目指していたのは優勝なので、まだまだだなと思います
3位・安藤翔(北海道・北海道警・28歳)
今年の世界選手権大会では個人戦優勝、団体戦でも大将を務めて優勝という結果を残し、会場では大きな拍手・声援を集めた。本大会では過去3位入賞があるが、昨年まで2年連続で初戦敗退。初優勝が期待されていた今年は序盤から好調さを感じさせたが、優勝した西村英久(熊本)に準決勝で敗れ2度目の3位に終わった。
──試合を終えての率直な感想を聞かせてください。
目指していたのは優勝なので、全然。まだまだだなと思います。
──西村選手との一戦を振り返っていただけますか?
試合の展開も、つくり方もうまい選手なので、自分の得意技である面をどんどん仕掛けていこうと思いました。(西村選手が)小手が得意だということは考えずに勝負を仕掛けていったのですが……、なかなか難しいなというのは感じました。
──初太刀から気迫にあふれてました。
そうですね。自分としても狙いにはいきましたが、一本にならなかったということは、どこか足りない部分があるのだと思います。そこを今後は課題にしてやっていきたいなと思います。
──世界大会は安藤選手にとってどのような経験でしたか?
世界大会で結果を残せたことには満足できているのですが、やはり、ずっと目指してきたのは全日本選手権なので。去年、一昨年と結果がなかなか残せず、今年に懸けていましたので悔しいですね。
少しずつではあるが、レベルは上がってきていると思う
3位・竹下洋平(大分・大分県警・30歳)
6回目の出場。平成27年に3位入賞、その前年もベスト8という結果を残している実力者。今年の世界選手権大会メンバーとしても活躍した。今年は豪快な面技を武器に快進撃、3年ぶりに準決勝進出を果たすが、ベテラン内村良一(熊本)からメンを先取するも逆転負けを喫した。
──内村選手との準決勝を振り返って
最初に先取したときに、守ろうか攻めようか少し迷ったんですが、やはり守ってはダメだと思って攻めにいきました。その結果、しっかりと自分から打ちにいったところを打たれたので、そこには後悔はありません。そのあと、1─1の勝負になったときも、取りにいかなければいけないという気持ちがあって、打ちにいったところを返して打たれていますから、悔いはありません。打ち切って、その上で相手の技前が上だったから打たれたと思っています。
──久々のベスト4進出です。勝ち上がれた理由は?
9月の世界大会に向けて、毎月強化合宿に参加させていただきました。そこでいろいろな剣士と試合を重ねるなかで、自分としても技能が上がってきたと思います。調子の良い状態で今回の全日本選手権に臨めたことが、結果につながったのだと思います。
──以前、この舞台で内村選手に勝利した経験もありますが?
あのときも、やはり守ったり逃げたりしてはいけないと思って攻めた結果、勝つことができました。今回も同じ気持ちで戦いましたが、相手の技も経験値も全然違ったので、負けたことは当然なのかなと思います。また努力していこうと思います。
──準々決勝は前田選手に逆転勝ちでした。
結果としては勝てましたが、最後は打たれてもおかしくはなかったと思います。お互いに捨て切った勝負をしていたので、そのなかでたまたま私が打ち勝てたのではないかと。
──攻めて捨てきることが重要?
私の剣風が攻めて取るタイプなので、そこを重視していくことが大事なのかなと思っています。稽古でも、自分の個性を活かすことをまず第一に考えてきました。日本代表の強化合宿でも同じように長所を伸ばしながら、苦手な部分は改善していくというスタンスで取り組んでいました。
──ここ数年で自身のレベルアップは実感できている?
そうですね、少しずつではありますが、レベルは上がってきていると思います。
──悔しさよりも充実感の方が上回っていそうですが?
いえ、悔しいのは悔しいです。悔しいですけどまたこの気持ちを糧にして、頑張っていこうと思います。
──日本代表の仲間と内村選手とでは、敗戦の気持ちも少し違いますか?
いえ、今回試合に出場されている方で弱い選手はいませんので、誰に勝って誰に負けた、といったような気持ちはまったくないです。どの相手とやっても真剣に勝負していきたいと考えていました。
──今大会にはどのような気持ちを持って臨まれましたか?
硬くならずに、先を見ずに、一戦一戦のびのびと試合できたらな、という気持ちで臨んでいました。今まではガチガチになって、良いところで打つべきか迷ってそのチャンスを逃してしまうこともありましたので、とにかく出し切ろうという気持ちでした。
──優勝も視野に入ってきた、充実の試合ぶりだったと思います。
当然、試合に出るからには、優勝したいという気持ちで臨んでいます。今回の結果は、まだ自分に足りないところがあるからこその敗戦だと思うので、来年以降また優勝を目指して頑張りたいと思います。
──大分という場所柄、なかなか充実した稽古環境を求めづらい部分もあると思いますが?
大きな都府県であればもっと稽古に時間を割くことができると思うのですが、我々はそうはいきません。限られた時間のなかで、同じかそれ以上を求めて効率良く稽古を積むことを心がけています。仕事以外の自由な時間を使って研究をしたり、素振りをすることもあります。私は今の大分県警の環境が自分に合っているので、成長できているのだと思います。
──大分県勢からの期待もさらに高まると思いますが。
いろいろと声をかけていただくこともあると思うのですが、でも、自分のペースでいこうと思っています。それが一番の近道だと思います。
もう少し工夫、研究をしていれば勝てたと思います
ベスト8・前田康喜(大阪・大阪府警・25歳)
昨年、本大会初出場でベスト8に駒を進め、今年の世界選手権大会では団体戦の全試合に出場した。若手有望株から日本一を狙う強豪へと一気に駆け上った印象がある。2年連続で準々決勝に進んだが、竹下洋平(大分)に逆転負けを喫し初の入賞は逃した。
──竹下選手との準々決勝を振り返っていただけますか?
去年は準々決勝で先に一本を取って取り返されて負けまして、今年もまったく同じようなかたちでした。今年は去年の経験があったので、一本取っても攻め続けようと思っていたのですが、起こりを打とうと考えていたことが裏目に出たのか、そこを打たれてしまいました。二本目は1-1で勝負だと思っていたので、面を狙っていました。面に行こうとする起こりを打たれてしまったのですが、勝負にいって打たれたので仕方ないと思います。
──勝てる感覚はあった?
今日は動きがとても良く、1回戦を終えたときから、優勝も狙えるのではないかと意識していました。最後の試合も先に一本取ることができたので、もう少し工夫、研究をしていれば勝てたと思いますね。
──勝負を分けたのは気持ちの部分?
そうですね……、逃げようとは思っていなかったんですけども、下がってから打とうとか思ってしまった部分もあったと思うので、まだそこが自分の弱さかなと思います。また一年間精進して、一本取った後の試合運びを研究していきたいと思います。
──竹下選手とは日本代表としてかなり稽古を重ねられていると思いますが、その面でいろんな考えが出てしまったというのもある?
そうですね、竹下選手に二本目は小手を打とうと思っていて、思いつきより決めて行った方が、私も竹下選手のことをよく知っているし、竹下選手も私のことをよく知っているので。自分は絶対に面を警戒されていると思っていたので、そこにくるところを押さえようと思った結果がこれでしたね。少し狙いすぎていたのかなと思います。
──一本取り返された後に、竹下選手の良い技がいくつかありましたが、やはり取り返された動揺があった?
一瞬、去年の敗退が頭によみがえりました。これは負けられないと自分を奮い立たせたのですが、あのままでは負けるとも感じていたので、自分から技を出していって、気持ちを変えようと考えていました。
──世界大会から重要な大会が目白押しで、疲れもあったのでしょうか?
いえ、そこは自分たちもこれが本業なので。安藤選手も西村選手も竹下選手も、全員一緒の立場ですから。そこで自分だけ疲れたとは言っていらないので、自分で身体のケアも心がけていました。
──世界大会メンバーの活躍が目立つ大会になりました。
燃えましたね。みんなで上がろうと声もかけあっていましたし。気合は入っていました。
──結果的には昨年と同じベスト8ということになりましたが、壁を破るために、今考えられることはありますか?
準々決勝から試合時間が10分になるということに、まだ慣れていないと感じました。守りというよりも、攻撃、攻撃の剣風でやっているのですが、そのあたりの攻守のバランスも考えながら、これからはやっていこうと思います。
──2年連続のベスト8は成長できている感覚がある?
去年は負けても、「でもよかったな」という思いがあったのですが、今年は、まだいけたという悔しさしかありません。
今の剣道を崩すのは難しいが、取れる選手になれればと
ベスト8・國友鍊太朗(福岡・福岡県警・28歳)
本大会は3年連続4回目の出場。過去3回のうち1回目と2回目が2位と抜群の安定感を見せる。昨年は2回戦で敗退したが、今回は持ち味を発揮してベスト8へ。しかし内村に敗れ優勝への道はここで閉ざされた。
──大会を振り返ってみて。
なかなか自分のペースで試合が進められず、苦しみました。なんとか勝ち上がってきましたが、最後はやはり引き出されたところを打たれてしまいました。
──研究されている感じはありましたか?
本当に強ければどんな相手でも自分のペースで試合を運ぶことができるので、自分の力がなかったのかなと思いますね。
──準々決勝は内村選手との対戦でしたが、プレッシャーは感じましたか?
二本ぐらい危ない小手があったので、そこになんとか面を合わせたり、小手に対しての技を打とうということはいろいろと試合のなかで考えていたのですが、逆に引き出されて、崩されてしまったのかなと。力がなかったと思っています。
──今後の課題が見えてきた?
(一本を)取れる選手に。自分の今の剣道を崩すのは難しいことですが、取れる選手になれればと思います。一本取られてからも、最後に取り切れる選手にならなければ優勝はないのなかと思いました。もっと攻めて、崩して、という選手になりたいですね。
──日本代表への復帰も?
そうですね。私自身も3年後、世界大会に出場できるように頑張りたいと思います。
また次につながる試合ができたのではないかな
ベスト8・勝見洋介(神奈川・神奈川県警・32歳)
一昨年に本大会初優勝、その前年が2位だったが、昨年は2回戦で予想外の敗退を喫した。32歳とベテランの域に入ってきたが、今年の世界選手権大会にも出場し本大会でも健在ぶりを見せた。しかし安藤には大技を二本奪われ敗退した。
──安藤翔選手との対戦を振り返って下さい。
安藤選手は力のある選手なので、10分という試合時間で、勝負どころはどこにあるのか考えながら進めていたんですけども、もう少し積極的に、最初から仕掛けていけばよかったかなという反省点はあります。ただ自分としては、世界チャンピオンの安藤選手と、この1コートで試合ができたということは、悔しい面もありますがうれしい気持ちもあります。また次につながる試合ができたのではないかなと思っています。
──今年は世界大会もありましたが、あの大会を経てご自身のなかで変化のようなものはありましたか?
苦しい大会だったので、精神的にも少しは強くなれたのかなと思います。全日本選手権を目指すにあたっては、調子も良かったので、警察大会は最後に残念ながら負けてしまったのですが、良い流れで臨めていたとは思います。
──今大会はどのような気持ちで戦っていましたか?
今回は先のことを考えずに、緒戦に集中していこうと考えていたので。あまり、林田選手がいたりとか安藤選手がいたりというのは考えていませんでした。自分のスタイルとしても、1回戦の相手に集中するという意識をつねに持っているので、それができたときは、どの大会でも上位に進むことができていると思いますし、いつも通り緒戦に集中しようという感じで今回も臨めたと思います。
──安藤選手をはじめとして、自分より若い選手が追い上げてきていますが、そのあたりはどう感じていますか?
もちろん、30歳を超えてもずっと元気に活躍し続けている先輩方も数多くいますし、自分たちはその間の年代になるのですが、年下の選手たちに早い段階で負けてしまうのではなく、ちょっとでも上のプライドを見せていかなければいけないなということは、同年代の選手や先輩方とも話しています。でも、やはり下の世代の力は認めないといけないぐらい、強くなってきていると感じています。
──全日本選手権は勝見選手にとってどのような舞台ですか?
何回出ても緒戦は緊張しますし、また来年、もう一回優勝を目指して。あと何年かは現役ができると思うので。
「絶対またここに帰ってくる」ことは強く意識してきた
ベスト8・松﨑亮介(宮崎・宮崎県警・29歳)
中央大学から宮崎県警に進んだ29歳が、ベスト8の中では唯一の伏兵的存在となった。3年前に本大会初出場を果たしたときは1回戦で敗退している。嶌津(千葉)、岩切(大阪)ら同年代の警察官、そして35歳で初出場の平野(埼玉)を破っての準々決勝進出だった。しかし同じ九州勢の西村の前に敗退した。
──大会を振り返って下さい。
前回出場したときは1回戦負けだったので、もう一つ勝ちたかったのですが、そのときからはだいぶ進歩したのではないかなと思います。前回の経験があったからこそ、「絶対またここに帰ってくる」ということは強く意識してきました。
──準々決勝の相手西村選手はどんなイメージがありますか?
最後に打たれた小手がうまいということは分かっていたのですが、分かっていても打たれてしまうというところが西村選手のすごさだと思います。そこが自分の甘さでもありますが、やはり小手が絶妙でしたね。
──小手技に対する対策も見られたと思います。
狙っている部分はあったのですが、最後は間合をつかまれて打たれてしまったのかなという感じがします。
──年齢を重ねて何か変わってきたことは?
宮崎県警にも元気の良い、若くて強い後輩がたくさんいますので、その後輩達に体力面でも負けないように頑張っています。
──まだまだチャレンジしていきたい?
もちろんあります。また来年、ここで試合ができるように、本当に予選も厳しいんですが、必ず勝ってさらに上を目指したいと思います。