毎日の稽古を楽しく続けるには
剣術を起源とする剣道は竹刀が作られたことで急速に発展を遂げ、その発展とともに稽古法が誕生しました。
常に緊張にさらされる試合の場とは違って稽古は反復が基本ですが、繰り返し同じことを続けていくには、その理由付けとなる”モチベーション”が重要です
今回は、その色々な稽古法といかにして稽古のモチベーションを保っていくかを考えていきたいと思います。
■稽古についての基本
稽古では、以下のようなメニューが基本です。
準備体操、素振り、足さばき練習、切り返し、各種の基本打ち、応じ技、打ち込み、かかり稽古、追い込み、地稽古などです。
他にも道場の方針や、年齢層などに合わせてそれぞれ特殊な稽古メニューを行っていることもあります。
例えばクラブやサークルによっては、メニューが多少前後したりすることもあるでしょう。大人の剣友会などでは地稽古が中心になっていることもあります。
基本稽古
基本の動作や技を習得するための稽古です。次に約束稽古。
打つ側と打たせる側が役割を決めて打突の練習をするのです。言うなればロール・プレーイングです。
「面、打ちます」と片方が宣言してもう片方が「どうぞ」と打たせるわけです。
打ち込み稽古
数学にたとえるならここまでは計算問題。応用の文章問題が打ち込み稽古です。
上級者が隙を作って打たせる方法で、面や小手など隙を作る場所に応じて打つ側が打突を練習するというものです。
掛かり稽古
打ち込み稽古の発展形が掛かり稽古です。
面、小手、胴、小手胴、小手面……と間断なく打ち込む、打ち掛かることで自分の体力や技量を測ります。
掛かり稽古をこなせるようになれば足さばきなど、動きが格段によくなります。
互角稽古
同程度の力量の者同士で打ち合う、テニスで言うところの乱打でしょうか。
試合の形式は取りませんが、自由に打ち合えるという点では試合に近いかもしれませんね。
昔、屋外で剣術の稽古をしていたことから大地の上での稽古、地稽古になりました。剣道の基礎、下地を作る稽古だからという説もあります。
あるいは持てる力量、素地を出すという意味だとも。基礎の集約が互角稽古なので互角稽古のことを地稽古と呼ぶ人も多いですね。
■男女の違いはある?
剣道は基本的に老若男女問わず一緒に稽古ができますが、男性と女性には、体格はもちろん脳に違いがあります。
そのため技術の習得傾向の違いがあり、稽古も工夫するのもひとつです。
男性の場合
・傾向
ひとつのことに集中して目標や目的を達成することを優先する傾向があります。
・気をつけたいところ
練習や指導の内容を忘れても目標のみを達成する考えになってしまって指導の内容から大きく外れてしまったり、指導したことを守らず自分が好きなようにアレンジを加えて違うことをする場合があります。
その影響もあり、技術を取得したとしても独自の癖がついてしまうことも気をつけねばなりません。
・良い点
良くも悪くも目標を達成しようとするため、大きな目的と筋道を与えることで大成する場合があります。
足りない部分についてのみアドバイスを送る練習方法がベストだと言われています。
女性の場合
・傾向
人間関係を円滑にするため周りと常にコミュニケーションを取り、他者の感情や意図などを即座に感じ取って同一化し、相手と協調行動を取って共感を得ようとする、または共感する傾向があります。
・気をつけたいところ
指導内容を理解し、指導したことを正しく実行してくれるため、技術を忠実に習得してくれます。習得した技術に対して、癖が少ないのは男性よりも女性が多いです。
しかし、男性のようにアレンジすることはあまり得意ではないため、教えたこと以上になると正しく実行することができない場合があります。
・良い点
できないことでもしっかり教えればできるようになるため、女性を指導するときは数多くの想定される場面などを作り出して、細かいことを確認しながらの稽古が良いと言われています。
■稽古のモチベーションを保つ3の方法
モチベーションを保つことは、より高いパフォーマンスを実現できる方法のひとつです。
目標に定めることの多い大会や昇段審査などでは自信になり、どんなときでも平常心で臨める強い気持ちを作ってくれるはずです。そのための方法をご紹介します。
目標を定める
剣道の腕前を上げるために必要なことは、毎日の稽古です。それをいかにして維持していくかを考えなければなりません。
モチベーションというのは広義で「意欲」の意味で使用されることが多いのですが、元々はその意欲を湧かせるための「動機」になります。
「稽古を毎日頑張る」という意欲を高めるような動機、要するに「大会で優勝したい」「早く強くなりたい」など、どうして稽古を頑張るのかという目的意識がモチベーションの核となる部分ですね。
稽古中の雰囲気づくり
稽古中の雰囲気が良くなれば自然とモチベーションが高まり、その状態を維持できるようになります。逆に雰囲気が悪くなると稽古する意欲を失い、徐々にモチベーションも下がっていくでしょう。
1人での稽古や仲間と行う稽古など人によって稽古内容は異なりますが、基本的なことはどれも同じです。
皆が楽しんでできるように、事前にメニューの計画をしておくといいでしょう。
飽きない稽古メニュー
上達するためには反復稽古が欠かせません。ただ同じことの繰り返しは飽きてしまうものです。
モチベーション維持をするためにも、日頃から飽きることのない楽しめるような稽古メニューを用意しておきましょう。
バランスある稽古を心掛ける
色々な稽古がありますが、もっとも大切といえるのが、準備体操から素振りまでです。
準備体操は体をほぐすことだけでなく、これから稽古を始めるための気持ち作りもかねて行うと、より効果的なものとなります。
また素振りのメニューとしては、上下素振り、正面素振り、斜め素振り、早素振り、上下斜め素振、片手素振り、片手早素振りなどがあり、これらをバランス良く行なうことが大切です。
素振りは集中し、ひとつひとつの動作に気持ちがこめられるようにしましょう。
重点に置く場合は、稽古メニューを改めて計画してみる
強化や苦手克服を目的として、ある項目を重点的に行ったり、曜日毎に基本を重視したり徹底的に応じ技を重視するなど、稽古パターンを独自に決めるのは効果的です。
上達するためには、反復が基本となるため、短い時間でも行うことが大切になります。
同じ稽古を毎日繰り返すことが理想ですが、毎日同じメニューでは飽きてしまうこともあるでしょう。
マンネリ化すると集中力も欠けてしまいますので、その場に合わせてメニューを工夫し、新鮮な気持ちで稽古に臨めるようにしてみるのもいいでしょう。
稽古に変化を取り入れる
何度も続けているとどうしても飽きてしまう場合は、変化を取り入れてみるのも良いです。
例として、足さばきの稽古に変化を取り入れてみましょう。竹刀を普通に構えて前後左右や斜めに移動するメニューをイメージする人も多いはずです。
そこにサッカーの稽古でも見られる「ラダートレーニング」を組み合わせてみます。
トレーニング専用のラダーではなくラインテープなどを活用することですぐにできます。
ゲーム要素を取り入れる
幼年・少年を抱える道場では、飽きさせないための稽古メニューにゲーム要素などの遊びを取り入れた方法も存在します。
具体的には風船割りやボールドリブル、じゃんけんなどですね。機材がなくても工夫で取り入れることができるので参考にしてください。
これらのメニューを取り入れることで、より楽しく稽古ができるようになるでしょう。
■最後に
剣道を始めるきっかけはそれぞれですが、稽古というと多くの人が激しい打ち合いや気迫に満ちた試合をイメージしていることでしょう。
もちろん、すぐに憧れの姿になれるわけではありません。千里の道も一歩からという言葉もあります。少しずつ、少しずつ稽古を積み重ねていくことが大事なのです。