剣道のプロ選手や有名人・レジェンドとは?

剣道のプロ選手や有名人・レジェンドとは? 剣道を知る

プロ選手という概念は存在するか?

剣道の歴史において、特に素晴らしい成績を残した人や高い段位を取得した人は、剣道家の間でも語り継がれるほど有名な存在となっています。
では、素朴な疑問となりますが、それは剣道にはプロ選手という概念がまずあるのでしょうか。

■プロ選手の制度はないが…

結論からいえば、野球やサッカーといったようなプロの制度は、剣道にはありません。ただ、実業団や職業でそれに近い。いわゆる専門的にしている選手は当然存在しています。

特練員

警察官の中で「術科特別訓練員」略して特練員に指定される剣士がいます。都道府県によって違いもありますが、特練員になると1日の半分を稽古で過ごすことも多く、まさしくプロと呼べる練習量をこなします。また大会も多く、その中には日本一に輝いた選手も少なくありません。特練員になると若い年代から全国トップレベルで活躍しています。

警察官

警察官は訓練の一環として、剣道や柔道などを行います。また機動隊ではこれらの武道は必須ですので、必然とその練習量も増えてきます。それぞれの警察署でその練習量は異なりますが、社会人になっても続けたい方には最適だと言えます。

実業団

公務員でなくても、実業団で剣道をする道もあります。決して楽な道ではなさそうですが、一生を剣道に捧げたい!という熱意を持った方は一考の余地ありです。例えば警備業社で有名なALSOKや、パナソニック、三井住友海上火災、富士ゼロックス、東レ、西日本シティ銀行、NTTなど実業団としても強いことで知られています。その中には全国レベルで上位に輝いた人も大勢います。オリンピック競技であれば多くの実業団チームがありますが、武道としての大会がメインのため企業が主催する形態は少なめです。しかし実業団チームのレベルはとても高く、このような環境で剣道を続けられるのであれば、より実力を高められること間違いありません。また企業によっては一般向けに道場を開放しているところもありますので、このような道場に通ってみるのも続けるための方法となるでしょう。

トッププレーヤーにおける特徴とは?

■トッププレーヤー・達人はどんな人なのか?

剣道の良いところは、いくつになっても続けることができる点です。柔道や空手で行われる筋トレなどとは違い、体捌きや素振りがメインとなります。本人の意志があれば何歳になっても続けることができる、それが剣道という武道なのです。

ただ高齢になると身体的なリスクが出てくる可能性がありますが、そこは鍛錬によって鍛えることができます。

鍛えることでさらに強くなり、屈強な若者を相手に勝つことも十分に可能です。そして最終的には、達人と呼ばれるようになります。
達人とまではいかなくても、トッププレーヤーは鍛錬によって鍛えられた人が多いです。トッププレーヤーとは強い精神力を持ち、厳しい鍛錬を経て上り詰める人のことです。

■トッププレーヤーの特徴

『竹刀さばきが他人より上手い』という点にあります。この竹刀さばきをさらに掘り下げていくと勝負に強い、そして試合に強いというところまで行きつきますね。

このような上手な竹刀さばきは、次の動きを予想してその準備もかねています。だからこそ次の一手を早く繰り出すことができ、相手に考える隙を与えない動きとなっていくのです。そこまでの竹刀さばきを行うためには練習だけでなく、多くの経験も必要不可欠です。たくさんの試合を繰り返し、相手の出方を学ぶことにより多くの戦術を体に染みこませることができます。体が憶えた戦術は考えるよりも先に動きに現れ、それが竹刀へと伝わっていきます。このレベルまで到達できれば熟練者とも言えるのかもしれませんね。

■猛者が多い都道府県

最高峰の全日本剣道選手権大会や全国警察剣道選手権大会の優勝数が多い場所と仮定した場合、全日本剣道選手権大会では東京都が歴代最多の16回優勝し、次点は13回優勝の神奈川県、7回の大阪府と続きます。全国警察剣道選手権大会では東京都が21回、神奈川県が15回、大阪府が12回となっています。

ただ、これだけを見て判断すると、東京、神奈川、大阪の三つが強いのかと思いますが、実は違います。これらの大会で優勝する選手の職業は大抵が警察官で、高校や大学で実績を積んだ選手が社会人となってこの三つの都道府県に集中しやすいという事情があります。

■出身者別で見てみると?

それではどこが強い都道府県かというと、九州は熊本や福岡が上げられます。というのも、上記の大会で優勝した選手の多くの出身が九州地方だからです。例えば全日本剣道選手権大会において6年間連続で熊本出身者が優勝し、全国警察剣道選手権大会で3連覇を果たしたのも熊本県出身の剣士です。また福岡では毎年玉竜旗全国高等学校剣道大会が開かれます。これは高校野球における甲子園と同じで、高校球児ならぬ高校剣士にとって聖地であり、多くの選手が集まります。

なぜ九州で盛んなのか
九州で剣道が盛んな理由の一つに、全国にある道場の数が約2200ある内の2割近くがここに集まっているからと言われています。そのため九州全体が盛んな地域で、特に飛びぬけているのが熊本と福岡の2つと言われています。

レジェンドをご紹介

有名人・レジェンドとは?

■歴史に燦然と輝くレジェンド・剣聖

剣術に優れており奥義を極めた人のことで、読んで字のごとく剣における聖人と言えます。剣聖という称号は正式なものではなく、あくまで世間一般的に剣の達人をそのように呼んでいます。

そしてこの称号を持つ初めての人物と言われているのが、新陰流の祖としても知られている「上泉伊勢守信綱」です。上泉信綱は兵法家として知られています。また、現代の竹刀のベースになった「袋竹刀」を考案した人物とも言われています。

ちなみに彼自身も剣聖と自称したことはなく、生前からそのように呼ばれていたわけではありません。現在ではそのように呼ばれていますが、剣で名を成した人物は後から呼ばれるのが特徴でもあります。

他には一刀流の祖である「伊藤一刀斎」や、二刀流で有名な「宮本武蔵」なども該当します。彼らはその剣名の高さから、上泉信綱と同じように剣聖と呼ばれるようになりました。宮本武蔵は若い頃に何度も真剣勝負をしていますが、晩年には勝負から離れ『五輪書』を残しています。

■現代のレジェンド

このように過去に剣聖と呼ばれる人は何人かいますが、そのような基準でいくと他にも該当する方もいるかもしれません。昭和初期には「昭和の剣聖」と呼ばれる剣士がいましたが、これからもそのように呼ばれる人が出てくる可能性があります。以下にご紹介するのは、現代の剣道界でも特に有名な選手のお二人です。

宮崎正裕氏

宮崎正裕氏は日本の剣道家であり、警察官でもあります。

現在は神奈川県警察本部教養課長代理を務めており、術科特別訓練剣道師範、段位は教士八段です。全日本剣道選手権大会で6回優勝という、剣道競技史上最高の戦績を残したこともあり、「平成の剣豪」、「剣道界の鉄人」、「努力の天才剣士」などと呼ばれています。まさに剣道界のレジェンドにふさわしい方です。

2009年に1%という合格率の、剣道八段審査に初挑戦で合格したことは有名です。また八段剣士の大会である寛仁親王杯剣道八段選抜大会、全日本選抜剣道八段優勝大会でも優勝しています。

内村良一氏

内村良一氏は、全日本剣道選手大会で3回の優勝を果たしています。九州学院高校時代から日本一を目指し、誰よりも熱心に稽古に取り組んできた努力の人として知られています。高校時代はインターハイの個人と団体、明治大学時代にも団体で日本一に輝き、警視庁に入ってから全日本選手権大会で3度の優勝を果たしました。3回以上の優勝は前出の宮崎正裕氏を含め4人しかいません。

世界選手権大会にも何度も出場し、第16回大会(2015年)では日本チームの大将を務めました。37歳で出場した平成29年の全日本選手権大会では、決勝で九州学院高校の後輩である西村英久選手に敗れましたが、4度目の準優勝という結果を残しています。2位4回という記録は歴代最多となっています。

■番外:剣道をしている有名人

レジェンドから少し離れますが、剣道を愛する有名人もご紹介します!

誰もが知ってるあの有名人も

例えば、アイドルだと知らぬ人はいない元SMAPの草彅剛さんや木村拓哉さんの二人はどちらも小学校卒業、中学の途中まで習っていました。そのためテレビの企画で二人が対決するという事があり、白熱した戦いぶりを披露しました。

役作りのため

またアクションや殺陣などで経験が役立つからと多くの俳優が剣道、剣術を習います。その中でも若い人に熱烈な支持を受けている東出昌大さんは生粋の剣士といわれています。というのも、父親が剣道の先生をしており、本人も三段の腕前。更に時間がある時は道場で子供たちを教えている、まさに剣士の鏡のような人物だからです。

意外な人が…

変わった所では日本一の富豪とよばれているソフトバンク創業者の孫正義氏も段位を習得しており、自社のCMにおいてネタにされています。またクレヨンしんちゃんの作者で故人の臼井儀人氏も高校時代に剣道部に所属していました。その時の経験を生かして、作中に剣道を得意とするキャラクターを登場させてしんのすけに教えるというエピソードがあります。

今でも現役

テレビ番組などで剣道を取り扱う際に多く呼ばれるのは、お笑い芸人の原口まさあきさんやはんにゃの金田哲さん、司会者や俳優などマルチに活躍する渡辺正行さんの三人です。
口まさあきさんは剣道のスポーツ推薦で高校に入学する程の腕前を持ち、そんな彼と金田哲さんはテレビ番組などでたびたび熱戦を繰り広げた実績があります。渡辺正行さんも学生時代に練習漬けの日々を送り、関東の大会に出場する程の腕前で、62歳になった今もシニアの大会に出場しては入賞したりと現役の剣士です。

■最後に

剣道はスポーツというよりも武道でもあるため、ただ単に良い成績を残すだけではなく、その道を突き詰めようとする求道者としての姿勢も重要です。50代、60代になっても20代~30代の若い剣士を寄せ付けない高段者が大勢存在します。

そういう剣士こそが真の意味でのレジェンドであり、試合での実績だけでレジェンドと呼ぶべきではないのかもしれません。

この記事は、過去の掲載記事を加筆しています。