2018年7月7日(土)
東京都・日本武道館
奮闘した日本代表を超えていったライバルたち
■インターハイ団体、個人両部門で敗れた相手との決勝
ベスト8以上の試合では2年前、3年前のインターハイの因縁を感じさせる対戦が多く見られた。
準々決勝、藤﨑薫子(明治大3年)×竹中美帆(筑波大3年)の一戦は、島原高校時代のチームメイト同士。
藤﨑が大将を務めたチームは、インターハイ準々決勝で麗澤瑞浪高校との代表戦となり、藤﨑が今大会2位の佐藤みのり(法政大3年)に敗れて敗退した。
しかし個人戦では敗れた仲間の分までという思いで奮闘した竹中が頂点に立っている。
そして今大会では藤﨑が輝きを見せた。竹中の出ばなにコテを決めて勝利を収める。
そのインターハイで最も輝いたのが佐藤(麗澤瑞浪高校出身)。2年連続団体優勝・2年連続個人3位という実績を残している。
この日、横澤めい(大体大4年)との準々決勝は、メン二本を奪って快勝した。
小松加奈(明治大2年・東奥義塾高校出身)と桑野こゆき(日体大2年・阿蘇中央高校出身)はともに2年間インターハイを沸かせた選手。
2年前のインターハイでは小松が個人優勝、桑野は団体3位、3年前は2年生ながらともに大将をつとめ桑野が個人3位、小松が団体3位。
この日準々決勝で両者が対戦、延長に入って桑野が思い切りよくメンに跳び込んで勝利を収めた。
世界選手権の女子日本代表に選ばれた大学生選手は3名で、うち竹中と小松がベスト8まで勝ち残ったが、ともに準々決勝で姿を消した。
インターハイ団体優勝チームの大将をつとめた村田桃子(鹿屋体育大2年・中村学園女子高校出身)は、準々決勝で井手璃華子(国士大4年)にメンを奪われて敗退した。
準決勝、藤﨑は井手を巧みなメンで下す。佐藤と桑野の試合はひき技の打ち合いでなかなか旗が上がらず「水入り」をはさんで長くなったが、ようやく佐藤のひきドウに旗が上がった。
3年前のインターハイでは、藤﨑は団体戦のみならず個人戦でも4回戦で佐藤に敗れている。
藤﨑にとっては、佐藤に二倍味わわされた雪辱を、3年後の本大会で見事に果たすという結果となった。
■優勝・藤﨑薫子選手インタビュー
熊本県出身。島原高校から明治大学に進む。
1年のときに全日本女子学生剣道優勝大会の優勝メンバーとなっている。
本大会は1、2年の時は関東大会で敗れ、今回が初出場。
――決勝の相手・佐藤について
試合や練習試合で何度もやってきた選手だったので、思い切って、隙があったらしっかり技を出していこうと思っていました。勝ちたいという思いは強かったです。ひきメンとかがうまくて、わかっていてもいつも打たれるので、つばぜり合いはしっかり集中して、離れ際まで集中していこうと思っていました。(決まった場面は)あんまり覚えてないですけど、優勝につながったので良かったです。お互い知っているので……でもやっていて楽しかったです。
――すべての試合を振り返って
いつも自分はバンバン打っていってしまって、応じ技などを打たれてしまうので、行くときは行くでメリハリをつけていこうと思っていました。でも1回戦から決勝まで集中力は切れなかったので良かったと思います。
――粘り強い選手という印象があるが
結果的に勝ちにつながれば勝ちは勝ちなので、我慢できるところは我慢して「行っちゃえー」というのは抑えています。団体戦はまた戦い方が違いますが。そうですね……隙はしっかり見逃さず技を出そうと思っていました。
――日本代表選手に対する意地は
そうですね、勝ちたいっていうのはありました。意地はありました。
――1年時の全日本女子学生団体優勝について
全日本で優勝したんですけど、4年生の先輩に助けられての優勝だったので。1年生のときは、先輩がいるから引き分けてもまあ大丈夫かみたいな感じだったんですけれど、今3年になって、チームを引っ張っていける選手になりたい、自分が勝ってチームを勝たせるようにしたいって、意識が変わりました。1年生のときの4年生の先輩たち、大亀(杏)先輩や三好(絢女)先輩がめちゃめちゃカッコよくて、その先輩たちを超えていく明治の選手になりたいなと思っていたので、今日は本当に優勝できて良かったです。
――日本一は個人では初めてっだが
……感動ですね。負けても頑張って続けてきてよかったと思います。小学生のときからずっと日本一になりたいって思ってたんですけど、高校生のときは個人戦と団体戦が一緒の日にあったりするので、どうしても団体戦が先になっちゃって……大学はやっぱり個人と団体別で、個人戦にしっかり集中できる環境なので。
――秋の団体戦に向けて
また一からしっかり気持ちを入れ直して、関東の予選を上がるのは厳しいので、しっかり団体でも一本取れる、そんな選手になりたいです。
■日本代表の松本(鹿屋体大)が初戦で敗退
大学生で世界選手権の女子日本代表に選ばれたのはベスト8入りした竹中、小松に加え、松本智香(鹿屋体大4年)の計3名。3名揃って本大会に出場を果たした。
昨年の本大会2位の松本は九州大会を制覇。竹中、小松は昨年の本大会での上位進出はならなかったが、関東大会では竹中が昨年3位、今年2位、小松は2年連続3位と、ともに安定した戦績を残している。
本大会では松本がいきなりつまづいた。初戦となった2回戦で北條李華(法政大2年・桐蔭学園高校出身)と対戦、北條が時間内にメンを奪うと松本は一本を取り返すことができず、試合に乗り切れないまま姿を消した。
竹中は初戦の2回戦で別府大の小松悠香(4年・大分鶴崎高校出身)と対戦。上段の小松は昨年の全日本女子選手権で3回戦まで進んでいる。
小さな体で堂々と大きく上段に構える小松の攻めも見応えがあったが、竹中がひきドウを決めて初戦を突破した。
竹中は本村礼奈(中京大)、松田華苗(立命館大)を破って順当にベスト8に進んだ。
小松は1回戦で池田麻奈(朝日大)にメンを決めて勝つと、2回戦は岩中まりな(松山大)をひきメンで下した。
3回戦では坪井香歩(環太平洋大)にメンを先制されるが、メンに跳び込んで追いつくと、延長で諸手ヅキを決め逆転勝ちを収めた。4回戦では住野早紀(関学大)を下して準々決勝に進む。
■関東覇者も初戦で姿を消す
関学大の住野は2回戦で関東大会覇者を破っている。
伏兵的存在ながら関東大会を制した相馬紀香(日体大2年)にとっての初戦となったこの試合は、前半に住野がメンを奪い、相馬は後半になって惜しい技を見せ始めたが時間切れとなった。
相馬と阿蘇中央高校の同期で大将を務めたのが、同じ日体大2年の桑野こゆきである。
関東大会での相馬の活躍に刺激されたか、この日は持ち前の大きな技で勝ち進んだ。
3回戦では強豪・久徳真子(筑波大3年・中村学園女子高校出身)と対戦し、コテを決めて勝ち進む。
4回戦では阿蘇中央高校の先輩である志學館大の末吉杏梨(4年)に二本勝ちしてベスト8へ。
2位となった法政大の佐藤は、大学へ入ってからも全日本女子選手権で昨年まで2年連続ベスト8という実績を持ち、大会前から注目された選手。
その1回戦は、麗澤瑞浪高校時代のチームメイト、相原清乃(立命館大3年)との対戦となった。
高校3年時の優勝メンバーのうち2人だけの3年生としてともに戦った盟友である。相原の挑んでいく姿勢が清々しい戦いだったが、最後は佐藤がひきメンを決めた。
佐藤は4回戦で国士舘大の村冨愛加那(3年)を破って準々決勝へ。
一昨年の本大会で3位入賞を果たしている井手も力を見せた。筑波大の佐々木梨奈(4年)を破った畝本莉奈(中京大3年)を3回戦で下すと、松本を破った北條を4回戦で下し準々決勝に進む。
ベスト8のうち4年生は2人で、もう1人は関西大会を制した横澤めい(大阪体大)。健闘した山形大の渡邊柚(4年)を下してベスト8に名乗りをあげた。
ベスト8の残る2名は高校時代に実績のある選手。中村学園女子高校の大将としてインターハイを制した村田、そして強豪・島原高校の大将を務めた藤﨑となった。
■第12回全日本女子学生剣道東西対抗試合
全日本女子学生選手権終了後、第12回全日本女子学生剣道東西対抗試合が実施された。
試合は東西10人ずつの抜き勝負、3分の時間内に決着しないと、大将が登場した場合を除き引き分けとなる。
西軍は次鋒森岡真実(環太平洋大3年)、八将玉置万優(近畿大3年)、六将小角春菜(大阪教育大4年)が1勝ずつをあげリードする。
東軍は実力者が力を発揮した。六将佐藤みのり(法政大3年)が1勝をあげると、三将竹中美帆(筑波大3年)が2勝をあげて追いつく。
副将同士が引き分けて勝負のゆくえは大将戦に持ち込まれた。
西軍は世界選手権日本代表ながら選手権では初戦敗退を喫した松本智香(鹿屋体大4年)、東軍は2年前の全日本女子学生選手権で優勝者ながら今年は出場権を逃した小川萌々香(日体大4年)。
意地のぶつかり合いとなった大将戦は、上段の小川が振り下ろした技が決まらなかったところに松本がメンを痛打して西軍が勝利。
これで通算成績は西軍の7勝5敗となった。
西軍=松本智香(鹿屋体大)、小角春菜(大阪教育大)、森岡真実(環太平洋大)
東軍=竹中美帆(筑波大)、佐藤みのり(法政大)