試合の前に考えるべきこととは
試合に臨む前に緊張しないように、冷静さを常に持ち続けるように心を落ち着けておく必要があります。
しかし、競技である以上、一番に思うことは『勝ちたい』この一点に尽きます。
そのためにはどんな心構えがいるのでしょうか。試合から得られることも含めて考えていきたいと思います。
■試合に勝つために知っておきたいこと
試合はまず、第一に対人競技である点に着目します。
相手のことを知っておく
相手の苦手な部分や癖を知っておくことで有利に進めたりもできます。
そのためには事前に情報を掴み、冷静な分析を加えている必要があります。これは技術面を学んだり、トレーニングを積んで体を鍛えるよりも実は重要なことだと言えます。
体格的にあまり恵まれていない選手でも強い選手を倒せるとすれば、こういうことを実践することが大切です。
「待つ」のではなく「備える」ことを考える
相手の打ち込みを待っているだけではいけません。確かに待つことも大切ですが、それ以上に備えることが重要です。
試合では「相手が何かしらの技を仕掛けてきた瞬間が最も攻撃しやすい」と言われています。技を出す瞬間というのは、どのような達人であっても必ず隙が現れています。
そのような瞬間を逃さずに攻めていくことができるようになれば、勝てる可能性が高まります。
そのためには、ただ相手の攻めを待っているだけでは意味がありません。
いくら達人に隙ができたとしても、そのまま待っているだけでは大事な隙を突くことは難しいでしょう。
せっかくの機会も相手のペースにはまってしまい、いいように攻撃されてしまいます。
試合が決まるタイミングはどちらかが攻めた時に、そのまま打ち込みが決まるか、逆にカウンターを食らってしまうかですが、基本的にはカウンターが有利と言えます。
しかし、相手の攻撃を待っているだけでは初動がどうしても遅くなってしまうのです。機会を活かすためにも相手の攻めをただ待つだけでなく、備えることに力を入れましょう。
足を動かしながら、常に相手の攻撃を意識していつでも迎撃できるように準備することが重要です。常に構えておき、いつ如何なる瞬間でも攻撃できるように準備しておきましょう。
竹刀のさばき方
竹刀の振り方にも注意が必要です。初心者の中には竹刀を振りかぶる人がいますが、これはおすすめできません。
振りかぶることは、相手に強烈な一撃を放つために必要かもしれませんが、実はこれはNG行為に当たります。
竹刀を大きく振りかぶると全体の動きが鈍くなり、その分スピードも落ちてしまいます。
竹刀は扱う際は大きく振りかぶるのではなく、直線を意識して振ることが大切です。竹刀の先端で直線を描くように、そのまま真っ直ぐに下ろしましょう。
そうすれば竹刀の移動距離が縮まり、相手を攻撃しやすくなります。
無心の境地へ
これまで試合を経験し、個人的に感じたことですが…「いかに相手を負かすか」ということを考えすぎると剣さばきが単調になってしまい、一本を取る事もやっとのことでした。
逆に相手に一本も取らせてなるものかと守りにも力が入りすぎ、構えがちに…。
しかし、そのような中で試合をする内に緊迫感を超えて、マラソン競技などにある「ランナーズハイ」に類似したものが、自分自身の心にありました。
今思い返せば、それは「無心」と言われるものだと思います。
緊迫感の中で自分自身の冷静さを保つという複雑な心の在り方に対し、途切れることなく集中力を高めている状態こそが「無心」へと繋がるのだと思います。
■試合に負けて学べること
これまで培ってきた自分の剣道を発揮する場所のひとつが試合です。
さらに自分自身の実力を、試合を通した事実として如何にして知り、自分の弱いところ、そして強いところを客観的に知ることで、今後の稽古に活かしていく心構えが見えてきます。
これが一番の試合の成果ですね。そして、奮闘及ばず負けてしまったとしても、試合から学べることは様々あります。
剣道という競技は心・技・体すべてを勝つために必要とし、負けたときはどれかが相手よりも劣っていたと言えます。
たとえば自分の攻め方が誤っていた場合、相手の打ち込みを待ち、合わせに行って結局負けたらタイミングや駆け引きにミスがあったということが学べます。
駆け引きの点で負けた、すなわち心技体の心の部分で自分の弱さが露呈したということになります。
また技の部分で言えば、いくら決まったと思える一打が打ち込めたと思っても審判が一本をとってくれないことがあります。
そのような際は、何が原因で一本を取ってもらえなかったのか疑問に思うことが多々あります。
試合の後に周りに聞いてみたり、自分で試合を振り返ることにより原因を明らかにして、次回同じようなことがないように学べることが可能です。
最後に体の部分ですが、剣道とは相手の一瞬の隙をつき相手に打ち込むわけですが、そのためには、強靭な足腰が必要でありそれを可能にするトレーニングが必要なだけでなく、俊敏性も必要となります。
それらを準備して試合にのぞんだとしても、もちろん負けることもあります。
そのような時は、スピードが足りなかったとか、打ち込みの強さが甘かったといった点を反省し、今後の戦いに生かすことが可能となります。
■負けても勝っても嬉しいものもあります
結果はどうあれ、周りの評価をしてもらえると嬉しいものです。そちらもご紹介します
この言葉は私が大会で一本を決めた後に顧問の先生に言われた一言なのですが、相手の動きを読んだ上で、フェイントを使い罠を張った攻めをしたのがピタリと合い一本に繋がった際の話です。
剣道はスポーツでありながら武道でもあり、美しさも意識した戦いを選手たちは心掛けている場合が多いです。
個人的な意見ではありますが、ゴリ押しで力で勝った試合よりも、作戦や技術で勝った試合の方が印象にも残っています。
そのため、自分の試合の美しさを褒め称える言葉は特に嬉しいフレーズです。
「いい粘りだった」
剣道の試合時間は基本的に5分間の三本勝負になります。
例外として小学生は2分間、中学生は3分間、高校生は4分間という場合もありますが、いずれにせよ三本勝負であり、その試合の間重い防具を身にまとい戦い続けなくてはならない競技ですので選手は試合がもつれ込むと最後はヘトヘトになります。
最初に一本先取されてしまい後がない状態で逆転で二本取って勝てた試合や、勝敗がつかずに3分間の延長戦にまでもつれこみ何とか勝利できた時などにかけられたことがある言葉なのですが、本人が一番ヒヤヒヤした状態ですから、諦めずに勝利してその言葉をかけられると嬉しいフレーズだと思います。
■最後に
試合前・試合後、また勝ち負けの結果に関わらず言えるのは『謙虚でいること』です。
勝ったとしても決して驕らず、次の試合に向けて自分の剣道をできるよう努めることが大事ですし、負けた時は何が悪かったかを反省して次に同じような負け方をしないことも大事です。
常に相手への敬意を忘れずに戦うことは礼節を重んじる意味を持つだけでなく、試合の最中であっても心を乱さずにいることで、戦況を冷静に見つめながら落ち着いた戦いができるという側面もあるのだと考えられます。