九州が剣道に強い理由は○○にあった!

九州が剣道に強い理由は○○にあった! 剣道を知る

剣道における群雄割拠の地・九州

桜島(九州・鹿児島)

剣道は古来より全国で盛んに行われている武道です。

そんな中でも一際盛んで有名な剣士を輩出する地方が九州である、ということは剣道をある程度知っている人にとってはご承知の事だと思います。

日本でも特に大きな大会で優勝した剣士の出身地を調べると九州の出身が多い事からも、九州が剣道の盛んな地域なのは疑いの余地がありません。

今回は、どうして九州が剣道の盛んな地域なのか?その謎に迫っていきます。

■剣道大会の優勝者は九州勢が多い?

剣道大会の優勝者は九州勢が多い?

日本で最も大きな剣道の大会と言えば、全日本剣道選手権大会です。

各都道府県で行われた予選を勝ち抜いた強者ばかりが集まるこの大会で優勝するのは、剣士としての夢であり目標です。

そのため、誰もが腕を磨き自分を鍛えて臨みます。そんな過酷な大会を優勝した人物の出身を調べると、熊本や福岡・宮崎といった九州の県名がよく出てきます。

実は全日本剣道選手権大会の優勝者に九州出身者が多いのです。

例えば、ここ10年で優勝した剣士のうち6人が九州出身の剣士です。

九州は別名「剣道大国」

上述のように、九州出身の剣士は全日本剣道選手権のような大きな大会でも優勝するような実力者が揃っています。

また、高校剣道界は『全国よりも九州で優勝する方が難しい』と言われるほどの激戦区です。

どの高校も勝利への執念が強く、全国の決勝には九州の高校が必ずといっていいほど食い込んできます。

高校野球で言う所の甲子園のような、高校剣道の聖地玉竜旗大会は九州のためにあるとまで言われおります。

このことから、剣道界における九州は「剣道大国」とまで呼ばれ、別格視されています。

■九州が強い理由とは?

九州が強い理由とは?

これほどまでに九州の剣士が強い理由として挙げられるのは、剣道人口の多さにあります。

全日本剣道道場連盟によれば、全国に存在する道場の数は約2200ですが、その5分の1が九州にあります。

そこからもわかるように九州は他の地方に比べて剣道人口が頭一つ飛びぬけており、大小さまざまな大会が催されています。

武道に限らずスポーツでも言える事ですが、競技人口の多さは、そのまま競技全体の実力の高さに繋がります。

人数が多ければ多いほどその地域での練習試合の数が増えていき、才能のある剣士が技術を磨きやすい環境にあるといえます。

稽古量・指導レベルの高さ

道場の数だけでなく、その歴史や稽古量も九州は他の地域よりも頭一つ抜けています。

剣道は早くから始めているほど実力が付きやすく、特に初期段階でレベルの高い指導を受けていると余計な癖や間違った方法を覚えずに習得できます。

何より、九州の剣士は稽古に多くの時間を割きます。

長い歴史と経験によって無駄なく効果的な指導を行う道場が多いため、他の地域よりも早く上達していくのです。

つまり、九州は稽古の質や量が高く、剣道を盛り上げていく風土が整った理想的な環境なのです。

■九州と剣道の歴史

九州と剣道の歴史(熊本城)

では、なぜ九州がこれほどまでに剣道の盛んな地域になったのか、その謎に迫っていきます。

事の起こりは江戸時代から

始りは江戸時代に遡ります。

当時、江戸幕府を開いた徳川家は関ケ原の戦いが終わった後に恭順してきた大名(外様大名)ほど遠くへと追いやりました。後からやって来た人間を信用しなかったのです。

そのような扱いを受けると大名としては面白くありません。表向きは徳川幕府に従いますが、裏ではいつの日か巻き返してやろうという感情が沸々と湧いていきます。

そのため、九州に追いやられた大名たちは剣術や居合、槍術、拳法、砲術など戦いの技術を持つ人間を指南役として雇い、技の継承に務めてきました。

例えば、鹿児島なら示現流などが有名です。

侍の終焉~剣術の再評価

それから歴史が進み江戸幕府が滅びると侍という身分が廃止になります。

廃刀令によって日本刀を持ち歩くことが禁止され、剣術は衰退していきます。

そんな中、士族(元侍)による反乱、西南戦争に従軍した警視庁の抜刀隊の活躍が転機をもたらします。

剣術の価値を見出した警察は、警官の修得する武道に剣術を設けます。

そのための教習所が全国で設立され、多くの九州剣士が師範として採用され指導にあたるようになります。

この事がきっかけで、九州では剣術が勢いを取り戻し、それに合わせる様に剣道の道場が多く開かれるようになります。

戦後~現代剣道に至るまで

こうして剣道熱が高まった九州ですが、敗戦を切っ掛けに低迷する事になります。

日本を占領したGHQは、当時の剣道界を率いていた大日本武徳会を解散させ、剣道の組織的活動を禁止します。

それからしばらくたち、サンフランシスコ講和条約が発効され日本が解放されると、剣道の復興が始まります。

九州では1955年に全九州高校剣道選手権大会が開催されます。これが現在の玉竜旗大会に繋がっていきます。

いち早く学生剣道の大会を開き、九州限定とはいえ規模の大きな大会を続けた事は九州剣道界の誇りであり、それだけに優勝争いは過熱していきます。

九州人のみならず、才能のある他県の中学生をスカウトしたり、逆に大会に参加したいがために親元を離れる決心をした若き剣士を迎えたりしていき、大会のレベルが上がっていきます。

大会のレベルが上がる事で指導力のある剣士が揃って行き、その剣士が子供たちに質の高い稽古をつけるようになり、またレベルが上がるという好循環が生まれたのです。

九州は長い時間をかけて剣道を根付かせた地方なのです。

■九州の中で剣道の強い県は?

特に強い県はどこ?(福岡・太宰府天満宮)

ここまで九州が剣道の強い地方とご紹介して来ましたが、そんな九州の中でも特に強い剣道の県はどこなのかという疑問が浮かぶと思います。

どの県も剣道の盛んな地域であり、優劣を付けるのは難しいですが、それでも絞るとしたら熊本福岡鹿児島の3つが九州でも剣道の強い県と言えます。

その理由は高校剣道において輝かしい実績を上げている高校があるからです。

剣道の強い地元の子供だけでなく、他県からも越境して日夜厳しい稽古をする事から、高校剣道で優勝する高校はこの3県のどれかと言われています。

この事から、熊本・福岡・鹿児島の3つが最も強い県と言えます。

■まとめ

阿蘇山(熊本)

・国内の大会優勝者には九州出身者の割合が多い

・九州は剣道人口が多いため、競技レベルも高い

・九州の剣道人口が多いのは江戸時代に武芸が盛んな地域柄だったことに端を発する

今回の記事では九州が剣道の強い地方だとご紹介して来ましたが、もちろん他の地方出身の強い剣士も大勢います。

ですが、その方たちと比較しても、九州出身の剣士は強いと言えます。