【連載⑥】真夏の九州決戦に臨む。与えられたチャンスに躍動した2人|飯田良平監督のラストシーズンを追う

インタビュー

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7月28〜29日、玉竜旗高校剣道大会(上)

7月28日、福岡マリンメッセで久々に飯田良平監督と育英の選手たちに会った。前回、6月2日の兵庫県高校総体(インターハイ予選)から2か月近くが過ぎている。

約2週間前、7月15日~16日には和歌山ビッグホエールで第56回近畿高校剣道大会が行なわれた。記者は他の取材と重なり足を運ぶことができなかったが、育英高校は見事団体優勝を果たしている。

「面白かったですよ。来ればよかったのに」

と飯田監督が言う。

予選リーグでは先鋒に鎌浦光作(3年)、次鋒には松井奏太(3年)を起用した。松井は春の近畿高校選抜大会で1試合だけ出場している。

鎌浦は一般入学の選手で、兵庫県のインターハイ予選では個人戦に出場し団体戦でも出場機会はなかったが控えメンバーに入っていた。中堅以下は榊原彬人(3年)、福岡錬(3年)、松澤尚輝(3年)という不動のメンバーである。

水口東(滋賀)には5─0、奈良学園(奈良)には福岡が引き分けたのみで4─0で勝利を収め、トーナメントに進んだ。

トーナメント1回戦は春の全国選抜大会でベスト8に駒を進めた清風(大阪)との対戦。

飯田監督は「やはり何が起こるかわからないから」と考えたという。先鋒大津遼馬、次鋒阿部壮己をこの試合から投入した。

大津が一本勝ち、阿部と榊原は相手に先に一本を許すもともに逆転勝ちで3連勝で勝負を決めた。続く郡山(奈良)との準々決勝は、榊原が敗れただけで4─1で勝つ。

準決勝は、今春、近畿選抜大会で勝ちながら全国選抜大会で敗れた奈良大附属(同大会3位)との対戦となった。

この近畿最強のライバルに対し、大津、阿部、榊原が揃って一本勝ちという会心の勝利を収める。福岡が敗れたが松澤が勝って4─1とした。

「奈良大さんの試合を乗り切って、ほっとしたんでしょうね」

と飯田監督が語る箕島(和歌山)との決勝は苦戦だった。大津、阿部が引き分け、榊原が延長も残り少なくなったところでメンを奪われる。

福岡は引き分け、松澤も時間内には返せない。延長に入ってようやくメンを奪い代表戦に持ち込んだ。

「代表戦になったらもう松澤は勝つと思いました。その前に個人戦で根本(勝也)君(奈良大附属)に負けて失敗していたから。長く延長を戦って、自分が取る気で勝負をかけたのが早すぎて、そこを後から乗られました。松澤のミスでした」

代表戦は8分を超えたが松澤がコテを奪って優勝を決めた。個人戦では松澤は準決勝で根本に敗れての3位。福岡錬が決勝に進み根本に敗れて2位という結果だった。

■鎌浦、久住の2人で勝ち進む

玉竜旗大会は先鋒鎌浦、次鋒久住というオーダーで初戦に臨んだ

育英高校のメンバーは7月22日に福岡入りした。23日には九州学院高校に赴いて恒例の一対一の練習試合。

24日は福大大濠高校での練習試合、25日は筑紫台高校での練習試合、26日は朝軽く稽古をして、27日の開会式を迎える。

育英の出番は28日からだったので、開会式の後東福岡高校へ行って練習試合をした。

一連の練習試合で飯田監督はかなりの手応えをつかんだようだ。

「強いところに胸を借りて、本当によかったです。九州学院も米田(敏郎)監督に、私も最後だからって言ってお願いしたのですが、いい試合ができて……。何とかやれるかなっていうのはあるんですけれど……」

この話は28日の初戦が終わった後に聞いたのだが、飯田監督の心はすでにインターハイに飛んでいるようで、こう話を続けた。

「インターハイの予選リーグは大社高校と長野日大とやります。大社には佐野日大が選抜でやられていますからね。筑紫台ではずっと一緒で隣のコートで練習試合をしていたのでずうっと見ていたんです。なかなか元気で一生懸命やっていたから、そっちの方がこれ(玉竜旗大会の試合)よりも気になっています」

育英は玉竜旗大会で昨年初めて3位入賞を果たした。過去、九州以外のチームで本大会を制したのは4校のみ。3回優勝したPL学園高校(大阪)、大会史上最大の番狂わせを起こした倉敷(岡山)、そして桐蔭学園(神奈川)、明徳義塾(高知)。

2009年には明徳義塾と水戸葵陵(茨城)の遠来組決勝となり、この大会も変わるのかと予感させたが、その後九州学院が黄金時代を迎えたこともあり、遠来組の優勝はない。

九州以外の高校にとって、よほどの運に恵まれないと優勝は望めない。長い間この大会の場を踏んできた飯田監督はおそらくそんなふうにとらえているのではないか。

優勝することよりもインターハイに向けて仕上がり具合を見極め、経験を積ませ、課題を見つけることの方が大切な大会なのかもしれない。

2回戦、鎌浦が都城東の中堅持留からひきメンを奪う

28日は順調に勝ち進めば3試合を戦う。初戦となった2回戦は都城東(宮崎)との対戦。インターハイ宮崎県予選では4位(上位は4チームによるリーグ戦)に入ったチームである。

飯田監督は先鋒に鎌浦、次鋒に久住俊介(3年)を配した。中堅以降は榊原、福岡、松澤という不動のメンバー。

この試合で鎌浦が躍動する。相手の先鋒から大将まで見事に5人抜きを果たした。

試合後、飯田監督はいつものように選手を集めて話をした。試合をしたのは鎌浦だけであるし、その内容には反省すべき点もないように思われたが、そうではなかった。

「コテに言って止まるので、なぜ中間で止まるのかと。もっと思い切りやればお前ならスピードで負けないぞと話しました。やはりこういう大舞台は初めてだからちょっと緊張していたかな。次の試合からはもうちょっとやれるかなと思うんですけど……。最後の長友(悠泰)君は強いから、5人抜きできたらいいけどなかなか難しいだろうなと思っていたら、いい面打ったからよかった」

3回戦、久住が札幌第一の副将蓑田からメンを先取。この後さらにメンを奪った

この2回戦は朝10時半頃で、次の3回戦は午後4時近く。調整も簡単ではない大会である。対するは札幌第一(北海道)。

インターハイ北海道予選では東海大札幌を下して2位となっているチームだ。ここでも鎌浦はスピードのあるメン中心の攻めで、相手の先鋒、次鋒にともに二本勝ちを収める。

だが、中堅の桶川風雅には先制され、メンで追いつくものの終了近くなって桶川のメンが決まり、鎌浦は2人抜きでストップした。

ここで初めて登場した久住も、鎌浦に負けず劣らずいい立ち上がりを見せた。副将蓑田悠斗に鋭いメンを二本決めると、大将青木尊にも一本勝ちを収め試合を終わらせた。

4回戦、鎌浦が副将今井のコテを返してメンを決める。この後さらにメンを奪った

この日最後となった4回戦の相手は前橋育英(群馬)。今年のインターハイ予選はベスト8で敗退したが、全国大会の常連である。

この試合は再び鎌浦が主役となった。相手の中堅に対してだけは一本勝ちだったが、他の3試合はすべて二本勝ちで、副将までを破り、大将前原渓人を引き出した。

前原に初太刀でコテを奪われるも、残り時間が少なくなったところで諸手ヅキを奪う。引き分けとしてこの試合も1人で終わらせた。

■大会最終日も好調に勝ち進む

玉竜旗大会最終日の29日はベスト64のチームが出場する。5回戦から7回戦のあと準々決勝となり、決勝まで進めば6試合を戦うことになる。

育英は5回戦もメンバーを変えずに臨んだ。今年はインターハイ出場を逃している桜丘(愛知)との試合である。鎌浦は好調を維持し中堅まで3人を抜くが、副将加藤大賀に二本を奪われ敗退。

だが久住が加藤を破って相手の大将上村武尊を引き出す。上村にコテを先制された久住だったが、終盤にメンを返し引き分けとする。またも2人で試合を終わらせた。

6回戦は地元福翔(福岡)との対戦。福岡商業時代に9回の優勝を誇る名門で、近年男子の入賞はないが、今大会で女子が3位となっている。この試合から飯田監督は先鋒に大津遼馬、次鋒に阿部壮己を投入した。

お役御免となったが、鎌浦と久住の活躍は見事だった。多くの強豪が序盤戦では本来のレギュラーでない選手を前衛で使ってくるが、今大会では育英以外にはあまりそういう選手の活躍が見られなかった。

たとえば九州学院は大将重黒木祐介が初めて登場したのは準々決勝だったが、5回戦までに副将小川大輝まで回った試合が2試合あった。5回戦まですべて、本来のレギュラーではない前衛2人で勝ってきた育英の試合ぶりはまさに快勝といえた。

「(鎌浦は)本当に一生懸命やるし、いい子なんです。昨日の練習試合もよかったのでね」

飯田監督の鎌浦に対する評価は高い。

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