試合に臨む上で知っておくべきルール
試合は普段の稽古の成果を出す場所のひとつです。
今まで頑張ってきたことをしっかりと出し切るためにも、ルールを理解して臨みたいですね。
時間と勝敗、そしてやってはいけないことも含めたルールを書いていきたいと思います。
■試合の流れ
試合は、剣道試合審判規則で定められた基準に沿って作られる「試合場」と呼ばれる白線の中で行われます。
枠の大きさはもちろんですが余地や白線の幅も基準があります。
試合は「三本勝負」で行われることが一般的です。
試合時間内で二本を先取した方が勝利となります。そして試合によっては、三本勝負ではなくどちらかが一本先取したら勝敗が決まる「一本勝負」の試合も存在します。
個人戦、団体戦であっても、ひとつの試合場の中で一対一の対戦になります。
■試合時間
剣道の試合時間は、学年(年齢)やその大会のルールにより違いますが、一般的には小学生は2分、中学生は3分、高校生以上は4分ということが多いでしょう。
大人の場合5分、あるいは高段者の試合では10分という場合もあります。
引き分けを設けない個人戦などは時間内に勝負がつかいない場合、延長をすることがあります。
時間を止めるとき
試合中であっても、一定の行為に関しては時間を止める場合があります。
例えば、一本を取ったときです。審判が「面あり」と声を挙げたら一旦時間を止めます。
そして、再度再開する「はじめ」という声がかかったら、また時間を再開します。
また、試合中に防具のひもがほどけたり、竹刀が割れるなどがあった場合に、審判が「やめ」と声をかける時があります。
その場合も時間を止めます。そしてふたたび「はじめ」の声で時間を再開します。
時間を止めないとき
試合中に鍔ぜり合いが長くなったときなど、審判が「分かれ」という時がありますが、この場合は時間を止めません。
2分、3分と聞くと、短いという印象がありますが、実際に試合を見ていると長いような短いような不思議な時間の感覚になります。
しかし、試合を行っているほうは3分でもかなり長く感じるようですね。後半に先に先取されると、残り時間が気になってなかなか挽回できません。
時間の使い方も作戦のひとつと言えるでしょう。
■試合の勝敗
剣道の勝敗は有効打突が決まり「一本」となることが重要ですが、ただ単に打突が決まればよいというわけではありません。
また、個人戦と団体戦では全体の勝敗について扱いが少し違います。詳しく解説していきましょう。
剣道の一本、つまり有効打突は審判規則によると「有効打突は、充実した気勢、適正な姿勢をもって、竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心あるものとする。」としています。
わかりやすく説明すると、気合の入った大きな声を出し、正しい姿勢で正しい竹刀の位置で打ち、打った後も気を抜かずすぐさま次の戦いに向けて構える残心があるような一本であることが必要なのです。
そのため、ただ単に竹刀が打突部位に当たったとしても、条件によっては一本と判断されません。
団体戦の勝敗
団体戦の勝敗は、個人個人の勝敗の積み重ねで最終的に多く勝ったほうが「勝ち」となります。
団体戦の場合は「引き分け」もあります。また、どちらも同じ勝数の場合は、全体で何本取ったか(何本取られたか)が大事になってきます。
二本を取られることは団体戦では後々勝敗に影響が大きくなるため、避けたいものです。
また、勝数、本数ともに全く同じ場合には、「代表(者)戦」という最後にお互いが代表を出し、その試合によって勝敗を決めます。
団体戦は一人の勝敗がチームの勝敗を左右するため一体感があり、とくに小学生から大学生の剣道における醍醐味ともいえるでしょう。
■判定の方法
個人戦では、基本的に「引き分け」はありません。
そのため、もしも同点のまま試合時間が経過してしまった場合には、延長戦を行なって決着がつくまで行なうか、審判の「判定」で勝負がつきます。
判定はより有効打突(一本)に近い打突をしていたか、などの基準で行なわれることになります。
審判は、主審1人と副審2人の合計3人が三角形の形でコート内にいます。その内の2人以上が有効打突を認め旗を挙げたら「一本」です。
もし1人しか旗を挙げなければ、その打突は有効にはなりません。
相手の打突部位をとらえていても「残心(打突を行なったあとも注意を怠らずに示す身構え、心構え)」がない場合は、一本が認められないこともあります。
この試合時間内にどちらも有効打突ができず「ゼロ」となった場合や、どちらも一本ずつ取った場合などは「引き分け」となる判定です。
勝敗が決まらない場合は「延長戦」に突入します。基本的に個人戦で、どちらかに有効打突が決まるまで続けられることが多いのですが、団体戦でも延長が行なわれることもあります。
また必ず勝敗を決めなければならない場合には、時間を区切ってどちらが有効打突に近かったかなどの基準で審判による「判定」での決着になることもあります。
■反則行為・禁止行為
試合での主な反則行為には、次のようなものがあります。これらの反則を2回犯すと相手に一本が与えられます。
反則行為は「見た目にこれはダメだろう」というような判りやすいものと、「技術的なもの」と大きく二つに分かれます。
見た目に判りやすい反則
相手を意図的に場外に出す
試合中に自分が場外に足が出てしまう
相手に足を掛ける
審判に許可を得ず勝手に場外に出る
自分の竹刀を落とす
試合中に意味もなく中止を求める
審判や相手に非礼な態度をする
技術的なもの
正しい鍔ぜり合いをしない
腕を上げるなど極端な防御姿勢をする
相手の竹刀を故意に叩き落す
この中で、特に試合中に起こりやすいのが、「場外に出ること」です。
コートと呼ばれる決まった大きさの白線の中で試合を行えば、ついつい引いて自ら場外に出てしまうこともよくあります。
しかし、反則行為は他の場合も含めて2回してしまうと、無条件で一本が相手に入ってしまいます。
例えば、1回場外に出て1回竹刀を落とせば反則2回ということで一本が相手に入るということです。
このようなルールがあるため、意図的に場外に出そうとする残念な人も中には存在します。
技術的なことの反則行為では、鍔ぜり合いが一番多いでしょう。特に初心者や小学校低学年などは反則の前ぶれである「注意勧告」をされるケースがよくあります。
注意されている意味をよくわかっていないことも多いので、しっかりと意識することが必要ですね。
高段者になると、試合運びが上手になり、お互いがなかなか攻めきれない場合などは「タイム」を掛けて面を付け直すなどの作戦を使う人も中にはいます。
しかし、意味なく途中で試合にタイムを掛けると試合が中断するタイミングが相手にとっては良くないことになります。
場合によっては「反則」を取られることもあるため、初心者はこのようなことはしないほうが良いでしょう。
その他、大会の種類によっては、「面紐の長さ」や「竹刀の長さと重さ」(中学生以上は竹刀の検量があります)が規定内でない場合や、年代によっては、変則的な姿勢で防御する(例えば、左拳を高く上げた姿勢での防御)などが反則とされる場合もあり、それは高体連や中体連でも規則で定められています。道具類も要注意ですね。
■他にやってはいけないこと
上記の反則の一覧にもありますが、剣道ならではのルールとして少し変わったところでは「竹刀を落としてはならない」というものがあります。
竹刀というものは剣士にとってとても大切なものであるため、試合中に両手から離れただけで反則をとられてしまいます。
これは竹刀が刀であるということが関係しています。もし仮に真剣勝負で刀を落とすということがあれば、その時点での負けは確定です。
この事から竹刀から両手を離すことは勝負が決まった事にされ反則をとられてしまいます。
次によくあるのが試合中に竹刀に触るという行為で、これも禁止されています。
これは自分の竹刀も相手竹刀も同様で、先に書いたように竹刀は真剣ですので触った瞬間に指を切ってしまいます。
正々堂々やる剣道においてこれも相手に失礼な行為とみなされて反則になってしまいます。
もっと意外なのは、主審も竹刀に触れてはいけないという事です。
よく弦を下向きに構えてしまう人がいますが、このとき主審は口頭や鍔・柄のところで注意をしなくてはならないということが決められています。
それほどまでに竹刀というものは大切なものなのです。
また、剣道は他のスポーツと違い、喜怒哀楽を前面には出さないことが暗黙のルールです。
審判の判定や相手に対して無礼な態度や言動をしないということです。
勝っても負けても「対戦をしてくれる相手がいることへの感謝」を表しているのです。
なので仮に試合に勝ったとしても、試合場内では「ガッツポーズ」をはじめとしたパフォーマンス行動をしてはいけません。
相手に対しての礼を失することになります。興奮して我を忘れてしまうのも注意しましょう。
■最後に
ルールと反則について簡単に押さえましたがいかがでしたでしょうか。
気を付けるべきこと、気になることは先生、先輩方にも聞いてみてもいいと思います。
ですが、規則として定められている以外にも、周りに対しての礼儀も忘れないで試合に臨んでいきたいですね。