世界で認知されている剣道
剣道を通して日本文化を世界に知ってもらう、というのは言葉は実のところはもう古いんです。
この情報化社会で日本は文化大国としての発信を欠かしていません。
そのため外国の人はよーく日本を知っているし、日本の文化内で、どちらかというとポピュラーな部類に属するグローバルな武道になっています。ただ世界に広まれば広まるほど、発祥の地・日本を中心に今後も剣道会は発展し続けると言ってもいいでしょう。
今回は、そんな剣道を国際的な視点で語っていきたいと思います。
■競技者はおよそ60ヶ国にわたる
剣道は、ご存知のように柔道や空手と同じように日本では伝統ある武道です。ルーツも辿ればかなり古く、サムライに繋がるほど。
そして国際連盟も存在し、空手の世界空手連盟(WKF)、柔道の国際柔道連盟(IJF)と同じように世界にしっかりとした裾野を広げているのです。
現状では、全世界における活動人口の実に70%は日本が占めていて、残りの30%が海外と言うことになるわけですが、侮りがたいのが国際社会。海外での人気は年々盛り上がりを見せています。
■なぜ人気なのか?
やはりスポーツとしてより、武道としての「剣道」そして日本の精神性にも魅力を感じる外国人の方もかなりいるようです。
稽古や勝負の場において初めから終わりまで感情的にならず、そして勝っても驕らず負けて悔やまず、最後まで油断しないよう気持ちを集中させ常に節度ある態度を堅持する「残心」や
常に相手を尊重し礼で始まり礼で終わる「礼節を尊ぶ」といったものに代表される剣士の美しさやスピリットは称賛されています。
ストレートに感情をしっかり出す方が多いので、こういった姿勢は異彩を放っているのでしょう。
また、これは日本人にも人気な理由ですが、「生涯剣道」の理念があります。
そのため世代を超えて下は3歳から上は100歳を超える人まで老若男女年齢に関係なく同じフィールドで共に稽古をして学び、高齢になっても元気に続けられる競技として外国人の方々は衝撃を受けることも多いそう。
彼らにとっても、年齢を重ねて長く続けられ稽古や勝負を通じて学べる生涯学習は人間形成できる運動文化として認識されています。
■他にもよく聞く人気の秘訣
とはいえ、最近ではインターネットの影響により、どこからでも情報が手に入るようになりました。
そのため精神性よりも、スポーツの形に興味をもつ外国人も少なくはないようです。竹刀を持ち、防具をつけて対面して戦う武道にどんな印象をもっているのでしょうか?
「竹刀を持って戦うのが好き」
「一瞬で勝負が決まってスピーディー」
「叫び声と共に他人を打つのがストレス解消になる」
「竹刀を振って自分の動きを同期させるのが楽しい」
逆にこうやって楽しんで入っていけるのは、どこかしら外国人らしいフットワークの軽さを感じますね。
ただ、長い間打ち込んでいる方は、スポーツから武道へ、そして日本という奥深い精神に魅せられるルートは結構よくある話です。
とある武道具店ではわざわざ海外から来られるお客様がかなりいらっしゃると聞きます。道着や防具のネーム刺繍も、自分の名前をわざわざ漢字にされるとか…。
あなたの周りにもいる外国人剣士はどんな方でしょうか?
■実際どの国の人口が多いのか
日本以外で剣道が盛んな国というと、まず韓国が挙げられます。韓国は日本に次いで活動人口が多く、世界大会でも年々存在感を増しています。
そして中国などアジア圏でも近年はどんどん増加してきていますが、地域として最も盛んなのは実はヨーロッパです。
ひとつの例として、オランダには道場が15程あるそうです。オランダの国土は九州と同じくらいの面積ですから、海外の競技人口から考えるとなかなかの数字ではないでしょうか。
オランダで剣道を楽しむある男性は「他の人たちとするのが楽しい。剣道を一緒にする貴重な仲間であり、自分にとっては非常に大きい」と語っています。この男性は身体を動かすきっかけとして始めたそうですが、今では大勢の仲間と日々精進しているそうです。
■国際大会
剣道には、柔道や空手など他の武道と同様に世界各国の選手が参加する国際大会『世界剣道選手権大会(World Kendo Championship:WKC)』も存在します。
1970年に設立された国際剣道連盟(Fédération Internationale de Kendo 略称:FIK)が開催しており、設立と同年に第一回大会が開催されて以降、3年に1度の割合でアジア・アメリカ・ヨーロッパの持ち回り式で行われています。参加国は最初は少なかったようですが、現在では56の国が参加して行われており、最近は諸外国も力をつけてきているため、日本以外にも強豪国が数多く出てきています。これも世界にファンが増えている証拠ですね。
前回の16回大会は日本開催でした。17回大会は韓国で、国内でもちらほらと話題を聞くようになってきました。
試合が終わった後の選手同士のコミュニケーションも国際大会の醍醐味です。他の国の選手からしてみれば本場である日本の選手は日々どんな稽古をしているのかは気になるポイントです。また日本の選手からしてみても、日々真剣に取り組んでいる海外の選手との交流は大いに刺激となることでしょう。
■日本のライバルとなる国は?
世界の強豪選手が集まる世界大会。では、世界大会において日本のライバルと呼べる国はどこなのでしょうか。
第13回大会(2006年)の男子の団体戦で日本はアメリカに準決勝で敗れたため、第1回以降続いていた日本男子の連覇が途切れました。かつて、すべての部門で日本が優勝を逃したのはその1度だけです。
こう聞くと日本が圧倒的に強いように感じるかもしれませんが、10回大会以降のほとんどの大会では、韓国との死闘が続いており、紙一重で日本が勝っています。
過去の準優勝国及び3位の国を男子・女子それぞれ見てみると男子の部・女子の部ともに日本に次いで韓国が一番多く表彰台に名を連ねています。そこにブラジル、アメリカ、台湾といった国・地域が続きます。地理的に日本と近かったり、日本人が移民していた影響など、比較的早い段階から剣道の文化が伝わっていた国が上位に多いようです。
ヨーロッパでは剣道の歴史が長いドイツ、イタリア、フランスといったチームに加え、日本人指導者が育てたハンガリーといった振興国も善戦しています。
そういった点を踏まえて考えると、日本にとってのライバル国は主に韓国・ブラジル・アメリカ、そして将来的には中国といえるでしょう。
人口で比較した場合、日本に対して中国は約10.5倍、アメリカは約3倍の人口がいます。特に中国は経済成長が目覚しいこともあり、競技人口はここ数年で飛躍的に伸びてきているようです。
競技人口そのものはまだまだ日本の方が上ですが、今後海外で更に普及していけば、上述以外の他の諸国が力をつけてきて日本のライバル国となる日もそう遠くはないのかもしれません。
■まとめ
他の有名な格闘技よりも日本文化の色が強かったり、オリンピックの競技種目ではないことなどもあり、海外でも剣道が親しまれているということは多くの人にとっては意外な事実ではないでしょうか。
近年は訪日観光客の増加や、インターネット等を介した情報発信が進んだことで日本の文化が以前よりも更に広く知られるようになったことで、日本の良いところ、美点もまた海外の方に評価されるようになりました。
「礼に始まり礼に終わる」に代表される実に日本的な所作に好感を覚え始めたという海外の方も少なくありません。日本の大会に参加するため訪日する海外の選手も年々増えてきていますし、そんな方々とこの競技を介し、お互いに切磋琢磨できる良い関係を築いていきたいものです。