体力・筋力は大事?
試合や大会で良い成績を上げたり、昇段審査を通るには、技の習得もさることながら日頃の体力づくりも心がける必要があります。
体力づくりはスポーツ全般に共通して大事なことですが、特に剣道は重い防具を身につけて行うため、他のスポーツ以上に体力が求められます。
そのため常日頃から体力づくりをしておくことが大切です。
■体力づくりは筋肉づくりから
体力をつけるうえで避けて通れないのは筋肉を鍛え、筋力をアップさせることです。
体力と筋力は混同されやすい要素ですが、体力とは持久力・瞬発力、あるいは疲労や病気などへの抵抗力など身体の持つ力全般のことを指します。
筋力とはその体力の中でも持久力・瞬発力など、物理的なパフォーマンスを発揮する際に必要とされるものとされています。
体力アップに必要な要素は筋力だけではありませんが、筋力を鍛えることは体力をつけるという観点からとても重要といえます。
■筋力そのものは必要?
では筋力そのものはあまり重要でないか、と言えばそういうわけでもありません。
稽古の中で筋力は自然とついてくるもので筋力アップは不必要と思う方もいますし、「柔よく剛を制す」の精神や「理」を重要視するところは確かにあります。
しかし、剣道は激しく走り回ったりする競技ではないにしろ、竹刀の振りや足による蹴り出しなど日常ではあまり使わない身体の動きが求められます。
そして稽古や試合では、静止状態から突然とてつもないスピードで突いたり突かれたり、激しい押し合いにもなります。
そういった激しいやり取りや、繊細でダイナミックな技を素早く繰り出すには、やはり筋力を下地としたフィジカルの力も重要なのです。
■筋力アップに効果的なトレーニング法
素振り
それぞれの道場によってトレーニング法は異なりますが、筋力アップの代表的な方法としては、通常のものより重く作られた素振り用の竹刀を用いた素振りトレーニングがあります。
このトレーニングでは、竹刀を扱う上で使用する腕の筋肉を強化できます。通常よりも速く大きく振ることを意識するのがポイントです。
素振り用竹刀の重さですが、高校生は700~800gの特製竹刀がいいでしょう。
これを用いて前後左右の方向にすり足や開き足で面打ちと素振り、上下の素振りや斜めの素振りを繰り返します。
背筋
竹刀を用いた打ち込みでは腕の力も勿論のこと、蹴り足の力も非常に大切です。背筋を鍛えることで体幹に作用し、蹴り足が強くなります。
まず上体をゆっくり起こし、背中を後に反らせます。限界と感じる程度まで起こした後、ゆっくりと下ろして元の位置へ戻ります。このとき膝は真っすぐ伸ばしておきましょう。
急激に上体を起こしてしまうと腰を痛めてしまいますので、できるだけゆっくりと行うようにしましょう。
最初は大変かもしれませんが、徐々に慣れてきますので心配いりません。
また、体幹を鍛える方法としてはバランスボールも効果的です。バランスボールでゴロゴロすることでバランス力が鍛えられます。
片足立ちの状態で様々な動きを行うのも体幹アップになりますので、左右の脚どちらか一本で立つバランストレーニングなども行ってみてはいかがでしょうか。
スクワット
スクワットはゆっくり行うことで足腰の持久力が高くなりますが、その分瞬発力が失われてしまう可能性も考えられます。
ゆっくり行うスクワットと、素早い動きでのスクワットの両方を行うと、瞬発力を保ちつつより強い足腰を実現することができるようになるので、偏ることなくバランス良く行うようにしましょう。
■練習の疲れを癒すには
上記で取り上げたようなトレーニングを通して体力をつけていけば徐々に疲労しにくい身体になっていきますが、それでも許容量を超えたオーバーワークはパフォーマンスを下げてしまいます。
疲れが蓄積されると体調そのものにも影響し、かえって体力低下の一因となってしまいます。
そうならないよう、疲れを感じてきたら早めに対処する必要があります。
疲労から回復するには色々なやり方がありますが、以下のように自分でできる方法もありますので実践してみましょう。
これらを行えば、練習で蓄積された疲れも軽減されるでしょう。
休養
溜まった疲れを取るには、やはり休養が必要です。
どんな競技でも休養は疲労回復の基本的な方法です。一流のスポーツ選手になるほど練習と同じ、あるいはそれ以上に休養を重要視しています。
ゆっくり休養することで疲労が取れ、練習や試合に集中できるようになります。
十分な睡眠
疲労回復には睡眠も大切です。日頃から睡眠不足を感じている方はゆっくり眠れるような環境を調整してみてください。
睡眠中は日中に使用した脳細胞が休まり、全身の新陳代謝が活性化されます。その結果、疲労した体が回復していきます。
理想的な睡眠時間は6~8時間程度と言われていますが、睡眠の質も大切です。質の良い睡眠を心がけましょう。
毎日の入浴
日頃から溜まった疲れを取るためには、お風呂も効果的です。
入浴によって体が温まり血行が促進され、その結果体のリズムも良くなり疲れを感じなくなります。
温度としては熱め「41~42度」に入浴すると体が元気に、温め「8~40度」に入浴するとリラックスしやすくなります。
日頃から疲れを感じている方は、ゆっくりとお風呂に浸かってみてはいかがでしょうか。
■疲労を回復するツボ
それでも疲れがなかなか取れない人は、以下の疲労回復にきくツボマッサージを実践してみましょう。
手のツボマッサージ
これは手の真ん中にある「労宮」と呼ばれるツボをマッサージします。
労宮の位置は指を握った際(グーの形)に、手の平に中指の先端が当たる場所です。
労宮のツボは、もう一方の手の親指で押すようにしましょう。この労宮を10回押すことで、日頃の疲れを取ることができます。
労宮をマッサージする効果としては、以下の点が挙げられます。
自律神経の作用が上昇
副交感神経の緊張が和らぐ
めまいやほてりなどの症状改善
心の疲れもなくなり、気持ちが落ち着くように
手のツボマッサージを毎日繰り返すことで溜まった疲れが回復し、気持ちもリラックスしてきます。
手のツボマッサージのポイント
「若干の痛みがあるが気持ちが良い」程度の強さで押します。右手と左手、それぞれのツボをマッサージしましょう。
ツボはゆっくりと丁寧に、あまり強く押しすぎないようにしましょう。
押すときや力を緩めるときは、ツボを押した親指は労宮から離さないでください。指の代わりに棒などでも代用できます。
マッサージの前に、カイロやドライヤーなどで温めると効果が高まります。
食後すぐにではなく、30分程度経過してから行うようにしましょう。
まとめ
体力や筋力について、必要とされる色々なことについてまとめてみました。
陸上競技や球技のようにあまり激しく動いているイメージがないため体力はそれほど必要ないと思われているかも知れませんが、やはり身体を動かす以上、体力・筋力をつけることでより高いパフォーマンスを発揮できるようになるのは他のスポーツと同様です。
武道においては「心・技・体」のバランスが取れていることが重要とされているように、ただがむしゃらに鍛えるというよりは「試合に勝ちたい!」という目的意識をしっかり持った上でトレーニングに臨むのが良いのではないでしょうか。