矢野選手優勝インタビュー&準々決勝以下詳報|第66回全日本学生剣道選手権大会

優勝・矢野選手 試合リポート
第66回全日本学生剣道選手権大会
2018年7月8日(日)
東京都・日本武道館

星子ばかりに勝たせない。意地を見せた国士舘大の2人

■関東大会1位・2位が全日本でも四強に進むが…

準々決勝 矢野貴之(国士大)×橋本将輝(筑波大)

準々決勝 矢野貴之(国士大)×橋本将輝(筑波大)|橋本がツキに出て竹刀を落とすところに矢野がメンを決め(写真は打突の直前)、一本勝ち

ベスト8には、関東の強豪校である国士舘大、中央大、筑波大から2名ずつ、順天堂大(関東)、鹿屋体大(九州)から1名ずつが駒を進めた。

準々決勝4試合はすべて時間内での決着となる。

準々決勝 丸山大輔(中央大)×本間渉(中央大)

準々決勝 丸山大輔(中央大)×本間渉(中央大)|同門対決は丸山がメンとコテを決めて勝利(写真は丸山の攻め)

中央大からは関東大会で2位となった丸山大輔(3年・高輪高校出身)と本間渉(3年・九州学院高校出身)。この2人が準々決勝で対戦することになり、丸山がメンとコテを決めて二本勝ちを収めた。

本間は関東大会でも準々決勝で中大の染矢椋太郎(4年)と対戦しており、そこでは先輩の染矢に勝って3位入賞を果たしたが、今回は同学年の丸山に敗れた。

国士舘大の2人は4年生で主将の矢野貴之(福大大濠校出身)と、3年生の福居義久(水戸葵陵高校出身)。

福居は健闘した順天堂大の川﨑俊輝(2年・茗溪学園高校出身)を、矢野は筑波大の橋本将輝(2年・帝京第五高校出身)をそれぞれ下した。

筑波大からもう一人ベスト8に進んだのは星子啓太(九州学院高校出身)。

2年生ながら大学生でただ一人世界選手権大会の日本代表に選ばれ、5月の関東大会でも初制覇を果たした。

昨年の本大会では1年生ながら3位となっている。今最も名を知られている学生剣士であろう。

星子は鹿屋体大の内橋響(2年・PL学園高校出身)を下して四強入りを果たした。

ベスト4は関東大会の優勝者の星子、準優勝者の丸山と、ベスト32で星子に敗れている福居、全日本出場者決定戦を経て本大会に出場した矢野という顔ぶれになった。

同じ選手に何度も名をなさしめるものかという意地、そして武の名門国士舘大の代表であるというプライドといった気持ちの面でまさったのだろうか、国士舘大の2人が準決勝を勝ち抜き、同門決勝を実現させた。

とくに矢野が星子を下した一戦は、4年生であり主将である矢野の強い気持ちが感じられた。

■優勝・矢野貴之選手インタビュー

東京都出身。父は全日本学生選手権大会2位の戦績を残した矢野雅之教士八段、祖父は国士舘大学の監督・部長を長く務めた矢野博志範士八段。

国士舘中学から福岡の福大大濠高校に進み、2年生のときに1学年上の梅ケ谷翔選手の活躍で玉竜旗大会優勝。

大学に進み一昨年の関東学生選手権大会で2年生にして優勝を果たす。

――今の気持ちは

とにかくうれしい。ほっとした気持ちでいっぱいです。

――痛めた足の状況は

準決勝の星子選手との試合からずっともう、全身に筋肉痛というか疲労がたまっていて。ふくらはぎだけではなく、いろんなところが攣ったりしていました。

――決勝の決まり技について

福居は同じ学校でいつも一緒にやっている同士なので。決まったところは狙っていたというよりも、手の内は知っているので自然と技が出たという感じです。(一本目は)ひきメンという堂々とした技ではなかったものですから……いい試合ができればいいと思っていたので、一本一本になっても気持ちは変わらず、捨ててやっていきました。

――国士舘のキャプテンとして

国士舘という伝統校の最高学年、キャプテンである以上、情けない試合はできないので……。国士舘は伝統があって、部員数も多くて、みんなの応援もあってこういう結果が出せたと思います。去年はケガもあり、結果が全然出ずに悔しい1年だったので、今年1年しっかりと日本一を目指してやろうということでした。それで今日日本一になれたことはうれしいです。こちらのサポーターは同級生の4年生が支えてくれていたので、心強かったです。2年生のときからずっと試合のお付きをしてくれている杉村選手は4年間選手には入れなかったんですけれど、すごい頑張ってきました。負けてばかりだったので、最後ぐらいはこいつのためにも勝ちたいなと思いました。

――3年生の福居には負けたくないという気持ちは

福居も来年は国士舘の中心選手として頑張ってくれると思うので、ちゃんと勝ちたかったです。そこは負けられない戦いだったです。

――日本代表の星子は意識した?

大学生で唯一日本代表に入って活躍している選手なので、負けたくない、勝つという気持ち、それだけで戦いました。

――矢野家に育ったプレッシャーは

まわりの先生方、先輩方からのプレッシャーだったり、いろいろあるんですけれども、いいこともあれば、悪いこともあるし……。それはもう生まれ持ったものなので、しっかり受け止めてやっているつもりです。プレッシャーに勝ったというよりは、みんなの支えや応援もあり、全員の力が後押ししてくれたのが私自身の結果につながったと思います。

矢野貴之

優勝・矢野貴之(国士舘大4年)

福居義久

2位・福居義久(国士舘大3年)

丸山大輔

3位・丸山大輔(中央大3年)

星子啓太

3位・星子啓太(筑波大2年)

■昨年度優勝者、準優勝者ともにベスト8に届かず敗退

3回戦 星子啓太(筑波大)×寺本凱(日体大)

3回戦 星子啓太(筑波大)×寺本凱(日体大)|星子がスピード感あふれるメンで先制(写真)、さらにこの後メンを決めた

4回戦 星子啓太(筑波大)×平野悠紀(東北大)

4回戦 星子啓太(筑波大)×平野悠紀(東北大)|星子がひきメンで先制(写真)、さらにコテを決めて二本勝ちを収める

注目された星子は昨年本大会ベスト8の実力者・千田海(明治大)と初戦で当たる組み合わせだったが、千田が就職試験のために欠場。

星子は松尾甚太(福岡教育大)、寺本凱(日体大)を二本勝ちで下し、健闘した東北大の平野悠紀を4回戦で下すと、5回戦では中大の染矢を下して順当にベスト8に駒を進めた。

昨年の本大会で星子は3位。その大会の優勝者、2位の選手も揃って本大会に出場していた。

4回戦 牧島凛太郎(鹿屋体大)×内橋響(鹿屋体大)

4回戦 牧島凛太郎(鹿屋体大)×内橋響(鹿屋体大)|同門対決は延長で内橋がメンに跳び込んだ(写真は攻める内橋)

ディフェンディングチャンピオンである牧島凛太郎(鹿屋体大4年・島原高校出身)は当然今大会でも有力な優勝候補だったが、4回戦が鹿屋体大の同門対決となり、後輩の内橋響(2年・PL学園高校出身)にメンを奪われ、連覇の夢は潰えた。

内橋のブロックでは上位進出が予想された中根悠也(流経大4年)が2回戦で佐々木一朗(東北学院大2年)に敗れ、筑波大4年の初田彪は水野義仁(専修大2年)に敗退と波乱が続いた。

水野を駒澤大1年生の児島博文(九州学院高校出身)が破り、5回戦で児島を下した内橋が準々決勝に進んだ。

5回戦 橋本将輝(筑波大)×平野青地(専修大)

5回戦 橋本将輝(筑波大)×平野青地(専修大)|上段の平野が打っていったところに橋本がひきながらメンを決め先制(写真)、平野もコテを返し延長となるが、橋本がコテを決めて勝利

昨年の本大会で2位となった上段の平野青地(専修大)は、佐子裕一郎(一橋大)との上段対決を制するなどして5回戦に進んだが、筑波大の橋本との勝負は一本一本となり、延長で橋本が勝利を決めた。

■1年生3人が健闘し5回戦に進出

5回戦 矢野貴之(国士大)×髙山裕貴(近畿大)

5回戦 矢野貴之(国士大)×髙山裕貴(近畿大)|延長に入り、再開の場面から矢野が踊るような豪快な足さばきでメン(写真)。竹刀越しながら一本とした

前述の児島を含む3人の1年生が5回戦(ベスト16)まで駒を進めた。

優勝した矢野は3年前のインターハイ個人覇者である齋藤拓人(鹿屋体大3年)に3回戦で勝利、5回戦は1年生ながら関西大会を制した髙山裕貴(近畿大・奈良大附属高校出身)との対戦となる。髙山を退けた矢野がベスト8入りを果たした。髙山は初戦の2回戦で山田将也(明治大4年)を、4回戦で古谷祐貴(中央大2年)を破るなど存分に力を発揮した。

5回戦 川﨑俊輝(順天堂大)×宮嵜大(朝日大)

5回戦 川﨑俊輝(順天堂大)×宮嵜大(朝日大)|上段の宮嵜に対し、延長で川﨑がメンを決めた(写真は両者の攻防)

朝日大の1年生で上段をとる宮嵜大(長崎西陵高校出身)も健闘、5回戦に進んだが、順天堂大の川﨑が宮嵜を下してベスト8に駒を進めた。

2位の福居のブロックでは関東大会3位の安井奎祐(早稲田大4年)が3回戦で板井凌太郎(近畿大2年)に敗れ、福居は5回戦で高岩涼馬(環太平洋大2年)を下して準々決勝へ。

5回戦 丸山大輔(中央大)×佐藤祐太(筑波大)

5回戦 丸山大輔(中央大)×佐藤祐太(筑波大)|長くなった試合は佐藤が逆ドウを放ってひいたところを(写真)、丸山が追ってメンを決めた

3位となった丸山のブロックは混戦だった。星子の九州学院高校時代からの先輩である佐藤祐太(筑波大3年)が奮闘、ともに関東大会ベスト8の中西港(国士舘大3年)、岩切勇樹(国武大4年)を下す。丸山は了戒一彰(専修大)、風間颯(平成国際大)らを下して5回戦で佐藤と対戦。一本一本となり長くなった勝負を丸山が制した。

中大の本間は九州大会を制した山崎仁平(鹿屋体大4年)を5回戦で退けて準々決勝に進んだ。

■第65回全日本学生剣道東西対抗試合

西軍九将橋本耕平(天理大)×東軍九将白石慧(新潟大)

西軍九将橋本耕平(天理大)×東軍九将白石慧(新潟大)|白石がメンを決める。これで3勝目をあげた橋本はさらに1人を抜く

西軍副将川上晃史(関西大)×東軍大将矢野貴之

西軍副将川上晃史(関西大)×東軍大将矢野貴之|川上が出ゴテを決め(写真)、西軍に勝利をもたらした

全日本学生東西対抗試合は東西21名ずつの抜き勝負によって争われた。

東軍先鋒の星子啓太(筑波大2年)は快調に二本勝ちを収めるも、2人目で引き分けに終わる。西軍十八将の竹之内歩(環太平洋大3年)が2勝をあげれば、東軍は選手権大会3位の丸山大輔(中央大3年)が2勝をあげて反撃し、序盤から競った展開となった。

西軍は十六将瀬尾洸太朗(愛知大3年)が丸山を破り、十二将嶋村悠(香川大4年)も1勝、東軍は十四将平野青地(専修大4年)、十二将山田将也(明治大4年)、十一将今野雫(東北福祉大3年)が1勝ずつをあげた。

ここで登場した西軍の九将橋本耕平(天理大4年)が両軍最高の働きを見せる。選手権大会では2回戦で平野に敗れている橋本だが、今野から中根悠也(流経大4年)を含む4人を抜いて一気に逆転を果たした。

橋本は安井奎祐(早稲田大4年)と引き分けるが、西軍はさらに六将長友聖弥(日本経済大4年)が1勝。

東軍の主力である三将初田彪(筑波大4年)、副将岩切勇樹(国武大4年)が奮闘するも1勝ずつにとどまり、東軍はついに大将矢野貴之(国士舘大4年)が引き出され、副将川上晃史(関西大4年)と対した。

選手権大会では3回戦で敗退した川上。矢野としては牧島凛太郎(鹿屋体大4年)との大将戦に持ち込みたいところだったが、川上が殊勲の出ゴテを決め選手権優勝者に土をつけるとともに、西軍に勝利をもたらした。

通算成績は東軍47勝、西軍17勝、1引き分けとなった。

【東西対抗優秀選手】

西軍=竹之内歩(環太平洋大)、瀬尾洸太郎(愛知大)、橋本耕平(天理大)、川上晃史(関西大)

東軍=星子啓太(筑波大)、丸山大輔(中央大)、岩切勇樹(国際武道大)

国士舘決戦を主将の矢野貴之が制する!|第66回全日本学生剣道選手権大会

2018.07.08