迷いなく跳び込むメンが冴えた | 第16回 全日本選抜剣道八段優勝大会

優勝・恩田浩司
第16回全日本選抜剣道八段優勝大会
優勝・恩田浩司 57歳・東京・警視庁副主席師範)
試合リポート

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第16回 全日本選抜剣道八段優勝大会
平成30年4月15日(日)
名古屋市中村スポーツセンター

捨て切ったメンで全日本でも八段の頂点に

決勝 恩田浩司(東京)× 石田利也(東京)

決勝 恩田浩司(東京)コメ─ド 石田利也(東京)
ともに豪快なメン技を武器に決勝に駒を進めてきた両者。序盤はともにメンを警戒しているのか、相手に充分に打たせない攻防となる。が、まだ前半のうちに恩田のメンを石田がドウにさばいて一本を先取し、試合が動き出した。すると恩田は1分ほどで石田の手元が上がるところにコテに跳び込み追いつく。
その後は石田のコテ、恩田のメン、石田のメンと恩田の出ゴテの打ち合いなど惜しい技が見られたが一本にはならず、延長に入る。そして延長の初太刀、恩田は機を探り、相手が手元を上げかけて下げる瞬間をとらえ、真っ向からメンに跳び込んだ。優勝を決めた一打も、この日恩田が終始見せていた捨て切ったメンだった。

■戦評

初出場が13名と大幅に選手が入れ替わった本大会。

優勝者は初出場選手の中から生まれた。東京で行なわれる寬仁親王杯剣道八段選抜大会ではすでに3度の優勝を果たしている恩田が、この全日本でも王座に着いた。

1回戦では佐伯浩美(宮崎)にメン二本を決め、2回戦では平野誠司(徳島)にメンの一本勝ちを収める。

序盤から迷いなく跳び込む捨て切ったメンが冴えていた。

昨年まで本大会2連覇を果たしている宮崎正裕(神奈川)との準々決勝は注目された。

一本目の相メンは際どい勝負だったが恩田に軍配。すると宮崎も勝負師の魂がこもったようなメンを返す。勝負となり再び相メン。これに恩田が打ち勝った。

「あそこで捨てるしかないので。やられたらもう相手の方が上だから致し方ないという思いで、あそこで勝負しようと思いました」(恩田選手)

まさに捨て切った打ちで見応えのある勝負を制した恩田は、準決勝に進むと、独特の味わいのある剣道で勝ち進んできたやはり初出場の宮戸伸之(和歌山)にもメン二本を決め、決勝に進んだ。

一方のブロックから勝ち上がったのは本大会で5年前に優勝し、毎年のように上位に進んでいる石田利也(東京)。

こちらも準決勝まではすべてメン技で勝ち進んできた。

1回戦は浦和人(兵庫)との拮抗した勝負を制し、2回戦では本大会優勝経験があり多彩な技を使う稲富政博(佐賀)を退け、準々決勝では好調ぶりを見せつけていた染谷恒治(千葉)にメン二本を見舞う。

準決勝でも大阪府警時代の後輩である江藤善久(大阪)にメン二本を決めた。

メンの勝負となると思われた決勝、試合は3分過ぎに動く。

石田が先制したのは恩田のメンに対する返しドウだった。

すると約1分後、石田の手元が上がるところに恩田がコテを返す。

そのまま試合は延長に入ったが、最後はやはりメンだった。延長に入っての初太刀、機をうかがっていた恩田が迷いなくメンに跳び込んだ。

警視庁の現役時代は、どちらかというと縁の下の力持ち的な存在だった恩田。

修徳高校卒の叩き上げでもある。

その恩田が現役時代からのスター選手である宮崎、石田の両者を破って優勝。

剣道の深さ、年齢とともに培われるものの価値を感じさせると同時に「捨て切る」こと素晴らしいメンが生まれること、その尊さを改めて認識させる試合となった。

■優勝・恩田浩司(57歳・東京・警視庁副主席師範)

東京で行なわれる寬仁親王杯剣道八段選抜大会では3度の優勝を果たしており、初出場ながら上位進出も予想されていた恩田。

捨て切ったメン技を武器に、3連覇を狙った宮崎正裕(神奈川)、毎年上位に進む石田利也(東京)らの名選手を破り、この全日本でも王座に着いた。

「初めてなので、床も体育館仕様で普段こういうところでやり慣れていないので、1回戦のときはどうかなと思ったのですが、どこでやろうと自分を見失わず、自分の剣道に徹しようと思って戦いました。この大会にいつか絶対に出たいという目標があったものですから、案内をいただいたときは本当に喜んで、自分の持てる力を出そうと、それだけでした」

「(決勝は)石田先生には東京の八段戦でも何度かお願いしていて、うまく引き出されて打たれ「しまった」と思ったのですが、時間が10分あるので気持ちを切り替えて一本に徹しようと考え、その中で自然にというか無我夢中で出たコテでした。(最後のメンは)対戦したすべての先生に対してと同様、あそこも思い切っていきました」

「職場の稽古環境もいいですし、とくに若い人と稽古する機会が多いものですから、気後れしないように心がけています。若い人たちは打たれはしても気持ちでは負けないという思いでいつも稽古をしています」

石田利也

2位・石田利也(56歳・東京・警察庁警察主任教授)
本大会出場6回目。過去優勝1回、3位1回。2位は今回で2回目となった

宮戸伸之

3位・宮戸伸之(56歳・和歌山・和歌山県警教養課師範)
本大会は初出場で3位入賞を果たした

江藤善久

3位・江藤善久(51歳・大阪・大阪府警副主席師範)
本大会初出場にして最年少ながら3位入賞

■準決勝

準決勝 恩田浩司(東京)× 宮戸伸之(和歌山)

準決勝 恩田浩司(東京)メメ─ 宮戸伸之(和歌山)
味のある剣道で準決勝まで勝ち進んできた宮戸に対し、序盤から恩田が攻める。宮戸も大技のコテメンなどを見せるが決まらない。そして宮戸が攻め直そうとしたところか、一瞬居ついた状態になった隙を恩田が見事にとらえてメンを先取する。二本目となり、恩田は再び同じようにメンに跳び込んで、二本勝ちを収めた。

準決勝 石田利也(東京)× 江藤善久(大阪)

準決勝 石田利也(東京)メメ─ 江藤善久(大阪)
大阪府警の先輩後輩の対戦となった。序盤から先輩の石田が気で圧しているが、江藤はここまで掴みどころのないどこか飄々とした剣道で勝ち進んできた印象があり、マイペースを貫いているようにも見える。しかし3分ぐらいか、石田が攻め入ってメンに跳び込み先制した。自分が届くギリギリのところを見極めて跳んだ見事なメンが決まる。その後、江藤に惜しい技も見られたが、江藤が出ようとするところに再び石田がメンに跳び込んだ。石田もメン二本で決勝進出を決めた。

■準々決勝

準々決勝 恩田浩司(東京)× 宮崎正裕(神奈川)

準々決勝 恩田浩司(東京)メメ─メ 宮崎正裕(神奈川)
昨年まで2年連続で優勝を果たしている宮崎が初出場の恩田を迎え討つ。宮崎は1、2回戦を勝ち抜いて調子が上がってきた印象で、序盤から小手面などを見せ攻勢に出る。しかし、後半になり残り3分ほどで相面になると、微妙なところだったが旗は恩田に上がった。残り時間が少ない中で宮崎が真骨頂を発揮、1分ほどで選手時代を彷彿とされる伸びのあるメンを決め追いつく。

準々決勝 恩田浩司(東京)× 宮崎正裕(神奈川)

勝負の行方が分からなくなったのもつかの間、再び相メンとなると、またも恩田が打ち勝った。全日本選手権6回優勝、今大会2回優勝を果たしている宮崎が持てる力を出し切ったが、恩田がその上をいった、見ごたえのある戦いだった。

準々決勝 宮戸伸之(和歌山)× 笠谷浩一(大分)

準々決勝 宮戸伸之(和歌山)メ─ 笠谷浩一(大分)
味のある剣道を見せていた両者。序盤から慎重に機会を探り合い、充分に打ち切る場面が少ない。ともにコテ技が時折出る程度で、それも相手を脅かすには至らないまま時間が過ぎる。残り時間が少なくなったところでようやく宮戸がメンを見せるも一本にはならず、試合は延長に入った。すると間もなく、宮戸が満を持してメンを打ち切る。宮戸はじっとこのメンが打てる機会を待っていた印象だった。

準々決勝 石田利也(東京)× 染谷恒治(千葉)

準々決勝 石田利也(東京)メ─ 染谷恒治(千葉)
1回戦、2回戦と好調ぶりを感じさせた染谷。優勝争いにもからんできそうな勢いだったが、石田が立ちはだかった。序盤、石田が染谷の技を余裕を持って見切っている印象だったが、一転メンに出るとこれが一本となる。まだ試合開始から3分ぐらいだろう。時間はまだ充分にあり、染谷はその後惜しいコテなどもあったが、石田を崩すには至らなかった。

準々決勝 江藤善久(大阪)× 湯澤寛(秋田)

準々決勝 江藤善久(大阪)ド─ 湯澤寛(秋田)
するすると勝ち上がってきた印象の江藤に対し、力の限りを尽くして勝負を挑んできた印象の湯澤。江藤が剣先の攻めで前に攻め込むが打突にまではつながらず、時折繰り出す湯澤のメンが目立つ展開で試合が進んだ。そして延長に入り、江藤が一転して逆ドウを繰り出し試合を決めた。

全試合詳報|第16回全日本選抜剣道八段優勝大会

2018.04.26
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