フィジカル以外に必要なものとは?
どんな競技であれ、強くなるために最もわかりやすい答えは「体を鍛えること」です。
剣道において筋力がどこまで必要とされるかは意見の分かれるところだとは思いますが、ともかく体を動かすにあたって体を鍛えるに越したことはありません。
ですが、他の競技と同様、ただ体を鍛えるだけでは強くなれないのもまた事実です。
今回は剣道で必要とされる”感覚”的な力について迫ってみました。
■考える力
剣道の試合で勝利するためには毎日の練習が大切ですが、ただ練習すればいいわけでもありません。基本となる練習を反復することはもちろんのこと、技術を向上させるための練習も必要となります。
このように練習で基本的な技と試合のためのテクニックを同時に身につけることが、勝てるポイントとも言えます。テクニックと自分の実力を上手く発揮することで、勝てるチャンスが広がります。
そのためにも「基本的練習」と「試合を意識した練習」の両方をしっかりと行いましょう。
剣道の試合に勝つには基礎練習とテクニックが必要ですが、そのためにはこれまで培ってきた知識や技能を上手く発揮し、相手の戦法を見破ることも大切です。
「試合中は頭も使って戦う」これが勝利への糸口に繋がります。
相手の戦法を読むにはやはり経験が必要ですので、大会などの試合に多く出場する必要があります。
まだ試合に出る機会がない方は、練習試合でも構いません。とにかく場をこなすことが大切ですので、多くの練習試合に参加して経験を積むと良いでしょう。
相手と試合をすることで、自分にしかできないテクニックが身につくこともありますし、相手の戦法を見破ることができるようになってきます。
剣道ではお互いの小さな動きを見て、その後の動きを察知します。より経験を積むことにより自然と体が反応するようになりますが、常に素早く動ける準備を整えておかなければなりません。
自分の戦い方を確立させておくことにより、どのようにその戦い方へ相手を引き込んでいくのか。普段の稽古から自分の有利な状況へ相手を誘導できるように考える癖をつけておきましょう。
■目の配り方
剣道において目線の配り方は戦局を左右する重要な要素となります。
一瞬の隙で相手に打ち込まれてしまう可能性がある競技なだけに対戦相手の動きをじゅうぶん適正な方法で確認しながら戦うべきなのです。
しかしながら初心者の方はどうしても相手の手先に注目しがちになってしまいます。そうすると相手の手先の動きに惑わされて、結果負けてしまう可能性が広がってしまうのです。
また足元だけに集中して目線を置いていると相手の次の動きがよくわかります。しかし攻めてくるか引こうとしているのか、フェイントなのかはたしかに分かりますが上半身が見えていないため、どこにどのような打突が来るのかは予測がつきません。
逆に上半身にだけ注目してしまうとどこに攻撃してこようとしているかは分かりますが、どのタイミングに飛び込んでこようとしているのかは分かりません。
このように一か所に注視すると一長一短あり必ずリスクが生じてしまうのです。
では目線をどこに置けば良いのかと言うと、一箇所に目線を置いてはいけません。簡単にいえば相手全体を見ることが最も重要なのです。
手先や足元だけに集中するのではなくて、一箇所に集中して全体をみるのは困難なので全体をぼやっと見るのが良い方法と言えます。
その際、中心に置くのは相手の胸のあたりがベストです。そうすることで試合中、刻一刻と変化する戦況に対して、一箇所を集中して見ているよりも瞬時に対処することができるのです。
■理合
この理合というものは非常に難しく経験していくなかで身につくものです。言葉での説明は単純なのですが身つくまでが大変なのです。
簡単にいうのであれば「理:ことわり」のことです。「理」の漢字は「理由」や「物理」などで、「こうだからこうなる」という道理の意味だったり、「こうするとこうなる」という順序だったりします。
そのため、剣道においての理合とは打突の順序や攻め際や引き際などの精神だったり、鍔迫り合いでの体さばき等といったものになっていきます。
例えていうのであれば、試合でがむしゃらに打ち込むということは理合がないということになります。見ている側でも綺麗な剣道ではないことがわかります。
理合のある打ち込みというのは、正しい姿勢で相手との間合いを測りしっかり打ち込んで残身をキレイに流す。必ず決めるという精神の心構えや姿勢もふまえてようやく打ち込みの理合ができます。
よく生きた剣と死んだ剣などといわれますがそれもまた理合なのです。死んだ剣には心構えも姿勢もありません。俗にいう打たされた剣といえば解りやすいと思います。
とはいっても理合はなかなか難しいものですから理合を覚えるための修練があります。
それが理法というものです。ややこしい言葉ですが理合が全体的な言葉を表すのに対して理法は部分的な言葉と思ってください。
打ち込みにおいてもまずは正しい刀の持ち方が必要です。これを「刀の理法」といいます。次に刀をもつには手が必要で身体が軸となります。これを「身法」といいます。
このように一つ一つ理法を修練してようやく理合となっていくのです。
■まとめ
強くなるために必要な”目に見えない力”について、いくつか触れてみました。頭で考えてみたり、目を配ることは日頃の訓練で何とかなりますが、理合についてはそう簡単には身につきません。こればっかりは経験から体得するしかありません。
おそらくこの理合が身につく頃にはかなり上位の有段者になっていることと思います。剣道をやっていくにあたってぜひ初心のころから意識してみてはいかがでしょうか。