脱初心者を目指す!「気・剣・体」を意識する

剣道の気合い・掛け声の意味 剣道を知る

一本を取るために重要な三つの要素

試合において一本を取ることや、勝つことに大きく関わってくるのは「」・「」・「」の一致です。
日々の稽古・鍛錬を通してこれらがすべて備わっていることが重要です。

今回はこの気・剣・体についてそれぞれ説明していきたいと思います。

■”気”

気・剣・体の「気」

「気」とは、「気持ち」、つまり心や意思といった内面の部分です。

剣道の稽古や試合の風景を見たことがある人なら、皆ひっきりなしに大声を出していて思わずビックリしたという方も多いでしょう。

これは有効打突、すなわち試合中に一本が決まるルールのひとつとして「充実した気勢」というものが含まれているためです。

クリーンヒットで面が当たったとしても、声が出ていなければ審判から気合が入っているとは見られず、一本にはなりません。

本人の気勢が満ちているかどうかは外見だけではわからないので、それをアピールするために大声を出しているというわけです。

実際のところ、剣道と「声」は切っても切れない大事なものなのです。

掛け声から気合が量られる

では、そのような大声はどんな時に発せられるものなのでしょうか。

まずは、試合の「始め」の合図がかかると「ヤーーーー」と掛け声を叫びます。

これは、相手に対して「絶対に負けない」という気迫でもあり、同時に自分を奮い立たせる気合でもあります。

試合中は、技を打つときにその技に対して「メーーーン」「コテーーー」など、自分の出した技を打突と同時に叫びます。

また、打突を出さずにらみ合っている状態でも「ヤーーー」とか「キャーーー」とか「アーーー」とか人によって様々な掛け声を発します。

この掛け声もまた、自身の気迫を伝えることで相手の気勢を削ぐものであり、試合においてはとても重要です。

特に、筋力や技がまだ成熟していない小学生や中学生の試合では、大きな声を出すことで自分を強く見せたり相手を萎縮させる効果は大きくなります。

より大きな声を出すためには

しかし、人によっては大声を出すことが苦手な人もいます。

どんなに優れた技を持っていても、早い打ちができたとしても、やはり声が出ないと一本には繋がりません。

「剣道は好きだけど大きな声が出ない」という方もいるかもしれません。そんな方は、まず発声練習から始めるようにしましょう。

自分の声量を知る

大声を出す練習にあたって、まずは自分の声がどのくらいの大きさなのかを把握してみましょう。

ビデオカメラの映像やレコーダーの録音などを通して聞く自分の声が、普段聞きなれている自分の声とはぜんぜん違っていて気持ち悪いと思った経験はありませんか?

実はあれが実際に自分が発している声なのです。つまり自分以外の人にはあの声こそがあなたの声として聞こえているのです。

自分自身の声は頭蓋骨の内側に響くため、他人の耳に聞こえる自分の声とは聞こえ方や声量が異なってきます。

そのため、自分では普通の声量だと思って話していても、実際は思っていたより声が小さい、ということも有り得るのです。

最近ではスマートホンにボイスレコーダーアプリなどが搭載されているので、これを使って自分の声を録音し、聞いてみましょう。

実際の声は自分で思っていたより小さかった、ということもあるかも知れません。

自分の声量を知る

もし自分の声が思っていたより小さいと思ったら、声を出しやすくする練習をしてみましょう。

声を出すためのポイント

・口を大きく開ける

・喉を広げる

・腹式呼吸

口を大きく広げるのは簡単です。鏡などで確認しながら、「少し開けすぎかな?」と思うくらい開けてみるのがポイントです。

喉を広げるにはあくびをしている状態をイメージしてみて下さい。あくびをしている時の喉の開き具合を覚えておいて、声を出すときにもそれをイメージしてみましょう。

腹式呼吸は、文字通りお腹を使って呼吸することです。息を吸ったり吐いたりする時に肩や胸を動かすのではなく、お腹を膨らませたりへこませたりします。

腹式呼吸を意識しながら声を出すことはなかなか難しいですが、喉への負担が軽減されたり、より大きな声を出せるようになります。

■”剣”

気・剣・体の「剣」

「剣」とはいわゆる技のことであり、日々の稽古の中で習得した技術を惜しみなく出し切る事です。普段の稽古の成果がここで試されます。

また、相手の技量を推し量り、それに対して自身がどう挑むべきかという洞察力、逆に相手の隙を逃さず、攻める隙を見出す観察力も必要となってきます。

竹刀のさばき方ももちろん大事ですが、それ以上に間合いの取り方などの技術は剣道において非常に重要です。

間合とは

『間合』とは、自分と相手の距離を言います。

剣道における間合は、攻防の構えをしている状態の時をいいます。初心者は稽古の時は、確実に打とうとしてかなり近い間合から始まります。

最初はそういうものですが、慣れてきたら中段の構えを常にとってから打つという心がけをすれば、自然と間合の感覚がつかめてきます。

一足一刀の間合

間合いには「一足一刀の間合」と「遠間」「近間」の3種類があります。まずは「一足一刀の間合」を会得するところから始めましょう。

一足一刀の間合とは、一歩踏み込めば打突できる距離で、一歩下がれば相手の打突をさっと交わすことのできる距離です。

具体的にいうと剣先が10センチほど交わっている状態になります。ここから剣先の攻防が始まっているため、気を張って攻めと守りの駆け引きをしなければなりません。

これより遠い「遠間」だとお互いが打突するのに遠すぎ、「近間」だと近すぎて構えがきちんとできていない打ち方になってしまいます。

間合の攻防

「一足一刀の間合」に入っているときは、お互いの気がピーンと張りつめており、いってみれば、殺気を放ちながら打突の機会を狙っている状態です。

小学生の試合でも決勝にあがるほど剣先の攻防が上手になり、かちゃかちゃと小刻みな動きが見ることができます。間合をいつでも詰められるように足さばきも細やかです。

視線は絶えず相手の目から離しません。相手の目だけを見ながら間合をはかり、打突の機を狙うのです。

初心者ほど打突を狙っている箇所を見てしまうので、目が動いてしまいます。目を動かさず、間合の気と心の動きで打突する瞬間をとらえましょう。

■”体”

気・剣・体の「体」

「体」にたいしては、「面」「小手」「胴」「突き」を繰り出していく上での姿勢や構え、足さばきなどが上げられます。

そして姿勢、構え、体さばきすべてにおいて重要になってくるのが足の動きです。

足を使った踏み込み方

足の踏み込みは、強い打突をするために必要な行為です。

この足の踏み込みについては、多くの方が悩んでいるのではないでしょうか。まさに初心者が最初にぶつかる壁だと言えます。

足の踏み込みは剣道の中でも特に大切ですので、日頃から考えて練習すべき点です。

強い選手やベテランの選手たちは、足を踏み込むときの音がとても大きいのが特徴です。

「バシッ」「パーンッ」など、乾いた鋭い音がするのが普通です。

この大きな音の踏み込みで、打突のインパクトを強くできるのです。

強い踏み込みの音は簡単そうに思えますが、初心者は簡単に出すことはできません。

その中にはすぐにコツをつかむ人もいますが、多くが「ドン」などの鈍い音がします。

鈍い音がする大きな理由は、かかとから踏み込みをしているからです。かかとの骨や肉床にぶつかることで鈍い音になってしまうのです。

このような鈍い音がしたまま練習を続けていると、怪我の原因にもなります。

踏み込みは練習を重ねることで上達しますが、まずは正しい動作を学びましょう。

■最後に

「気・剣・体」を意識し、ある程度実践できるようになった試合は、ただ何となく竹刀を握って向かい合うのとはまるで異なります。

一人の剣士として勝負の場に出る気概を背負っていると言っても過言ではなく、この気持ちを持てるようになると初心者卒業と言えるのかも知れません。