2018年3月26日~28日
愛知県・春日井市総合体育館
主催=(一財)全日本剣道連盟・(公財)全国高等学校体育連盟
九州学院(熊本)が制する
終わってみれば常勝チームが「定位置」といえる王座についた。
昨年のインターハイでは5連覇がならなかった九州学院(熊本)。しかしこの全国選抜はまだ連覇が途切れておらず6連覇をかけて臨んだ。
■優勝・九州学院高校(熊本)の戦評
1回戦は山口鴻城(山口)との対戦となり、次鋒福田、副将小川の一本勝ちで2―0と勝利、安積(福島)との2回戦は先鋒、次鋒が交代し、その渡邊、岩間の勝利で2―0とするが副将戦で池内が敗れ2―1。
序盤戦は僅差の勝利で相手を圧倒するほどの勢いは感じられなかった。
そして3回戦の磐田東(静岡)との対戦が最初の大きなヤマとなる。
2月の東海高校選抜大会を男女ともに制した磐田東は上位進出も予想されたチーム。その先鋒千葉が深水からメンを奪い一本勝ちを収めると、九州学院は次鋒福田、中堅池内、副将小川と一本を返すことができず、大将重黒木にすべてをゆだねた。重黒木はまずコテを奪い取って同点とする。
そのまま時間が経過し代表戦もちらついたが、重黒木はひきメンを決め一気に逆転を果たす。拮抗した戦いの中で重黒木が存在感を見せた。
その後も僅差の戦いが続く。
準々決勝は清風(大阪)との対戦となったが、先鋒渡邉が二本勝ちを収めると、次鋒から大将まで引き分けて1勝を守った。
敬徳(佐賀)との対戦となった準決勝は、先鋒から副将まで引き分けが続き、大将戦となる。
準々決勝では福大大濠(福岡)相手に大将戦で二本勝ちして追いつき、さらに代表戦を制していた敬徳の1年生大将小川だったが、ここで重黒木は1分かからずにその小川から二本を奪ってみせた。さらに重黒木の存在感が増す。
決勝は昨夏のインターハイでも決勝に進んでいる島原(長崎)との対戦となった。
九州学院は準決勝から先鋒をまかされた福田が幸先よく勝つも、次鋒戦では島原の前田が渡邊にメンを浴びせすぐに追いついた。
すると中堅、副将と試合は動かず、またも大将での決着へと試合はもつれる。
黒川を迎え撃った重黒木は、大将戦は引き分けて両者による代表戦となった。8分を超える長い試合となったが、ここも重黒木がひきメンを決め、九州学院に栄冠をもたらした。
全6試合を戦って最高でも2勝という僅差の戦いが続いた九州学院。
序盤の戦いからは混戦が予想されたが、重黒木が九州学院の大将としての輝きを見せ、前人未到の選抜6連覇を達成した。
なお、直後の3月30日~31日に行なわれた秋田の魁星旗大会では、九州学院は育英(兵庫)に準決勝で敗れ、優勝は育英を決勝で破った島原。夏に向けて例年以上の熾烈な戦いが予想される。
■2位・島原高校(長崎)の戦評
島原はこの大会4年ぶり2回目の2位。
2回戦の明徳義塾(高知)との試合は同点で大将戦となったが、その1戦を除いて準決勝までの4試合はすべて中堅若杉の勝利でリードを奪い、優位な状況で大将黒川につないでいる。
若杉が引き分けた明徳義塾戦は同点の場面で黒川が一本勝ちできっちりと試合を決めた。
■3位・敬徳高校(佐賀)の戦評
3位は奈良大附属(奈良)と敬徳(佐賀)。ともに初の入賞である。
敬徳は盛岡第四(岩手)との1回戦、国士舘(東京)との2回戦ともに、4引き分けで大将戦に勝敗がゆだねられたが、小川が勝利。和歌山工業との3回戦では先鋒江口の勝利で1―0で小川につなぎ、小川が先制して追いつかれるも引き分けで試合を終えた。
優勝候補の一角福大大濠(福岡)との準々決勝は、次鋒戦で福大大濠の池田に二本負けを喫し、1(1)―2(3)とリードされて大将戦となったが、ここで小川が注文通り木島から二本勝ちを収めて代表戦に持ち込む。
池田との代表戦も小川が早々にコテを決めた。1年生の大黒柱・小川が入賞の原動力となった。
■3位・奈良大学附属高校(奈良)の戦評
奈良大附属は本大会、インターハイともに常連だが入賞は初めて。
準々決勝では育英に対し副将戦まで引き分け、大将戦で根本がツキを決めて勝利を収めている。
10日前の近畿選抜大会でも両者は準決勝で対戦し、先鋒から大将まで引き分け、代表戦で根本が松澤に敗れ敗退している。
見事にそのリベンジを果たした。樟南(鹿児島)との1回戦から代表戦となり、根本が勝利。同じ関西の龍谷大平安(京都)との2回戦は次鋒舘井、中堅林の二本勝ちが効いて本数差で勝利、3回戦では昨年のインターハイ覇者高千穂(宮崎)に対し林と根本の勝利で2―0とした。
力が拮抗した相手との戦いが続く中を粘り強く勝ち上がった。
■大会を終えて
今大会は関東勢が振るわなかった。
1月の茨城新聞社旗大会を制するなど前評判の高かった佐野日大(栃木)は、1回戦で大社(島根)と対戦、先鋒から大将まで引き分けて代表戦となったが、大黒柱の大平が10分を超える試合で加藤のコテに屈し、1回戦で姿を消した。
つねに全国上位をうかがう水戸葵陵は1回戦で高松商業(香川)を下したが、福大大濠との注目の2回戦、次鋒戦で鈴木が池田に二本負けを喫するとこれが重くのしかかり、そのまま迎えた大将戦で、終盤に岩部が一本を返すも力尽きた。
国士舘(東京)、東海大浦安(千葉)、立教新座(埼玉)が2回戦敗退、桐蔭学園(神奈川)などは1回戦で敗れ、ベスト16に関東勢の姿はなかった。
ベスト8には九州勢が4校、近畿勢が3校、および中国地区の大社。大社は佐野日大を破ったあとも3回戦で麗澤瑞浪(岐阜)に先鋒から3連勝するなど勢いがあり、島原とも接戦を演じた。
■米田監督一問一答
優勝の感想は?
いや、まだ実感がなくて。終わってホッとしているところです。
6連覇、すごい記録です。
いや、そこはあんまり考えていなかったんで。
昨年のメンバーからはガラッと替わりましたが。
そうですね。1人だけですね、残っているのは。
どんなチームですか?
まだまだ今からのチームですね。今からもっとがんばって指導していきたいと思います。
大将に勝負がかかる場面が多かった。
そうですね。彼自身去年はいろいろな経験をしているので、それを早い段階から取り組めたのが良かったのかなと思います。
前衛に交替があった。そこはまだまとまってないところ?
本来もうちょっとがんばってもらいたい子たちが、なかなかひとつ乗り越えられない部分があって、苦肉の策と言いますか。それ以外の子たちが非常に頑張ってくれたのでそこは良かったですね。
決勝は島原。ライバルですね。
ライバルというかいつもご一緒させていただいていますし、練習試合もいろいろな部分で一緒にやらせていただいています。もう勝負もどっちに転ぶか分からないと思っていました。
代表戦は両チーム大将でした。
それはもうお互いに決まっていたことでしょうからね。もうその時の出来次第、どちらに転ぶか分からないと考えていました。
今日まで新チームをどう指導してきた?
とにかく重黒木を育てなきゃという思いが最初にありましたね。そこがチームの取っ掛かりという部分でやってきました。結果は順調ですね。こういう素晴らしい結果に恵まれたので。夏に向けてまたがんばりたいですね。
■決勝戦
■準決勝
■準々決勝
■3回戦
■2回戦
■1回戦
■2位・島原高校(長崎)
福田監督のコメント
うちが勝つなら黒川で、ということでずっと稽古してきました。
最終的には狙い所への集中力の差が出てしまったのだろうと思います。
序盤で反則をもらって、そこでもしかしたらつばぜり合いの部分で本人にも迷いが出たかもしれませんね。
そこはやはり(重黒木は)逃してくれませんでした。あそこを打つか打たれるかということでしょうね。集中力があればあそこを打っていたでしょう。
渡邉(孝経)校長の教えをチーム島原として徹底する、それができるかどうかが上位進出のカギでした。
これといったスター選手もいなかったので、チームとしてどれだけ守れるかをしっかりして黒川につなぐ。
それを一戦目からしっかりできたと思います。本数差勝ちなどギリギリの試合も多かったですが、想定通りの試合ができました。
現時点の力でここまで来られたのは上出来だと思いますし、ここまで来られたからには何とか優勝したかったですが……。
昨年のインターハイも決勝で同じように代表戦で負けており、なかなかこの壁は越えられないですね。
渡邉校長は常日頃、九州学院が連覇を重ねているのは素晴らしいこと、そして勝ったあとの努力が素晴らしいと言われています。うちはそこが足りないのだろうと思います。
去年のメンバーからは黒川と前田が残っているのですが、小柄な選手が多く、例年は体がしっかりできているのですが、体が小さいために当たりという部分で今までのチームと比べれば劣っているかなと思います。
夏までには稽古だけでなく体づくりのトレーニングを徹底しないと壁は乗り越えられないかなと。2番の悔しさを晴らすために、夏にはまた九州学院にチャレンジできるようになりたいですね。
■3位・奈良大学附属高校(奈良)
森本監督のコメント
今年は全国いろいろなところに練習試合に行かせていただいて、日本一になれるという思いがありました。
3位という結果には私自身は満足していますが、本気で日本一を狙ってきたので、そういう意味では生徒を見てもらえれば分かると思いますが、悔しいですね。
いつもいつもベスト8ばかりで、(全国大会で勝ち上がることの難しさを)毎回毎回感じさせられてきましたから。
これだけ経験させていただいている分強みではあるんですが、やはりそんなに簡単なものではないですね。今回も1回戦から接戦でしたし。
県大会にも出たことがないような選手が今はレギュラーを務めていますし、本当に少しずつ作り上げてきました。
一番は人間力だと伝えてきたのですが、それができている年とそうでない年があったのかなと思います。(このチームは)それぞれの人間力というのがしっかりある。
目標が明確にもありますし、チームとしてひとつにまとまっていると思います。実はここ数年では一番弱いだろうなと思っていたんです。
そんな中でもこういう結果を出せたというのは気持ちや思いが強いのかなと。
最後に中堅で出ていた山本が、実は去年のチームの時には選手で、根本は補欠だったんです。多くの方は山本を大将にすると考えていたかと思います。
上級生を鍛えてきて根本と山本と競らせようとしたんですけど、根本がそれをいち早く理解してああいう剣道ができるようになってきました。彼の成長をうれしく思っています。
私自身は日本一を狙う気持ちがあるということは生徒に伝えているんです。
「その上でお前たちはどうする? 僕は環境を作ることはできるけれど、君たちが目指さないのであればやらないよ」と。
何を目標にするかは彼らが決めることです。でも、きっと夏こそはやってやろうと思っているはずですよ。
■3位・敬徳高校(佐賀))
吉村監督のコメント
負けたばかりですから悔しさはありますが、出来過ぎでしたよね。
(出場は)3回目です。県内にも龍谷、三養基と(強豪校が)ありますから。今回の県予選も2校出場枠がありましたが、準決勝の三養基も代表戦、決勝の龍谷も代表戦でした。
メンバー5人の中に1年生が3人入っているんです。
大将の1年小川が勝負強さを持っているので、前の方もそれに釣られて、実力自体も上がってきていますが、ねちっこい剣道と言いいますか、勝負どころとそうじゃないところの見極めというのができるようになってきたなと思います。
(小川は)なんというか、そんなに見た目で強いという感じもないのですが、結果蓋を開ければ勝っている選手です。
福大大濠さんにはいつも練習試合で胸を貸していただいてますし、九州学院さんも同じ九州ですので試合をお願いする機会も多いです。
うちは失うものは何もない、思い切りやってこいということで選手を送り出しました。
九州学院さんも慎重に試合を展開するところもありますし、うちもイチかバチかで大将勝負に賭けたい部分はあったので、お互いに望んだ展開ではあったのかなと思います。
大将戦では同じ神奈川から来た者同士の対戦となって、重黒木君は2年生ですけども、中学生時代もずっと試合はしていたと思うのでそこで少し考えすぎた部分が出たのかなと思います。やっぱり向こうが上手でしたね。