールによってはなぎなたの選手は剣道の選手に対してのすねへの攻撃をしない場合もあるようですが、多くの場合はすね対策に頭を悩ませています。
西洋の剣術『フェンシング』
「フェンシング」の名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
オリンピックの正式種目にもなっており、特に発祥の地であるヨーロッパでは競技人口が多く、世界的にも知名度がかなり高い競技です。
剣道とフェンシングは剣を用いる競技という意味では通じるものがありますが、どのような違いがあるのでしょうか。
前者は日本古来の武士道精神に端を発しており、単なるスポーツというよりも自己を律するような自己鍛錬に重点を置いています。
その一方でフェンシングは西洋の剣術を体系化したスポーツであり、中世時代の騎士道の名残りが残っています。
そして剣道とフェンシングはそれぞれ剣術の分野になりますが、服装や使用道具、ルールなどが異なります。
■フェンシングとの違いとは
剣道とフェンシングの違いとして、まずは使用する剣の規格があります。
剣道で使用する竹刀の規格は、成人男子は120cm以内、510g以上となっています。
一方でフェンシングの剣には、以下のような特徴があります。
エペ 110cm以内、770g以内
サーブル 105cm以内、500g以内
長さについて見ると、剣と比べて竹刀の方が10~15cm程度長いのが特徴です。
また重量については竹刀の方が重いです。
競技の動作としては、剣道では振り抜く技が多いのに対し、フェンシングは突きがメインです。
そのため戦い方は根本から異なるものとなっています。
また、ルールの中で最も異なる点は、判定基準となる体の部位でしょう。
剣道では面・胴・甲手となりますが、フェンシングは体全体となります。
剣道とフェンシングは、身につける防具も異なります。
剣道の防具は稽古着と袴の上に、面、篭手、胴、垂の防具を装着します。
一方のフェンシングの防具はグローブ(片手だけ)、ユニフォーム(上衣)、プロテクター、マスク、ユニフォーム(半ズボン)、メタルジャケットとなっています。
ちなみにエペでは、メタルジャケットは着用しません。
剣道の防具は重いイメージがありますが、フェンシングの防具はどれも柔らかく軽い素材でできています。
また防具の色については剣道は紺と白が主であるのに対し、フェンシングは白が伝統となっています。
■まとめ
剣道に似た競技の一例として「なぎなた」と「フェンシング」についてご紹介しました。
フェンシングは剣を用いるという点で剣道に似てはいるものの、勝敗の付け方や動きなどは大きく異なります。競技としてはほぼ別物といってもいいくらいです。
なぎなたは教室が少なかったり、学校によっては剣道部があってもなぎなた部は無いことも少なくないため、新しく始めてみたいと思ってもハードルは少し高いかも知れません。
剣道と通じる部分もあり、剣道との異種試合も存在することから、剣道を行っている方にとってもなぎなたへの理解を深めておくのは良いことだと思います。