4強の勝ち上がりと準決勝までの好勝負ピックアップ|平成30年度玉竜旗高校剣道大会(女子)詳報

優勝・中村学園女子(福岡)
試合リポート
平成30年度玉竜旗高校剣道大会(女子の部)
2018年7月24日(火)〜26日(木)
福岡市・マリンメッセ福岡

チーム全員が代わる代わる力を発揮した、四強それぞれの戦い

中村学園女子(福岡)の3連覇で幕を閉じた平成30年度玉竜旗大会女子の部。

2位は昨夏のインターハイ、今春の全国選抜大会に続いて決勝で中村学園女子に挑んだ守谷(茨城)、3位の一方は福岡県内最強のライバルで昨年の本大会でも決勝を戦った筑紫台というおなじみの顔ぶれ。

もう一方の3位には地元の福翔が、各県の強豪を次々に破って7年ぶりに食い込んだ。四強中3校が福岡勢となったのは2年ぶりである。

■中村学園女子(福岡)|妹尾が3回戦で登場も徐々に安定感高まる

優勝・中村学園女子(福岡)|妹尾舞香(3年)、諸岡温子(3年)、奥谷茉子(2年)、大嶋友莉亜(2年)、笠日向子(1年)、坂元麗華(3年)、中村果乃(3年)。監督=岩城規彦

中村学園女子は過去この大会2年連続優勝、インターハイでも2年連続優勝、全国選抜大会も2年連続優勝。

世界選手権代表にも選ばれたスーパー女子高生妹尾舞香が入部して以来、主要全国大会をすべて制している。

当然優勝候補の筆頭だったが、序盤戦から力のある相手との顔合わせとなったこともあり、緊迫した展開となった。

初戦である2回戦は必由館(熊本)との対戦。次鋒坂元が1勝をあげた以外は引き分けが続き、副将諸岡の勝利でここを切り抜けた。

続く西大寺(岡山)との3回戦で早くも大将妹尾が引き出される。ここも坂元が1勝をあげたが、中堅奥谷が相手の副将水川に敗れ、副将諸岡は水川と引き分けて大将同士の対戦となる。

延長とはなったが、妹尾は危なげのない戦いぶりでひきメンを決めてここを突破した。

4回戦、中村学園女子×北筑【次鋒】坂元×【大将】立山|坂元がメンを先制。立山を下して勝利を決めた

4回戦は北筑(福岡)に対し次鋒坂元が4人を抜いて勝利。

関西学院(兵庫)との5回戦からは先鋒に中村に代えて1年生の笠を起用、その笠が1勝、坂元が2勝をあげ2人で勝負を決めた。

6回戦、中村学園女子×東奥義塾【副将】諸岡×【大将】杉本|諸岡がひきドウを放った後振り返ってメンに跳び込み一本を奪う

東奥義塾(青森)との6回戦からは次鋒に大嶋を起用、ここでは笠と大嶋が勝利をあげられなかったが、中堅奥谷、副将諸岡が2勝ずつをあげて妹尾まで回さず試合を決めた。

準々決勝、中村学園女子×三養基【先鋒】笠×【次鋒】北原|笠がメンに跳び込み一本勝ち。2人を抜いて試合を優位に運んだ

三養基(佐賀)との準々決勝では笠が2勝。ようやく先鋒戦からリードを奪う展開となり、奥谷が相手の大将中村(日)を下してベスト4入りを決めた。

準決勝、中村学園女子×福翔【大将】妹尾×【大将】西|本大会2回目の登場となった妹尾は安定感ある戦いで健闘した西を寄せ付けず、最後はひきメンを決めた(写真は妹尾の攻め)

健闘した福翔(福岡)との準決勝でも笠が先鋒戦に勝利するが、相手の次鋒深江(ま)とは引き分ける。

大嶋が引き分けたあと奥谷が相手の副将深江(ゆ)に敗れ、諸岡が深江と引き分けて、妹尾が2回目の登場となった。

西との大将決戦はやはり延長となるが、壁をつくって相手を寄せ付けないような妹尾のペースで終始試合が展開され、ひきメンを決めて決勝進出を決めた。

岩城規彦監督は試合後のインタビューで3連覇を讃えられると、

「3連覇というよりも、今年のチームで優勝できたことがうれしいです」

と答えた。妹尾は1年の時からレギュラーだったが、それ以外の選手はほとんど去年の夏は大舞台に立っていない。

毎年毎年一からチームを作っていったことの結果が連覇になったということだろう。

3回戦と準決勝で試合をした妹尾は、

「初戦から気を張っていつ出てもいいような準備をしたので大丈夫でした。前で全員が自分の試合を思い切りしてくれたので、すごいと思ったし自分も頑張らなければならないと思いました」

とチームメイトを讃えた。

インターハイでも当然ながら本命である。2試合だけでは判断できない部分もあるが、依然として妹尾の壁は高く、他のチームとしてはやはり大将戦まで勝負を回さずに決めるしかなさそうに見えた。

逆に中村学園女子としては、インターハイ3連覇のカギを副将の諸岡を初めとする4人が握っているといえよう。

■守谷(茨城)|決勝まではさすがの戦いを見せるも、妹尾を引き出せず

2位・守谷(茨城)|柿元冴月(2年)、髙野菜央(3年)、野川真(3年)、福居永里子(3年)、大西希望(1年)、小川真英(1年)、阿部琴乃(3年)。監督=塚本浩一

序盤は2人の1年生、先鋒の大西と次鋒に起用された小川がのびのびと力を発揮した。

2回戦は岐阜城北(岐阜)に対し大西が5人抜き、鎮西との3回戦は大西が引き分けたが小川が大将まで4人抜き。続く鹿島新(佐賀)との4回戦では大西が再び5人抜きを果たす。

5回戦、守谷×帝京第五【中堅】野川×【副将】門地|野川がひきドウを決める。このあとひきメンを決めて門地を下した野川が大将まで抜いた

5回戦からは強豪との対戦となるも、帝京第五(愛媛)に対しては大西が1勝、小川は敗れるが初めて試合場に立った中堅野川が大将まで3人を抜いた。

6回戦、守谷×白石【中堅】野川×【大将】庄島|前の試合で4人抜きを果たした庄島に対しても、野川が見事なメンを浴びせ、勝利を決めた

白石(佐賀)との6回戦も、大西、小川が引き分けるが野川が3人抜きで試合を決める。

準々決勝、守谷×島原【大将】柿元×【副将】岩本|柿元は中堅児島を下したあと、岩本にもひきメンで勝利、さらに大将松田も破って見事な逆転勝利を成し遂げた

島原(長崎)との準々決勝からは大将柿元の登場となる。大西が峯松に敗れ、この試合から起用された次鋒福居は引き分け。

期待された野川も相手の次鋒岩永と引き分けると、副将髙野が中堅児島に敗退。柿元は3人を倒さなければならない状況で試合場に立った。

ここで1年生だった昨夏から大将をつとめる柿元がいきなり力を見せる、児島、副将岩本、大将松田と3人を連破した。

準決勝、守谷×筑紫台【次鋒】福居×【次鋒】八木|福居がメンを決めて八木を下し守谷が主導権を握る(写真は両者の攻防、左が福居)

筑紫台(福岡)との準決勝は大西が引き分けたあと、福居、野川が1勝ずつをあげ先に相手の大将津守を引き出す。髙野は敗れたが柿元が大将戦を制した。

決勝は福居が先制しながら逆転負けを喫すると野川も敗れて完全に相手のペースとなった。未勝利だった髙野が勝利をあげるも、大将同士の戦いまで持ち込めずに終わった。

去年のインターハイから4回連続(全国選抜、魁星旗、本大会)で、決勝まで進むも中村学園に敗れるという結果。大将決戦にたどり着けずに終わった今大会は不本意な敗退といえるだろう。

凡百のチームから見れば必ず決勝に進むという結果は素晴らしいのだが、塚本監督はこう振り返った。

「子どもたちにはいつも言うのですが、やはり2番だったときは2番の努力しかしていないと思わないといけない。一番になれないときは何かが足りない。それは監督としての自分の反省でもあります。ベスト8のうち6チームが九州、ベスト4のうち3チームが福岡で、玉竜旗の戦い方を知っているというか、徹底していますよね。一つずつでもリードしていって引きずり出す、大将を疲れさせるという戦い方ですね。髙野あたりが妹尾さんとやって柿元だったら理想だったのですが、五分で柿元でも、と思っていました。気持ち的には妹尾さんの方が負けられないという気持ちになるはずなので……」

玉竜旗大会の2位は守谷にとって今回が初めてだった。

■福翔(福岡)|各県の強豪を次々に破り、地元の名門が快進撃

3位・福翔(福岡)|西伊万里(3年)、深江ゆい(2年)、梅野夏鈴(3年)、深江まい(2年)、吉良美咲(3年)、吉良さくら(1年)、梅野渉那(2年)。監督=菊池忍

かつて福岡商業として男子では9回の優勝を誇る名門。女子では平成23年以来7年ぶり2度目の3位入賞を果たした。

初戦の2回戦から5回戦までは前3人で試合を決める。

羽咋(石川)、星城(愛知)、西海学園(長崎)、富岡東(徳島)といった各県上位のチームが相手だったが、先鋒の吉良(美)、3試合目から代わって登場した吉良(さ)、次鋒深江(ま)が勝利を重ね、中堅梅野(夏)も登場した2試合で確実に勝利を収めた。

6回戦、福翔×桐蔭学園【大将】西×【大将】桜井|西(背中)が出ゴテを決め、福翔が大将決戦を制した

桐蔭学園(神奈川)との6回戦は総力戦となった。吉良(さ)と梅野(夏)が1勝ずつをあげて先行し、副将深江(ゆ)と相手の大将桜井の対戦となる。深江は敗れたが、ここで試合場に立った大将西がコテを決めて桜井を退けた。

準々決勝、福翔×阿蘇中央【次鋒】深江(ま)×【中堅】相馬|深江がメンに跳び込み一本勝ち。深江の3人抜きで福翔が優位に試合を運ぶ

準々決勝は阿蘇中央(熊本)との準々決勝では次鋒深江(ま)が3勝をあげる見事な働きでリード。

阿蘇中央の副将海津が意地を見せて2勝をあげ、副将深江(ゆ)と引き分けて大将同士の勝負となるが、ここでも西が勝負強さを見せ上段の久保を下した。

福翔は中村学園女子との準決勝でも大将勝負に持ち込んだ。

妹尾攻略はならなかったものの、各県の強豪を次々に破っての3位入賞は賞賛に値する。選手たちが持てる力以上のもの最も発揮したチームだったかもしれない。

あるいは、福岡の二強の陰に隠れているが、もともと全国レベルの地力があることを証明したということだろうか。

■筑紫台(福岡)|3年連続決勝でのライバル対決まであと一歩

3位・筑紫台(福岡)|津守葵衣(3年)、中野美里(3年)、小森未夢(2年)、八木優澄(1年)、徳田侑紗(1年)、永井杏奈(2年)、佐藤美空(1年)。監督=金森靖二

過去優勝4回、昨年と一昨年は決勝で中村学園女子に敗れている。

昨年の全国選抜決勝でも中村学園女子と決勝を争うなど、日本一を狙う力はありながら県内のライバルに屈している。今回は3年連続同カード決勝まであと一歩だったが、守谷に行く手を阻まれた。

5回戦、筑紫台×大社【大将】津守×【大将】布野|見応えある攻防だったが、最後は津守(背中)がメンに跳び込んで決めた

2回戦から4回戦までは、徳田(初戦のみ永井)、八木、小森の3人で勝負を決めた。大社(島根)との5回戦で副将中野、大将津守の登場となる。

八木が1勝、中野が1勝をあげて相手の副将山根と引き分け、津守と布野の大将決戦となった。ここは延長の末津守がメンに跳び込んで勝利を収めた。

続く鵬翔(宮崎)との6回戦は優位に試合を運び、相手の大将日高に2人が抜き返されたが、副将の中野が日高に勝って勝負を決めた。

準々決勝、筑紫台×須磨学園【大将】津守×【大将】近谷|近谷が2人抜きと粘りを見せたが、津守が出ゴテを奪い好勝負を制した

激戦となったのが須磨学園(兵庫)との準々決勝。徳田が3勝をあげて一気に優位に立ったが、以後は相手の副将大久保に1人抜き、大将近谷に2人抜きを許し、津守の登場となる。

しかしここでも津守が踏ん張りを見せて、実力者の近谷との真っ向勝負を制した。

準決勝の守谷戦も大将決戦まで持ち込んだが、津守が先に引き出されたこともあり、柿元を倒すところまでは及ばなかった。

■予断を許さない勝負が続いた最終日

399チームがエントリーした女子大会。女子最終日となる7月26日は3回戦から始まり6回戦に勝つと準々決勝となり、決勝進出チームは1日で7試合を戦った。

以下、最終日の試合の中から、ここまでに紹介した以外の6回戦の展開と5回戦以下の好勝負をピックアップして紹介する。

6回戦 三養基(佐賀)×八女(福岡)

三養基の先鋒古川が躍動、八女に対して先鋒から大将まで5人抜きを達成した。ノーシードながらベスト16に駒を進めた八女も健闘が光ったチームだったが、ここは完敗に終わった。

6回戦 阿蘇中央(熊本)×樟南(鹿児島)

樟南が先鋒平山の勝利などで先行するが、阿蘇中央の副将海津が相手の中堅樋口、副将脇田、大将有田と3人を破って逆転勝利を収めた。

6回戦 島原(長崎)×尚絅(熊本)

先鋒同士の試合から3試合引き分けが続いたが、島原は副将岩本が相手の副将境を破ると大将江口にも勝ち、試合を終わらせた。

6回戦 須磨学園(兵庫)×龍谷(佐賀)

6回戦、須磨学園×龍谷【副将】大久保×【大将】福田|大久保(こちら向き)が出ゴテを決め、福田を倒して勝利を決めた

須磨学園の廣滝輝彦監督にとっては母校である龍谷との対戦となった。

先鋒深見、中堅豊田が1勝ずつをあげ、龍谷の次鋒橋本に2人が敗れて、試合は副将同士の対戦となる。

大久保が合瀬を下し、さらに大将福田にも勝って須磨学園が勝利を決めた。須磨学園は2年連続のベスト8となった。

5回戦 龍谷(佐賀)×三重総合(大分)

5回戦、龍谷×三重総合【大将】福田×【大将】鶴田|福田がメンに跳び込み、熱戦を制した

三重総合の大将鶴田が相手の副将合瀬を破って大将決戦に持ち込む。長い試合となったが、龍谷の福田がメンに跳び込んでこれを制した。

5回戦 白石(佐賀)×磐田西(静岡)

5回戦、白石×磐田西【大将】庄島×松下(夏)|庄島(背中)のこのメンが一本となり、4人抜きでの逆転勝利を果たす

磐田西が次鋒松下陽の2人抜きなどで優位に試合を含め、白石の大将庄島を引き出す。ここで1年時にインターハイ個人3位の実績を持つ庄島が力を発揮した。

松下、中堅川野、副将近藤を破って大将松下夏を引き出す。庄島が機を見てメンに跳び込むと、これが逆転の一本となった。

4回戦 島原(長崎)×菊池女子(熊本)

4回戦、島原×菊池女子【大将】松田×田中|長い試合となったが、ようやく松田のひきドウに旗が上がった

島原が優位に試合を運ぶが、菊池女子の大将田中が粘りを見せ、中堅児島、副将岩本を破って大将松田を引き出した。

大将戦は長い試合となり、ともに惜しい技もいくつかあったが旗は動かず、最後は松田のひきドウが有効とされた

優秀選手
妹尾舞香(中村学園女子)、諸岡温子(中村学園女子)、柿元冴月(守谷)、野川真(守谷)、西伊万里(福翔)、津守葵衣(筑紫台)、古川寛華(三養基)、海津ゆきえ(阿蘇中央)、松田美結女(島原)、近谷舞花(須磨学園)

女王・中村学園女子が鉄壁の3連覇|平成30年度玉竜旗高校剣道大会 女子

2018.07.26