技の基本と一本を取るために学習しておこう
剣道とは面、胴、小手、突きのいずれかに対して、防具の上から竹刀で打ち込み(または突いて)一本を取るのを競う競技(武道)として知られています。
初心者の方は剣道と聞くとただ竹刀を打ち合う競技というイメージがあるかと思いますが、実は打ち方や打つ場所などはあらかじめルールで定められています。
それを踏まえた上で剣道は対戦者との心理的な駆け引きがとても重要な競技なのです。
そのことを今回は基本を踏まえて考えていきたいと思います。
■技について
基本的な技
剣道にはさまざまな技がありますが、特に代表的なのがご存知の「面」「小手」「胴」「突き」です。
この4つの技は基本であり、とても大切ですが、単純に打つだけではありません。目の前には相手がおり、その相手の動きや状態などに合わせて、いくつかの技を仕掛けていくことが重要です。
この技ですが、基本的には「仕掛け技」と「応じ技」に分けることができます。
仕掛け技
仕掛け技というのはその名前のように、こちら側から先に打って仕掛ける技のことです。
相手の構えが崩れたり隙ができたりした際に、その相手の隙を狙って打っていきます。
ちなみに仕掛け技には「一本技」「連続技」「払い技」「出ばな技」「引き技」の5つの方法があります。
このうち一本技は竹刀で間合いをつめていき相手にプレッシャーをかけ、相手がプレッシャーに負けて動いたときに、そのタイミングで面や甲手、胴などを打っていく方法です。
応じ技
応じ技は、相手が仕掛けてきた技をかわしたり、受けたりする技です。
この応じ技には「すりあげ技」「返し技」「抜き技」「打ち落とし技」の4つの方法があります。
ちなみにすりあげ技は相手が仕掛けてきた竹刀を、自分の竹刀ですりあげて攻撃していく技です。
禁じ技
技の中には「禁じ手」として扱われているものもありますので、注意しておきましょう。
共通して禁じ手として扱われているものだけでなく、自主規制的な形で年齢によって禁じ手と定めているものもあります。
大会に臨む際にはルールの確認を行い、意図せず禁じ手を繰り出してしまうことのないよう、注意しておくことも大切です。
■有効打突と打突部位
有効打突
有効打突とは、相手に対して一本を取れる打ち込みのことです。
つまり、ただ竹刀で相手を叩いただけでは一本にならないということになります。試合・審判規則第12条には『充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるもの』と規定されています。
簡単に説明すると、一本となる有効打突は刃筋が正しく正確に部位への打突を行うことを前提とし、打突をした際に
「適正な姿勢」
「充実した気勢」
「大きな声が出ているか」
「打突をした後に残心を示すことができたか」
などの条件で、有効打突(一本)になっているか判断します。
打突部位
中段構えの際の打突部位は面(正面・右面・左面)・小手(右小手)・胴(右胴・左胴)・突きになります。
※小学生と中学生は、危険なので突きは禁止です
※上段構えの時の打突部位は左小手も追加されます
これらの部位に対し、上記の条件で打突できれば一本が取れるということになります。
■審判をしているときは?
逆に審判をしているときの注意点も見ておきましょう。
姿勢
打突時や全体の体勢が安定していることが重要です。あくまでも正しい姿勢ですので、横を向いたり腰を曲げたりなどの姿勢はNGになります。
他にも色々とありますが、大切なことはいかに構えたままの姿勢を維持できるかにあります。
審判はこの姿勢を意識することが必要であり、また競技者を含めその場に立つものへの注意喚起も行っていく必要があります。
竹刀と打突
竹刀の打突部は、真剣で言うなら最も切れる部分になります。この部分で相手を切るのが一本の条件です。
審判員は打突部で相手を突いているかをしっかり確認する必要がありますので、常に見やすい立ち位置を心がけるようにしましょう。
小手
小手筒のみ有効となります。
小手の打突部位としては、基本的には右小手の小手筒部分だけです。
拳の部分を突いても一本にはなりませんので注意してください。
胴
胴には右胴と左胴がありますが、それぞれが有効です。
角度によっては見づらい場合があるため、こちらについても立ち位置に気をつけることが必要です。
審判を行う際にはルールはもちろんのこと、正しくジャッジできるように立ち位置や見る角度に気を配ることが求められます。
また模範としてその場に立つことも求められるため、その場を仕切ることのできる堂々とした態度も必要です。
■一本を取るための駆け引きが重要
相手の居る競技である以上、自分が思った通りたやすく一本は取れません。
試合においては自分が一本を取る為の戦術を組み立てる一方で、逆に自分が一本を取られないようにするための守りもまた考えなければならないからです。
それはもちろん相手も同じです。技術が上達してくると、そうした一本を取るための読み合いのレベルもどんどん高くなってくるわけです。
たとえば、相手との距離をわざと取ることで打ち込む気配を全く出していない選手が、相手の一瞬の隙を突いて一気に間合いを詰めて打ち込んだり、鍔迫り合いの状態から小手を打つふりをして相手の隙を作ることでガラ空きの面に打ち込むといったような技が挙げられます。
■まとめ
剣道という競技が、実は戦術的なやり取りの上に成り立つものであることがおわかり頂けたでしょうか。
技術の高い選手同士のやり取りになればなるほど、一見するとその意味が分かりづらいかもしれませんが、一挙手一投足すべてにおいて、勝つことに向けた意味が込められているのです。
実際にそれらの技を受けてみると、予測できない相手の動きの凄さが分かります。
極論として、相手に隙をつくらせることがいかに上手いかが試合の勝敗を左右するといっても過言ではありません。
また優れた選手ほど、観客でさえ試合を見ていて予測が全くつかない動きで一本を取ることが往々にしてあります。
そういった高段者の試合を見て、そこから学び取るのも上達のために必要な要素の一つと言えます。