穴師剣道会の概要
大阪府泉大津市の穴師剣道会は昭和48年に創立された。代々大阪府警所属の剣士が指導者として関わってきたが、平成17年頃からは大阪府警の新屋誠教士(現八段)が、娘の入会をきっかけに指導に携わるようになり、平成30年現在、主任師範を務めている。
現在中心になって指導をしているのは阪口貴彦教士七段と寿里六段の夫妻。貴彦教士七段はやはり大阪府警で特練(特別訓練員)のメンバーをつとめ、寿里さん(旧姓萩原)は現在は退職しているが元大阪府警で日本代表として世界選手権にも出場している。したがって、稽古は大阪府警で行なっている基本稽古をベースに行なっているという。
■基本技稽古の風景
突き技を稽古に取り入れているのも穴師剣道会の大きな特徴である。小学生や中学生は試合での突き技は認められてはおらず、基本技の練習として行なうだけで、地稽古の中で使うようなことはもちろんしない。腰の入り、体の運用、手の内の締め方などを身につけさせることを目的として行なっている。
「小学生は胸突きですが、中学生になると突垂れを突くようになります。最初はみんなあっちへ行ったりこっちへ行ったりですが、慣れてくればパッと止まるようになります。
中学生はもう高校生のような突きができています。突きを練習することで手だけでなく体全体で入るような打ちになってきました」
■基本稽古の中で行なう突き技
「自分が使っていた技を全部伝えるのも指導者のつとめ」と考える新屋師範は、小学生にもできるだけ多くの技のバリエーションを教えるという。
「小手返し小手とか払い小手といった玄妙な技はなかなか小学生はできませんが、その中の一つがその子に合っている可能性があり、将来どこかで活きる可能性があると思います」
大阪で行なわれる全日本都道府県対抗少年剣道優勝大会で、新屋師範が監督を務めたさいにこんなことがあったという。穴師剣道会の小柴直樹選手が副将を務めていたが、敗れればチームが敗退という場面で一本一本になった。
「ここは勝負に行かせなければいけないと思って、相手が竹刀をちょっと柔らかく持っていたので、直樹がこっちを見たときに『払い小手行け』ってしぐさで指示をしたんです。
そうしたら始め、となってものの見事に払い小手を決めてくれた。あんな大舞台で自分の思った技を弟子が思ったとおりに出してくれて、あれはうれしかったですね」
基本稽古といっても面、小手、小手面といった基本的な技だけでなく、あらゆる種類の技を一つひとつ指導者が丁寧に解説を加えながら学んでいく。現在もこの稽古に40分~50分程度は費やしているが、新屋師範が中心になっていた頃は、ついつい教える技が多くなり時間が延びてしまうのが常だったという。
■ひとつひとつの技を解説しながらの基本稽古
基本稽古で実践する技を、ごく一部ですが、新屋師範の解説とともに動画で紹介していきます。