2018年8月9日(木)〜12日(日)
三重県伊勢市・三重県営サンアリーナ
写真=窪田正仁・鈴木智也
日本一への意欲の高さが、ほんのわずかの差を生んだ
九州学院が2年ぶりに夏の王座に返り咲いた平成30年度インターハイ剣道大会男子団体、ベスト16以上が激突した最終日の戦いを詳しくお伝えする。
■優勝・九州学院(熊本)|玉竜旗を逃し不安材料もある中、後ろ2枚は盤石だった
九州学院は予選リーグで、昨年のこの大会で敗れた相手である水戸葵陵(茨城)と同居という厳しい組み合わせとなるも、完勝してトーナメントに進んできた。
敦賀とのトーナメント1回戦では、先鋒福田、次鋒岩間がともに二本勝ちで大きくリード、中堅以降は勝ち星をあげられなかったが無難に乗り切った。
準々決勝は早くも玉竜旗大会優勝の島原(長崎)との対戦。玉竜旗の決勝と同じカードである。中堅戦で池内が逆転勝ちすると、副将小川が一気に決着をつけた。
最大のピンチを迎えたのは準決勝。次鋒門間、中堅池内と連敗し王手をかけられる。
しかし副将小川はメンを奪ったあと、対する山本が竹刀を落として2回目の反則となり二本目を奪う。運も見方につけた小川が一気に勝利をたぐり寄せた。重黒木が一本勝ちでもいいという状況になった時点で九州学院に流れが大きく傾いた。
準々決勝、準決勝は小川の勝負強さが光った。決勝はその小川の試合で追いつかれる嫌な展開だったが、重黒木が決して相性のよくない松澤(育英)から決勝打を奪った。
何度も優勝を果たしている九州学院と初優勝を狙った育英。ここぞという場面の勝負強さは目に見えない伝統の力なのかもしれない。
準決勝 九州学院(熊本)2(4)─2(2)奈良大附属(奈良)
難敵島原を下した後でピンチが訪れた。先鋒福田が引き分けに終わると、この試合から出場した門間が舘井に延長でメンを奪われ敗退、続く池内もコテを奪われて破れ、一気に緊張感が高まる。
しかし、小川はメンを先制すると山本の2回目の二本勝ち。一本勝ちでも逆転できる状況となった重黒木がメンを先制すると、さらに取り返しにきた根本の出ばなにコテを決め、後ろの2人で逆転勝利を完成させた。
今年の玉竜旗で2位に終わったあと、選手たちは「優勝でなければ意味がない」というような表情をしていた。常に勝つ、日本一になるという意識が他のどのチームよりも高いのがこのチームの強さなのだろう。
準々決勝 九州学院(熊本)3(4)─0(1)島原(長崎)
優勝の行方を左右する大一番。先鋒戦、次鋒戦はともに譲らず引き分けとなった。すると中堅池内が若杉にコテを先取される。
しかし島原が優位に立ったのは一瞬だった。池内がドウを決め追いつくと、さらにメンを決めて逆転勝ちを収める。
副将戦は延長となり時間も残り少なくなって、小川はそのままで重黒木につなぐかと思われたが、一瞬の隙をとらえメンを奪う。
あっけないほど鮮やかに小川が試合を決めてみせた。
トーナメント1回戦 九州学院(熊本)2(5)─1(2)敦賀(福井)
予選リーグでも2勝していた福田が二本勝ちを収めると、予選で2分の岩間も二本勝ちで続く。
一気に調子をあげてきたと思われた九州学院だったが、中堅以降は勝ち星なく、小川がメンを先取するも逆転されて星を落とす。
大将戦にもつれるも重黒木が引き分けで終えた。国体を控えた敦賀が力のあるチームだったこともあるが、九州学院に相手を圧倒するほどの力はまだ感じられなかった。
■2位・育英(兵庫)|強かったし成長したが、優勝には何かが足りなかった
予選リーグでは長野日大(長野)には5─0で完勝したが、大社(島根)とは大将戦までもつれて松澤の勝利で2─1とした。
トーナメントに入ると、玉竜旗大会でもそうだったが、準決勝までは九州学院以上に万全の勝ち上がりを見せた。
決勝トーナメントはすべて九州勢との対戦となった。難しい相手と思われた鹿児島商業(鹿児島)とのトーナメント1回戦は次鋒戦でリードを奪われるが、中堅榊原、副将福岡、大将松澤が連勝し逆転。
明豊(大分)との準々決勝は次鋒阿部から榊原、福岡と連勝で3─0、東福岡(福岡)との準決勝は榊原以外が勝利を収め4─0と徐々に調子をあげて決勝に進んだ。
決勝は福岡が見事なひきメンで追いつき、一気に流れを引き寄せたかに見えたが、最後は大黒柱の松澤が重黒木との勝負で敗れた。
本大会では4年ぶり2回目の2位、3位は過去4回。初優勝にはわずかに届かなかった。
(※育英については連載「飯田良平監督のラストシーズン」でレポートします。近日公開予定)
準決勝 育英(兵庫)4(5)─0(0)東福岡(福岡)
育英は大津が相手の反則による一本勝ちを収める。運を味方につけた育英は次鋒阿部が3分弱でメン二本を奪い、一気に主導権を握る。
中堅戦は引き分けるも副将福岡がメンを決め、勝負あり。東福岡に反撃の糸口を与えなかった育英の充実ぶりが際立った。育英は大将松澤も勝って差を広げた。
準々決勝 育英(兵庫)3(3)─0(0)明豊(大分)
春の全国選抜大会でも対戦し、代表戦の末育英が勝っている。育英は次鋒阿部がメンを決めて先行すると、中堅榊原もメンの一本勝ちで続く。
副将戦は延長に入るが育英の福岡がメンを奪い、準決勝同様、育英は明豊に反撃のきっかけさえ与えずに、一気に試合を決めた。
トーナメント1回戦 育英(兵庫)3(3)─1(1)鹿児島商業(鹿児島)
この試合は育英が相手にリードを許した。鹿児島商業の次鋒肱岡がメンを決めて総理を収める。
しかし育英は動揺も感じさせず、中堅榊原、副将福岡が、ともに自信を感じさせるような迷いのないメンで勝利をあげ逆転する。大将松澤も出ゴテを決め突き放した。
■3位・奈良大附属(奈良)|伝統チームが、九州学院を苦しめて初の3位入賞
前校名の正強時代から数えて37回目の出場(男子)。正強時代に2位という戦績を2回残している(昭和59年、平成元年)が、奈良大附属としては初の入賞を果たした。
今年は春の全国選抜大会でも初の3位入賞を果たしており、実り多いシーズンとなった。
龍谷富山(富山)とのトーナメント1回戦は先行されながら中堅林と大将根本の勝利で逆転。
古豪新田(愛媛)との準々決勝は林が逆転勝ちを収め、副将山本が続いた。中堅林はリーグ戦を含め九州学院との準決勝まで全勝で終えた。
その林らの勝利で九州学院を2─0まで追い詰めた準決勝は大いに会場を沸かせた。
準々決勝 奈良大附属(奈良)2(4)─1(3)新田(愛媛)
久しぶりの上位進出を果たした新田(愛媛)との伝統校同士の対戦となった。
先鋒戦、次鋒戦は試合が動かず、中堅戦で新田の片岡が大きなモーションで逆ドウを先取する。林は片岡のコテが外れたところにメンを決め追いつくと、延長に入って初太刀でメンを決めて逆転勝ち。
副将山本は試合早々にメンに跳び込んで先制し、さらにほどなくもう一本メンを奪って、一気に試合を決めた。
トーナメント1回戦 奈良大附属(奈良)2(2)─1(1)龍谷富山(富山)
龍谷(佐賀)、仙台育英(宮城)という強豪に勝ってトーナメントに進んだ龍谷富山。この試合でも次鋒金﨑がメンの一本勝ちでリードを奪う。
奈良大附属は中堅林がすかさずメンを決めて追いついた。同点のまま迎えた大将戦は、奈良大附属の根本がメンを決め、接戦をものにした。
■3位・東福岡(福岡)|ベスト4の壁を乗り越えて初の入賞。勝ち方を知った百戦錬磨の戦いぶり
初めてのインターハイ入賞を果たした。強豪ひしめく福岡にあってインターハイ出場は過去3回、そのうちの2回はベスト8まで駒を進めており、初めて壁を突破したことになる。今年の主力メンバーのうち4人が昨年度からレギュラーとして出場しており、豊富な経験を活かして勝ち上がった。
予選リーグでは金沢桜丘(石川)とは大将戦までもつれるも本数勝ち、龍谷大平安(京都)には5─0と完勝した。
トーナメント1回戦は星城(愛知)と接戦となるも2─1で勝利。地元三重(三重)との準決勝も副将戦を終えて同点という好勝負だったが、大将中山が地力を見せ二本勝ちを収めた。
同様に昨年からのレギュラーが主力の育英とは練習試合の機会も多いというが、予想外の大差で敗退。
しかしそこまでは、福岡のチームらしい、勝ち方を知っている戦いぶりだった。
準々決勝 東福岡(福岡)3(4)─2(2)三重
三重が先鋒中島の勝利で先行すると、東福岡は次鋒菊地、中堅樋口がともに一本勝ちで逆転。すると三重の副将宇根﨑が勝って追いつくというがっぷり四つの展開となった。
熊澤と中山の大将戦は、中山がコテとメンを奪い、地元チームとしての気概を見せて健闘した三重を振り切った。
トーナメント1回戦 東福岡(福岡) 2(3)─1(1)星城(愛知)
全国の壁に跳ね返されなかなか上位に進めていない星城が、決勝トーナメントに駒を進めてきた。
東福岡は次鋒菊地が二本勝ちでリードすると、星城の中堅大橋もメンの一本勝ちで反撃する。
すかさず東福岡は副将原が一本勝ちで突き放した。大将戦は引き分けとなり、東福岡が危なげなく勝利を手にした。
■決勝トーナメント1回戦、最終日まで望みをつないだ各校の戦い
島原(長崎)2(2)─1(1)磐田東(静岡)
上位進出が予想された両チームがトーナメント1回戦で激突した。
磐田東の次鋒井尻が、玉竜旗優勝の立役者である前田からメン二本を奪うという意外な展開となる。島原はすぐに若杉が一本勝ちで反撃する。
そのまま迎えた大将戦、ともに個人戦でベスト8に残り、この試合の前に行なわれた準々決勝で黒川(島原)は敗れ、野瀬は勝って準決勝進出と明暗分かれている。
その悔しさもぶつけた黒川がドウを決めて逆転勝利をもたらした。
新田(愛媛)3(4)─0(0)甲府商業(山梨)
3チーム1勝1敗のもつれた予選リーグを抜け出した甲府商業。一方の新田も1勝1分で抜けている。
新田は先鋒矢野が延長でコテを奪って勝つと、次鋒池見が2分かからずに二本勝ち、さらに中堅片岡も延長でコテを決め、3連勝で一気に勝利を手中にした。
三重(三重)3(4)─1(2)秋田商業(秋田)
地元三重は予選リーグで2勝してトーナメント進出を決めた。先鋒中島が反則による一本を含め二本を失った。
次鋒戦も引き分けとなるが、中堅菱田の二本勝ちで息を吹き返し、副将宇根﨑も一本勝ちで続く。大将熊澤も延長でメンを決めて秋田商業を突き放した。
明豊(大分)2(4)─0(1)高千穂(宮崎)
昨年の優勝チーム高千穂は1勝1分で予選リーグを抜けた。一方の明豊は1年生のときから試合に出てきたメンバーの集大成となる大会。
明豊は次鋒坂井がメンの一本勝ち。中堅山下もメンを先取する。ここは新森がメンを取り返し引き分けとするが、明豊は主導権を高千穂に引き渡すことなく、副将武蔵がメン二本を決めて高千穂を退けた。