2018年7月27日(金)〜29日(日)
福岡市・マリンメッセ福岡
どこが優勝しても驚きではない4チームが準決勝へ
準決勝に進んだ4チームは試合前からある程度上位進出が予想された顔ぶれだった。
序盤戦から相手を圧倒する力を感じさせた育英(兵庫)、順調な立ち上がりを見せ試合が進むにつれ接戦となっていった島原(長崎)と水戸葵陵(茨城)、そして序盤からやや苦労しながら常勝チームらしく勝負強く勝ち進んだ印象の九州学院(熊本)。
育英、九州学院、水戸葵陵(茨城)は準々決勝から、島原(長崎)はその前の7回戦から大将が登場し、大将の活躍で4強入りを果たした。
インターハイの前哨戦でもある本大会を終えて、果たして各校にとって年間最大の目標であるインターハイではどこが頂点に立つか、非常に予想が難しくなった。
とくに九州学院と水戸葵陵が予選リーグで同じグループに入っており、序盤戦から目が離せないインターハイになりそうである。
■島原(長崎)|全員が自分の役割を果たし、大黒柱黒川につなぐ
初戦となった2回戦、星琳(福岡)に対しては先鋒時村が敗れるも次鋒前田が5人抜き、3回戦は太成学院大(大阪)に時村が1勝1分、前田が2勝1分で勝利を収めた。
4回戦からは先鋒に松﨑を起用し、その松﨑は引き分けたが前田が3勝1分で米子松蔭(鳥取)を下す。
東海大浦安(千葉)との5回戦は接戦となり中堅若杉、副将内藤が初めて登場したがともに試合は引き分け。
前田が1勝1分で、ここも前田の活躍で勝ち進んだ。高知との6回戦は4回戦とまったく同じ展開で松﨑が引き分け、前田が3勝をあげ大将と引き分けた。前半戦は前田の活躍が光った。
上位進出が予想された磐田東との7回戦、松﨑が引き分けると、ここまでチームを引っ張った前田も引き分けに終わる。ここから主役は大将の黒川に代わった。
若杉が1勝をあげて相手の副将井尻と引き分けリードするも、内藤が大将野瀬に敗れて、ついに黒川の出番となる。野瀬を黒川が下してベスト8入りを決めた。
結局7回戦から決勝までの4試合が大将決戦となり、黒川が制した。
7回戦と準々決勝で黒星を喫した内藤に代えて、県大会さえも出ていない隈部を準決勝から使うという大胆采配もポイントには直結しなかったが、無類の勝負強さを発揮した黒川に加え、前田中心に各選手が自分の役割をこなした結果の優勝といえるだろう。
九州学院とは日頃から多くの練習試合をしている間柄。常勝九州学院から学んだことは多かったという。福田俊太郎監督は勝因についてこんなふうに語っていた。
「いい流れを作って大将の黒川まで持ってくるということで、それぞれが自分の個性を活かして試合をしたと思います。その結果(前半戦では)前田がとにかく頑張ってうまく抜いてくれたのがよかったと思います。
勝負に対する執念、厳しさというところは九州学院の米田(敏郎)先生から大変学ばせてもらっています。とにかく練習試合で何度も勉強させてもらいましたので。技についてはお互いにずっとやってきたので、最後はどれだけ相手を上回る気迫と執念でやれるか。(黒川が重黒木を)その点で上回ってくれたのではないかと。勝因はそこだと思っています」
■九州学院(熊本)|試合が終わっても感じられた勝利への執念
初戦となった2回戦こそ先鋒深水が4勝して大将と引き分け岐阜聖徳学園(岐阜)を下したが、長崎東(長崎)との3回戦は深水が引き分け、次鋒岩間が2勝をあげたものの副将小川が引き出され相手の大将を破るという展開となった。
足立学園(東京)との4回戦は次鋒岩間が2勝、中堅池内が1勝で手堅く勝利。
箕島(和歌山)との5回戦からは先鋒に渡邊を起用、渡邊の1勝、中堅池内の1勝で、副将小川が再び登場し勝利を収めてここを切り抜ける。
6回戦は岩間の1勝、池内の2勝で福岡舞鶴(福岡)を、7回戦は渡邊の3勝と岩間の1勝で福岡常葉(福岡)を下した。
対戦相手との関係もあるが、大将重黒木の出番はなく徐々に調子をあげてきた印象だった。
しかし強豪との対戦となった準々決勝以降では、3試合とも勝ち星をあげたのが大将重黒木のみという結果。
準々決勝、準決勝では重黒木が我慢に我慢を重ねて戦って踏ん張ったが、3人が残された決勝でついに力尽きた。
黒川にしても準決勝で戦った育英の松澤にしても、何度も練習試合を重ねている相手であり相手は重黒木をよく知っている。当然負けることもあるだろう。
春の全国選抜大会でも重黒木が超人的な働きで優勝を果たしており、重黒木頼みのという印象は今回も残った。
閉会式後、入賞チームは記念撮影をする。他のチームが何台ものカメラに収まる中で、九州学院のメンバーは早々に撮影を切り上げて会場を後にした。
3位のチームにもやり切ったという満足感は感じられるものだが、九州学院の選手たちには2位では何も得るものがないと感じているようだった。
敗れたことで逆に九州学院の強さを見た気がした。
■水戸葵陵(茨城)|7年ぶりの決勝進出を逃すも日本一を狙える力を見せた
初戦となった2回戦はこの試合だけ起用された渡辺(哉)が久留米筑水(福岡)に対し5人抜き、3回戦では代わって入った新谷が5人抜きで文徳(熊本)を下した。
4回戦では次鋒の木村が3勝をあげ富士(東京)の大将石田と引き分けた(5回戦までは一方の大将と引き分けた場合も試合終了)。
5回戦からは強豪との対戦が続く。明豊(大分)には先鋒新谷が敗れ、木村と中堅の鈴木は引き分けで副将の棗田が登場。棗田は2勝をあげ相手の大将と引き分けて試合を終わらせた。
三重(三重)に対しては相手に勝ち星を与えず、木村と棗田が1勝ずつで勝利、桐蔭学園(神奈川)との7回戦ではそれまでなりを潜めていた先鋒新谷と中堅鈴木が活躍、新谷が3人を抜くと鈴木が相手の大将田村を下した。
新潟明訓(新潟)との準々決勝は初登場の大将岩部が4人抜きを果たし見事な逆転勝利を収めるも、準決勝では島原の黒川に棗田と岩部が敗れ、決勝進出はならず。
最後は同等の力を持つ相手にがっぷり四つの勝負で敗れた。関東高校大会では東海大相模(神奈川)に敗れて予選リーグ敗退という結果に終わりはしたが、日本一を狙える力を充分に保っていることを証明した。過去2位が2回、4年ぶりの3位入賞となった。
■育英(兵庫)|控え選手も充分に通用する力を見せ期待ふくらむ3位
序盤戦から相手を圧倒する力を見せたのが育英だった。
先鋒には春の全国選抜大会ではレギュラーでなかった鎌浦(3年)を起用、この鎌浦が2回戦で都城東(宮崎)に対し5人抜き、3回戦は札幌第一(北海道)に2勝1分、4回戦で前橋育英(群馬)に対し4勝1分。5回戦では桜丘(愛知)に対し3勝1敗と、各県の強豪といえる相手との対戦が続く中で暴れまわった。
3回戦と5回戦ではやはり選抜大会には出ていない次鋒久住が勝利をあげて試合を終わらせている。
6回戦から先鋒が大津、次鋒が阿部に交代する。福翔との試合は阿部が3勝するも相手の大将斎藤(地)の粘りで副将の福岡まで引き出された。
しかし7回戦は全国選抜3位の敬徳(佐賀)に対し、大津が3勝、阿部が2勝をあげ、2人で試合を終わらせる。
準々決勝で初登場した大将松澤は、福大大濠(福岡)に対しては2人抜きで見事に逆転勝利。
準決勝で対戦した九州学院(熊本)の重黒木とは数日前に練習試合を5試合ほどこなしていたといい、互いに手の内を知りすぎている同士。どちらに転ぶかわからないまったく五分の勝負だった。
3位に終わったとはいえ、内容的にはインターハイでの悲願達成へ向けて明るい材料が増えた大会だったのではないだろうか。
(育英高校については連載『飯田良平監督のラストシーズンを追う』にてさらに詳しく紹介します。近日公開予定)
■542チームが繰り広げた真夏の戦い
今年度の玉竜旗高校剣道大会・男子は計542チームがエントリーした。
決勝まで進んだチームは計9試合を戦い(シード校でなければ10試合)、最終日の29日はベスト64以上の試合が行なわれた。
ここまでの紹介した以外の7回戦(準々決勝の前の試合)、および6回戦以下からピックアップする。
7回戦 福岡第一(福岡)×佐野日大(栃木)
関東大会優勝を果たした佐野日大が順当にベスト16に進出した。
この対戦は2引き分けのあと、福岡第一の中堅谷口が先に勝ち星をあげる。谷口は副将原田(光)と引き分け、大将大平(斗)を引き出した。
副将の田城は大平にメンを奪われ敗退するも、大将内村が大平から延長3回の末コテを決め、福岡第一が関東の雄を退けた。
7回戦 福大大濠(福岡)×宮崎日大(宮崎)
2引き分けのあと、福大大濠の中堅濱地が2勝をあげ、宮崎日大の大将山下を引き出した。
濱地は山下に敗れるが、副将の池田が山下からメン二本を奪って、大将木島まで回さずに福大大濠が勝利を決めた。
7回戦 東福岡(福岡)×鹿児島商(鹿児島)
福大大濠などを抑えてインターハイ出場を決めている東福岡。2引き分けのあと、中堅樋口が相手の中堅山下、副将富山に競り勝って大将牧枝を引き出す。
樋口は牧枝に敗れるが、副将原が延長でメンを決めて牧枝を下し、大将中山に回さずに勝利を決めた。
7回戦 高千穂(宮崎)×新潟明訓(新潟)
昨年この大会2位、インターハイ優勝という結果を残した高千穂。一方の新潟明訓はインターハイ出場を決め、この両者が予選リーグで対戦することが決まっている。
前哨戦となったこの試合は高千穂の先鋒木島が快調に2連勝。中堅富樫と引き分ける。次鋒吉村と新潟明訓の副将岡本の対戦は引き分けて、大将須田を引き出した。
しかし、ここから須田が見事な踏ん張りを見せる。高千穂の中堅新森、副将東をともに二本勝ちで下すと、大将決戦でも谷口からコテとメンを奪い、須田の3人抜きで新潟明訓が鮮やかに逆転勝利を収めた。
6回戦 東福岡(福岡)×清風(大阪)
前の試合までに今大会最多となる20人抜きを達成したのが清風の先鋒西。
この対戦でも東福岡の和田を下し21人目を抜いたが、次鋒菊地が一本を先取。西も勝利への執念を見せメンを決めて追いつくが、すぐに菊地がひきドウを決めて西を止めた。
菊池は次鋒下森も下し、結局東福岡の副将原が清風の大将永田を破って勝利を収めた。
6回戦 磐田東(静岡)×東海大相模(神奈川)
磐田東は先鋒森本が相手の先鋒清水、次鋒増田を破って中堅淀繩と対戦、淀繩に対してもコテを先取すると、相手が出てくるところにメンを決め二本勝ちを収めた。
中堅山下が相手の大将井出に勝って東海大相模を退けた。
6回戦 敬徳(佐賀)×樟南(鹿児島)
樟南の先鋒曲田が1勝、敬徳は副将の江口が中堅安藤を破り、副将満留と引き分けて大将同士の戦いとなった。
長くなったが、最後は敬徳の小川が和田からひきメンを奪い、接戦を制した。
6回戦 福大大濠(福岡)×高山西(岐阜)
福大大濠は次鋒井上、中堅濱地が1勝ずつをあげて高山西の大将境を引き出す。濱地は敗れたが、副将池田がメンを奪って一本勝ちを収め、高山西を退けた。
福大大濠は井上、濱地らが勝ち星をあげ池田が試合を終わらせるというパターンで、7回戦まで大将木島を温存して準々決勝に進んだ。
黒川雄大(島原)、前田聖直(島原)、重黒木祐介(九州学院)、岩間功樹(九州学院)、岩部光(水戸葵陵)、松澤尚樹(育英)、内村光伸(福岡第一)、池田虎ノ介(福大大濠)、原光生(東福岡)、須田友紀(新潟明訓)